B.O.L.T、夜光性アミューズ、美味しい曖昧……2022年に注目したいアイドルグループ6選｜「偶像音楽 斯斯然然」第75回

夜光性アミューズ　令和に煌めく電波系ギャルサー

最後は、ここ最近毎日のようにMVを観るのが日課になっている夜光性アミューズ。イマドキ女子たちがバキバキのエレクトロサウンドで歌い踊る様は、夜に煌くテーマパーク、令和に煌めく電波系ギャルサー。

【LIVE MV】夜光性イントロデュース / 夜光性アミューズ

元アイドル2人とYouTuber3人によるグループ。“YouTubeやインフルエンサーがアイドル始めました”と聞くと、悪気はなくともどこか斜に構えてしまうところも少なからずあるのだが、そんな偏見を払拭するクオリティだ。白空こあいの魅惑のボイスと、キャッチー性のある楽曲強度の中毒性に容赦なく打ちのめされる。

昨年2021年4月に活動開始した夜光性アミューズ、通称“よるあみ”。夏くらいからよく名前を目にするようになり、最初は「エキゾチックテレパシー」のMVを観た。CY8ERなどを手がけていたNeko Hackerの曲だし、YouTuberらしいイマドキ女子な歌詞だったりで、なるほどねなんて、その時は大して印象には残らなかったのだが、程なくして「夜光性イントロデュース」に度肝を抜かれてしまったのである。

キャッチー性の応酬ともいうべき、隙のなさ。ガヤを入れながら捲し立てるようなメロディは古典的歌謡手法ではあるが、普遍的なものだ。それをユーロビートに乗せて電波ソングとするのは、一時代を築いたニコニコ動画を中心に流行ったマッシュアップ系譜。しかしながらエレクトロやEDM系の音を用いたサウンドプロダクトは洗練された趣もある。さらにはエレクトロ楽曲と思いきや、その周りを取り囲むように、クラシカルなピアノが鳴っているという不思議な位相を持つ曲。どこを切り抜いてもキャッチーであるという現在のSNS映えを狙いつつも、聴けば聴くほどに深い懐を持った曲だ。

同曲を手掛けるのは、磯野涼なるクリエイターだったが、「ギターがカッコいいアイドルソング」でも取り上げたsituasion「1988」の作曲者でもあった。夜光性アミューズでは、「夜光性イントロデュース」のほか、「N.P.C」「スターリーナイト・ダンス」といった強度の高い曲を制作している。

【Dance Practice Video】N.P.C / 夜光性アミューズ

加えて、個人的に惹かれたのは、白空こあいの存在感である。倍音成分の多い可愛い声、いわゆる“萌え声”の類いではあるが、ハスキーでもあり、一般的には抜けの悪い通らない声の代名詞なのに、ライブでもそのまんまの歌声で抜群の抜けを誇っており、時折見せる艶やかな声といい、まさに魅惑のボイスとしか言いようがない。そんなライブでの歌とパフォーマンスの安定感、軽やかな身のこなしとともにカリスマ性があり、一気に目も心も奪われてしまった。彼女のことは、前世含めてよく知らなかったのだが、改めて遡って見てみると、昔から歌のセンスは抜群だったようだが、かなり垢抜けたというか、覚醒したというか、いろんな意味でレベルアップしたのだと感じた。

この声色の操り方、尋常ではない……　【歌ってみた】シル・ヴ・プレジデント / P丸様。【こあい】

元アイドルとYouTuberという、普通に考えてみればメンバーの実力差がありそうなものの、言われなきゃわからないくらいスキルとポテンシャルを秘めており、ライブの完成度も高い。その存在と楽曲の方向性は、いわゆる現在のライブアイドルの中では異質的な部分もあり、昨今のアイドルシーンにおけるカウンターとしても、注目のグループだ。