B.O.L.T、夜光性アミューズ、美味しい曖昧……2022年に注目したいアイドルグループ6選｜「偶像音楽 斯斯然然」第75回

誰もシラナイ。　ダンスミュージックをも飲み込んだ気鋭のロック

誰もシラナイ。は「ギターがカッコいいアイドルソング」で鈴木Pop’n’Roll編集長がピックアップして初めて聴いたのだが、とにかく楽曲のよさに惹かれた。ここ2回ほど当コラムにて連続して楽曲を取り上げているが、改めてちゃんと紹介しておきたい。

誰もシラナイ。- ESCAPE ［Official Music Video］

同記事内でも語っているが、昨今の名古屋アイドルシーンはアツく、少々飽和気味になっているロックアイドルシーンのカウンターになっているように感じている。個人的には、ロックアイドルというものはマニアライクになりすぎると、“もうそれ、バンドでやればよくない？”と、せっかくのアイドルが歌う意味がないように思えてしまう。

誰もシラナイ。はロックのカッコよさに寄せているものの、日本人の好きな泣きメロ、慟哭性のある普遍的なメロディをウマく現代的なラウドロックアイドルのスタイルに載せている。「ESCAPE」の直球的な女性ボーカルバンド感はまさにそれなのだが、アルバム『KäMPFER』を聴いて、その完成度に驚愕した。

誰もシラナイ。DEBUT TEASER /「バランスブレイカー

バンドサウンドをベースとしながら、エレクトロの飲み込み方、昨今のダンスミュージックを迎合していく様も見事。「バランスブレイカー」の無差別ダンスビートでぐいぐい攻めていく攻勢にいきなり度肝を抜かれ、「ESCAPE」のメロのよさに耳を奪われる。可変型高速Emo「掴メ」の解放感は気持ちよく、オリエンタル歌謡「策士、サクにド嵌り」の妖しさに酔わされながら、前回紹介した「ハナイチモンメ」の童謡＋ダンスミュージック＋中低音ブラスの隙のなさに息を呑む。ストリングスと緩急あるバンドアンサンブルの絡みにゾクゾクする「マゼンタ -MAGENTA-」、そして「エンダー」は流麗なメロが映えるバラードで、ドラマティックなギターソロとダイナミックなアレンジに心揺さぶられる。ラストの「僕らが生きた証」は、アイドルらしい前向きさに満ち溢れた力強い曲。と、8曲ながらさまざまな表情で魅せてくれる、誰もシラナイ。というグループのアイデンティティが詰まった作品。それを歌うメンバーも魅力的で、鋭利さがありながらしなやかさを持つ猫守 梦、クールに突き抜ける美声の湊、可憐さと儚さを持ち合わせたこはく……、といった歌えるメンバーが揃い踏み。『KäMPFER』は、楽曲、サウンド、歌、どこを取ってみても文句なしの傑作である。

1月15日にリリースされた「黎炎」。テクニカルなギターフレーズと流麗なピアノの旋律の折り重なり方、そこに絡む哀愁感あるメロディ。これまたすごい曲が来たものだ。

2021年2月始動。活動1年目でこのクオリティは恐ろしく、ライブにおけるその伸び代に期待しながら、今後目が離せないグループである。