PassCode、ぜん君。、ネオジャポ…Pop’n’Roll編集長と語る「ギターがカッコいいアイドルソング2021」20選［前編］｜「偶像音楽 斯斯然然」第73回

QUEENS「Shooting Star」（鈴木：セレクト）

鈴木：
QUEENSは前と路線がまったく変わりましたよね。

冬将軍：
「Flagship」（2018年）のカッコよさに衝撃を受けて。ブリティッシュポストパンクな香りがするエッジの効いたギターが大好きで、コラムでも第1回目から取り上げたり、以前この企画でもプッシュしましたよね。今はそれとはまったく異なる音楽性、すっかりラウドロック路線になりました。

鈴木：
アルバム『REBUILD』を聴くとラガっぽい曲が入ってたりするけど、この曲もギターリフがとにかくカッコよくてですね。休符の入れ方を含めて、リズムアプローチが好みです。

冬将軍：
これはカッコいい！と思ったら、この企画ではよく取り上げているギタリスト、慎之甫さんの曲なんですよ。そりゃ、カッコいいわけだ。

鈴木：
サビ直前のフレーズとかいいな。けっこう細かくいろんなフレーズが入っていて、すごくセンスのいいギターです。

冬将軍：
ボイシングの使い方とか独特ですよね。慎之甫さんがサウンドプロデュースしているbuGGもそうですけど、オリエンタルというか民族的な音使いが入ってくるのがいい。ペンタトニック（スケール）で弾き倒さない感じ。リズムもいい。

鈴木：
あとは音がいい。モダンな歪みとは違いますよね。実際に使っているかはわかりませんが、なんというか、いいマーシャルの音って感じ。

冬将軍：
ああ、あたりのオールドマーシャルみたいな。アー写見るとdragonfly使ってるんですよ。dragonfly使ってる人はプレイもセンスがいいです。間違いない。ハリーズの戸谷（達明）社長にはディレクター時代に散々お世話になりました。自分も持ってるんですよ、dragonflyのギター。B6っていう下の方に5フレット分長くて５カポでレギュラーチューニングのギターになるっていう特殊なヤツ（笑）。

NEO JAPONISM「Trigger」（冬将軍セレクト）

冬将軍：
NEOは2021年だけでアルバム1枚とシングル8曲をリリースしてまして、MEGMETAL楽曲（「Buster Buster」「TOMOSHIBI」）もすごいんですけど、NEOらしいギターの観点でいうと、やっぱりこの曲。イントロのリフから、なんだこの粘りのある図太い音はっ！

鈴木：
リフのギターサウンド、極悪ですね。噛み付いてくる質感。

冬将軍：
そうワニっぽい（笑）。リフ自体はけっこうメタリックだし、高速2ビートで畳み掛けて来るんだけど、バンカラ風の歌メロがキャッチーで、ちょっとハズしたコミカルさがあるじゃないですか。そういう塩梅がホントにウマいなと思う。カッコいいことやりたいならバンドでいいんですよ、そっちに振り切っちゃうと、それをアイドルでやる必要ある？って個人的には思っちゃうから。やっぱり、アイドルだからこそ許されるものってあるじゃないですか。バンドでやったらダサいことでも、アイドルがやれば個性になるみたいな。NEOはそこがウマいし面白いんです。メンバーのスキルが高いのもあるけど、ふざけてもダサくならいというか、スキルがあるからふざけられるというか。

鈴木：
そういう意味では、トータルバランスがいいんでしょうね。楽曲の方向性、サウンドのクオリティ、メンバーのスキルが、きちんと一体になっているというか。

冬将軍：
明らかにメンバーのスキル向上に合わせて楽曲の難易度がどんどん上がってるし、MEGMETAL曲に行き着いたのも話題性ではなく、制作陣営のつながりやメンバー含めての音楽探求とスキルの賜物だなって。あとやっぱり、とにかくサウンドメイクがウマい。いい音で録れてるからライブでも抜けが違うんですよ。ボーカルは歌詞もちゃんと聴こえる。そもそも、音自体はそんな大きくないし、コンプをバキバキにかけて音圧でガーッとしてるわけではないんだけど、ものすごく迫力のある音。音像がカッコいいんですよね。

鈴木：
ギターサウンド的には、ディーゼル系（ドイツのアンプメーカー）ですかね？

冬将軍：
ギターはリアンプかと思ってたんだけど、サウンドプロデューサーのSayaさんに聞いたら、シミュレーターらしいです。ギター本体はあの、松隈（ケンタ／SCRAMBLES）さんのブランドの、ジミー……

鈴木：
ジミーカルテット（Jimmy Quartett.）！

冬将軍：
そう、それ！　あれが宅録用に作られているので、すごくいいと言ってました。よく知らなかったんで気になって調べたら、Provision Guitarで作ってるんですね。そりゃいいギターだわ。

鈴木：
以前、松隈さんにお話を伺った時に、アンプシミュレーターはハイファイなサウンド傾向があるので、ジミーカルテットのピックアップは意図的にハイが出ないように籠った感じにチューニングしていると言ってました。昨今のレコーディング環境を想定したギターと言えますね。

冬将軍：
アリーナクラスでライブやるようなバンドのベースは、遠くまで音が飛ぶように目の詰まった重めの材を使うという話はメーカーからよく聞きますけど、宅録用のギターというのは今どきですね。このままギター談義に行きたいところですが、本題に戻って（笑）。ではSayaさん繋がりで、美味しい曖昧。

美味しい曖昧「圧倒」（冬将軍セレクト）

冬将軍：
このグループはピオーネさんという、桜エビ～ず（現・ukka）の曲を書いてた人がプロデュースしてるんですけど。この「圧倒」は、昨年選んだ「角砂糖とセイロン」と同じで、すっぽ抜けたリズムのカッティングがめっちゃカッコよくて、本企画でセレクトしたのはこの曲なんですが。これを踏まえて、ちょっとこっちの曲も聴いてもらっていいですか？

美味しい曖昧「AIMAI」

鈴木：
全然違いますね……ん？　でもカッコいい。うん、すごくカッコいい。

冬将軍：
そうなんですよ！　「圧倒」とは違うタイプの曲なんですけど、ロックポップスとしてのアレンジとか広がっていくレンジの音像とか、その辺り含めてすごいぞと思って。最初、“作曲：ピオーネ”だから気づかなかったんだけど、これアレンジとプログラミングがSayaさんなんです。そりゃ、好きな音だわ！って（笑）。以前、ドラマーの知り合いがなんの知識もなくSOLを聴いたら“ドラム、ネオジャポと（音が）同じじゃね？”と気づいた話をしましたが（SOLのサウンドプロデューサーもSaya）、知らない間にSayaサウンドの虜になってたという話です（笑）。

鈴木：
このドラムの疾走感には中毒性ありますね（笑）。気分がどんどんアガっていきます。

冬将軍：
美味しい曖昧は新体制になってライブもすごくよいし、今かなり注目してるアイドルなので、今後もしっかり追っていきたいです。

鈴木：
そうそう、突然cali≠gariの村井（研次郎／Ba）さんから“お久しぶりです。お元気ですか？”って連絡が来て〜

【後編に続く】

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