ばってん少女隊とアメフラっシ　このご時世だからこその“チルい”可能性｜「偶像音楽 斯斯然然」第72回

コロナ禍がもたらしたアイドルソングの可能性

よく、コロナ禍でアイドルシーンは活気がなくなったという声を耳にするのだが、一概にそうとはいえない。確かにコロナによって活動ができなくなってしまったグループもいたわけだが、少なくともライブアイドルシーンはコロナ禍においても形は変われど、常に活気があった。ライブを“魅せつけていく”ショーとし、そこにまつわるスキルを磨き、世界観をより強固なものにしていく。そういうグループは明らかに強くなっていった。

そうした事情は楽曲制作にも影響を与えている。アイドル楽曲には、観客がノリやすいこと、ライブ映えすることが求められてきた。テンポ感と爆発的なサビメロが炸裂する“沸き曲”と呼ばれるもの、コールが入れやすい符割りやリズムを持った主メロ……、しかしながら現在のライブシーンでは、それらは不釣り合いなものとなってしまった。逆にいえば、そうした縛りに囚われない純粋な音楽探求ができるようになったといえるのかもしれない。

今回取り上げた、ばってん少女隊のミニマルテクノも、アメフラっシのガールクラッシュも、これまでのアイドルシーンでは受け入れづらかった方向性であると思うし、そもそもこの現況でなければ生まれなかったものなのかもしれない。そう考えれば、これらはコロナ禍がもたらしたアイドルソングの可能性であり、奇抜な音楽の乱立に食傷気味になりつつあった、シーンのチルアウトと言っていいだろう。