怪物音響オクタゴンはアイドルシーンに何をもたらしたのか　＜ギュウ農フェス＞が教えてくれたこと｜「偶像音楽 斯斯然然」第70回

オクタゴンに選ばれし、Devil ANTHEM.

満を持してDevil ANTHEM.の登場である。通常のハコでも登場SEが鳴った途端、別途専用スピーカーを使っているのではないかと疑うほどの爆音が降り注いでくるわけだが、やはりオクタゴンで聴くデビアンサウンドは容赦ない。爆音響の低音はお腹から胸を抉るような圧迫感がつきものであるが、そこよりもキックが響くたびに地響きが足の裏から脳天まで突き抜けていく超重低音。爆音の中で少女たちが笑顔で歌い踊るという構図がデビアンの魅力でもあるのだが、オクタゴンの爆轟音響にまみれてそれがさらに強調される。オクタゴンに選ばれし者。触れてはいけない禁断のおもちゃを手にしてしまった無邪気な少女たち……そんな趣である。クリスマスイブのオクタゴンを使用したワンマンライブ＜デビタゴン祭＞も恒例化するほどにハマっている。ラスト「Fever」「SS」の畳み掛けで昇天した。

こういったさまざまなグループが出演するイベントに触れる時、どこが1番よかったということは言いたくないのだが、今回だけは言わせてほしい。

オクタゴンのMIGMA SHELTERは別格すぎる、と。

オクタゴンの申し子、MIGMA SHELTER

同フェスの大トリ、ラストオクタゴンを飾るのはMIGMA SHELTER。「TOKYO SQUARE」で静かに始まるも、気づけば四方を音の海に囲まれる。デビアンのオクタゴンはいわばハイメガ粒子砲（例えが古い）のような超巨大なビームの如く、爆音が襲ってくるわけだが、MIGMA SHELTERのオクタゴンは音の海に沈められ、そのまま深海へとひきずり込まれていく感覚だ。大音量なのに楽曲を構成する音の1つひとつが鮮明で、左右のステレオ感と上下のレンジに加えて、前後までも感じられる音の海。加えて、メカニカルなサウンドシステムから発せられる電子音楽であるにも関わらず、弱起から蠢くように激化し、なぜか生演奏のようなダイナミックレンジを感じるから不思議だ。人力的というか演奏的とでもいうか、サウンド自体が生きているようにも思えてくる。

早くも2曲目（1ステージを1曲換算とするのが正解なのかもしれないが）から、いつもであれば、サウンドも熱量も最高潮に達する沸点となる「Compression: Free」をぶち込んでくる。どこまでいくんだ産地村ァァァァーー！！

スポットをなくしたレーザー主体の照明が、メンバーの表情を影とし、不気味さと狂気性が交錯する輪郭を色濃くしていく。激しく踊り狂い続ける6人は、体力を通り越して自己発電か何かで動いているのではないだろうか。

正直、これ以降明確な記憶はなく、ただただ音の洪水に飲みこまれていった。メドレー的な繋ぎに加えてマッシュアップとして、いくつかの曲が挟み込まれていたことは覚えている。聴覚、視覚ならずとも身体中がMIGMA SHELTERの音に蝕まれていくようだった。

《まぼろし追いかけて》

気がつくと「Joint」の哀愁メロディが響いていた。これで大団円、かと思いきや、トドメの「69」。駄目押しのようにディストーションギターが身体を劈く。もう逝ってるば〜。

まさにラストオクタゴンに相応しいステージだった。思い返してみれば、私はオリジナルメンバー時代にMIGMA SHELTERに魅せられたものの、メンバーの脱退などがあり、意気消沈していたところに、改めてMIGMA SHELTERのすごさを気づかせてくれたのが、2018年のギュウ農フェスにおけるオクタゴンだった。それと同時に、アイドルのすごさと可能性をも教えられた。世間から見れば、誤解や偏見も少なくはないアイドルだが、“アイドルってすごいんだぞ”と胸を張って口にすることができる、アイドルの素晴らしさとライブアイドルの音楽の懐の広さ、面白さを教えてくれたのが、オクタゴンであり、ギュウ農フェスだった。