怪物音響オクタゴンはアイドルシーンに何をもたらしたのか　＜ギュウ農フェス＞が教えてくれたこと｜「偶像音楽 斯斯然然」第70回

オクタゴン不使用組のハイライト

ほかのオクタゴン不使用組では、約10ヵ月ぶりに観たB.O.L.Tが驚くほどの成長を遂げていたり、CROWN POPってこんなにカッコいいグループだったのか！と、スターダストの真髄をまざまざと見せつけられたことと、アイドルライブのシステマティックなベクトルとは違うフリースタイルで、聴き手の心を掴んだNaNoMoRaLがフロアの士気をしっかりと掌握していたことを書いておく。

NaNoMoRaL「唖然呆然」LIVE

トップバッターを務めた真っ白なキャンバスは、この日に限らず最近よく観ているグループなので、少々触れておきたい。以前当コラムでのドラム記事であったり、ソリッドなバンドサウンドに刹那女性ボーカル特有のラインが乗る退廃的な楽曲が魅力であった反面で、どうしてもフロアの“沸き”を主体としたライブ展開が目立っていた。しかし、コロナ禍でそうした客側からのパワーに頼れない部分と、5人になったこともあり、表現者としての洗練された“魅せる”部分が強く出たと感じている。そして、鈴木えま、麦田ひかるの再加入で7人となったことにより、そうしたパフォーマンスにおける強さがより明確になった。

オクタゴン勢の合間に登場した、まねきケチャ、ナナランドのコレットプロモーション勢は同フェスの振り幅を象徴しつつ、まねきは宮内凛が栃木県出身ということでギュウ農フェスとの関わりも深い。最近のまねきケチャの安定感、キャリアを重ねた安心感と可愛らしさの中から醸される貫禄が半端ない。

さて、イベントも中盤を過ぎると、ヤツのお出ましである。アイドルシーンに革命を起こした、真っ赤なゴツいやつがショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」を高らかに鳴らしながら降りてくる。荘厳なオーケストラの響きがメインスピーカーからオクタゴンの重低音に移り変わっていく。