NEO JAPONISM、MEGMETAL曲とコライト制作で考えるラウドロックのトレンドとオリジナリティ|「偶像音楽 斯斯然然」第68回
NEO JAPONISM、MEGMETAL曲とコライト制作で考えるラウドロックのトレンドとオリジナリティ|「偶像音楽 斯斯然然」第68回
NEO JAPONISMが、10月17日に11thデジタルシングル「TOMOSHIBI」をリリースした。海外ヘヴィミュージックのトレンドであるエレクトロ要素とグループ本来のカラーを見事に融合させた同曲は、BABYMETALをはじめ、SixTONESやDa-iCEなどの楽曲を手がけるMEG(MEGMETAL)がプロデュースを担当。今回、NEO JAPONISMの新規軸を提示した「TOMOSHIBI」の音楽的な特徴をはじめ、MEGのサウンドクリエイターとしての個性、コライトという音楽制作、ラウドロックのトレンドについて、冬将軍が独自の視点で掘り下げる。
NEO JAPONISM制作チーム“A-Spells”の強さ
そうしたNEO JAPONISMの楽曲の多様性と先見性はその制作陣にある。Saya率いる“A-Spells”なる制作チームだ。日本の音楽シーンでは珍しい複数クリエイターによるチーム体制での楽曲制作を行なっている。1人ですべてを担う日本人作家気質とは真逆で、海外ではポピュラーとなっている複数人で制作を行なう“コライト(Co-Write)”を組織化したものだ。コライトは各々の得意分野を活かし、役割分担を明確にすることで、より精確な楽曲制作を行なうと同時に作業自体の効率化を図ることができる。
こうしたコライトに特化したチーム体制といえば、BiSHやBiSといったWACKグループのサウンドプロデューサー、松隈ケンタのSCRAMBLESが有名であるが、SayaはSCRAMBLESの門下生であった。実際にSaya自身もBiSやGANG PARADE、PEDRO……といったWACKグループの楽曲制作に携わっている。
実際にNEO JAPONISM楽曲の制作陣を見てみると興味深い。「Subliminal」「Signal」といった今どきのエレクトロ色の強いダンスミュージックを手がけているのは宮内ソウマ。EDMとポストハードコアを掛け合わせ、革新的なサウンドを鳴らしていたバンド、Give Nothing Backでボーカル&シンセを担当。メインコンポーザーでありバンド中心人物だった。
NEO JAPONISM「Signal」
一方で「WORLD PARADE」はチップチューンで、正攻法に行けばPerfume的な断片的な言葉並べの機械的なメロディになると思うのだが、詞とメロディが一体化しているいい意味での土臭い節回しに仕上がっているのは、シンガーソングライターの山本紗江が作詞作曲を担当しているからだろう。
NEO JAPONISM「WORLD PARADE」Dance Practice
そして、今回MEG曲に共作として関わっているのが山本隼人だ。MEGと同じMUSIC FOR MUSIC所属で、MEGとNEO JAPONISMを繋ぐ人物である。もともとはSayaとバンドを組んでいた、いわばSayaの盟友であり、NEO JAPONISM楽曲には欠かせない存在でもある。先述の「GAN GAN HERO!!!!!」や「Trigger」でのSayaとの共作、そして個人作曲としてはストレートなEmo ナンバー「Set off」、チューバとバストロンボーンの中低音ブラスが今どきのダンスミュージック風情を醸す「TRAUMA」など、重要曲を生み出してきた。作風、作家性としてはMEGとベクトルが似ているところもあり、山本がいたからこそ、いつかMEGがNEO JAPONISMに曲を書くのではないかという期待があったのだ。
NEO JAPONISM「TRAUMA」
こうした楽曲の振り幅はチーム制作の大きな利点であるが、昨年2020年8月から2021年10月までの14ヵ月のあいだに1枚のアルバムと11曲のシングルをリリースするという驚異的な制作ペースで攻めているのも、チーム制作だからこそ成せる業であり、NEO JAPONISMの大きな強みとなっている。
NEO JAPONISMは今年5月に、マネジメントとして株式会社NEO JAPONISMを設立したが、7月にA-Spellsも音楽制作会社として法人化、株式会社プレイクス(PLAYX inc.)を設立している。攻勢を緩めることなく、ますます活発化するNEO JAPONISM、そして両社の制作体制から目が離せない。
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