
TEAM SHACHI、わーすた、NEO JAPONISM、#ババババンビ……ドラムがカッコいいグループはカッコいい|「偶像音楽 斯斯然然」第62回
TEAM SHACHI、わーすた、NEO JAPONISM、#ババババンビ……ドラムがカッコいいグループはカッコいい|「偶像音楽 斯斯然然」第62回
あえて断言しよう。“ドラムがカッコいいグループは間違いなくカッコいい”。これはバンドのみならずアイドルにも共通すること。今回は“ドラム”に徹底的にフォーカスして、カッコいいドラムを聴かせるアイドルグループをピックアップ。本コラムの本領を発揮した、マニアックだが、ロックファンなら膝を打つ楽曲分析をお届けしたい。
NEO JAPONISM 洋楽アプローチの極上サウンド
ロック系のアイドルでドラムがカッコいいといえば、やはりNEO JAPONISM。耳にへばりつくような分厚いディストーションギターを筆頭に、ダイナミックレンジの広いサウンド、立体感のある音像と奥行きのある洋楽アプローチのミックス含め、インディーズとは思えない極上のサウンドクオリティを誇っているが、ドラムももちろん絶品である。
NEO JAPONISM 「Trigger」Music Video
ディストーションギターとシンバル、シンバルと女性ボーカル、というメジャーであってもぐしゃぐしゃになりがちな倍音成分のぶつかり合いを回避しながら、見事な分離感あるミックスで仕上げている。サウンドプロデューサー・Sayaと、氏の制作チームであるA-Spellsの大きなこだわりを感じる部分だ。Sayaは松隈ケンタ率いるSCRAMBLES門下生、同じくNEO JAPONISM楽曲を多く手掛ける山本隼人は、岡嶋かな多、MEG(MEGMETAL)らのMUSIC FOR MUSIC所属ということで、WACKとBABYMETALの血筋をハイブリットしながら完全なるオリジナルの音を作り上げてきたといってもいいだろう。
多くのNEO JAPONISM楽曲でドラムを叩いているのは、嶋村ひかり。以前やっていたバンドや、READY TO KISS、八坂沙織(ex.SUPER☆GiRLS)のサポートなど、印象的なドラマーだったので覚えていたのだが、NEO JAPONISMで叩いていることを知って合点がいった。手数は多いながらも緻密に考えられたフレーズが印象的である。個人的には、EP『NON-CALL NOW』のM2「again」からM3「rewind the story」に入って、イントロ終わりのチャイナシンバル、これがタイム感含めて最高なのである。
『NON-CALL NOW』
ドラムとは話が離れるが、メンバーのスキルがぐんぐん上がっていることが目にも明らかなNEO JAPONISM。それに合わせて楽曲の難易度もどんどん上がっている。先日リリースされた「Signal」はhi-D#のロングトーンがサビでバンバン出てくる超絶ハイトーン曲。最高音はなんとhi-F。つい半年ほど前、当コラムの「スゴいボーカリスト10人」で福田みゆのhi-Eのロングトーンがすごいと書いたばかりだが、それに匹敵するボーカルが2人もいた。hi-D#〜Fを地声で出せる女性ボーカルは、アイドルでなくともそう多くはいないのに、そんなボーカルが3人いるアイドルグループって……。
「Signal」
アンスリューム カオスなリズム扇動
アイドルソングは、クリエイターの机上、DTM(デスクトップミュージック)で作られることが多い。たとえ打ち込みドラムであっても、いかに生っぽく聴かせられるかというのもクリエイターの腕の見せどころ。ドラム音源のプラグイン選びから、タイム感やベロシティ(音の強弱を表す数値)まで、センスが問われる。逆に、エディットのしすぎで打ち込みのような音になってしまっているロックバンドも少なくはないのである。
打ち込みであるのに、生っぽさをウマく体現できているのはアンスリューム。ふざけ倒したカオスなポップスでありながらもキャッチーで親しみやすく、中毒性がものすごく高い。それでいて基盤となっているのはガッツリハードなバンドサウンドであり、楽器をやっている人間のツボを押さえてくる。
アンスリューム「だだだっ!!!!」
楽曲のカオスさを増長しているのは紛れもなく、ドラムだ。スラッシュメタルか、ブラストビートかというほどにド派手なドラムがやたら耳について離れない。しかし、この手数も多く、足癖の悪いドラムが、緩急のついた楽曲展開のガイド的な役割になっており、一聴してノリづらそうな楽曲であるにも関わらず、身体でリズムを取りやすくなっているのはドラムによるリズム扇動によるところが大きい。
アンスリューム「警察犬」(Official Music Video)
闇雲に乱れ打っているように思えて、きちんと生っぽさを考えているところも抜け目なく。サウンドプロダクトはもちろん、うねるようなグルーヴ感も見事。
アンスリューム「かがやけ!サンシャインマスカット」
最新曲「かがやけ!サンシャインマスカット」はキャッチーで爽やかな夏ソングであるが……いやだから、こんな手数いらねえだろっ!とツッコみたくなる暴走機関車ドラムが最高である。プログレドラマーのキャノンタムのようにポコポコ鳴らしまくってるスネア。サビのキメ《しゃっしゃっしゃっしゃっ シャイニングマスカット》のウラで歌メロリズムをわざと引っ掛けるようにポッコポコいってるハネたリズムパターンはなんぞ?と思ったら、その後のサンバ展開の伏線なのか……? 恐るべしサウンドプロデューサー、katzである。
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