日向坂46「君しか勝たん」のどこかつかみどころのない語感はJ-POPのトレンドになり得るのか？｜「偶像音楽 斯斯然然」第58回

K-POPの日本語詞で生じる違和感

K-POPグループの楽曲には日本市場に向けた“日本語バージョン”が作られることが多い。詞はわかるのだが、なぜか違和感が残る。それは技術的な発音やアクセントが、という表面的なものよりも、母国語ではないために生じてしまう感情としてのイントネーションの相違であるように思う。それと似た感覚を覚えたのがNiziUだった。

NiziU 「Make you happy」

言わずもがなNiziUは、韓国のJYPエンターテインメントと日本のソニーミュージックによる日韓合同プロジェクトオーディションから誕生したガールズグループ。日本人が日本語で歌っているのに、韓国のプロデューサーが手がけると、K-POPな聴き心地になるのだから面白い。そうしたボーカルディレクションの妙は昨年プレデビューアルバム『Make you happy』がリリースされた時に、当コラムで“K-POPとJ-POPの相違”として、詳しく書いた。

そこでも述べているのだが、「Make you happy」は、口語調詞でありつつ、さらに角を持たせないように母音を押し出さず弱めに発音して、やわらかい印象を与えている。韓国語は英語と同様にリズムの収まりがよいため、日本語詞には対照的なやわらかさとすべらかさを求めているようにも思えたのである。

日向坂46とNiziU、ベクトルはまったく違えど、口語調詞と符割りに忠実で詞を引き伸ばしている方法論、やわらかな語感、それによって生まれるつかみどころのない聴感……、直接的なものは別としても、方法論は共通するところが多い。

それはどこか、情報量が多く、変化球も乱立する現在のアイドルシーン、いや、音楽シーンへのアンチテーゼのようにも思える。

そのことは、ほかのアイドルにおけるメロディとリズムと詞の関連性を紐解けばわかるはすだ。