困難な時期に切り拓くアイドルシーンの新たなる希望[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「神宿が国民的グループになることによって、アイドルマーケットに対しても大きな活力を感じてもらえるきっかけになる」

困難な時期に切り拓くアイドルシーンの新たなる希望[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「神宿が国民的グループになることによって、アイドルマーケットに対しても大きな活力を感じてもらえるきっかけになる」

困難な時期に切り拓くアイドルシーンの新たなる希望[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「神宿が国民的グループになることによって、アイドルマーケットに対しても大きな活力を感じてもらえるきっかけになる」株式会社神宿 代表取締役・柳瀬流音インタビュー後編

全3回にわたる“コロナ禍のアイドルマネジメントを探る 世界のアイドルそして神宿の未来について”をテーマにした株式会社神宿 代表取締役・柳瀬流音インタビューの後編。最終回となる今回は、神宿の5つの戦略軸の中から5つ目の“音楽ストリーミング”の話題を中心に、グループの今後のビジョンについてじっくり語ってもらった。コロナ禍でも攻めの姿勢で新たなビジネス展開に着手し、独自の存在感を放っている神宿。アイドルシーン全体の活性化につながる可能性を秘めている彼女たちの新たなる一手とは?

編集協力:村田誠二

日本において資金調達をするのは、ものすごくハードルが高い

──先日、羽島みきさんが、前日“アイドルってやっぱり寿命があるものだけど、神宿はそこを超えていきたい”という発言をしていて、神宿のメンバー自身が自分たちの価値を長いものとして捉えていると思いました。

柳瀬:
その話の流れで、メンバーの個人FCの話をさせていただければと思うんですが、本当にこのコロナ禍でなければ、こういうアクションはなかったと思うんです。去年の4月~5月くらいによく考えていたんです──当然メンバーも1人ひとりがコンテンツなわけですよね。ただ前提として個人の人生がある。じゃあ今、僕が死んでしまったり、チームが解体したり、何かトラブルがあった場合、メンバーにどういう資産が残るんだろう?と思ったんですよ。ツイッター、YouTube、インスタグラムって、フォロワー数が資産として語られることも当然あるんですけど、どちらかというとエンゲージメントとか関係性のためのものですから、その数字=資産かというと、それはちょっと違うかなと思っていて、実はメンバーが持っている資産というのは、まさしくファンの方たちとのエンゲージメントなんですよ。で、この先、会社組織としても僕個人も未来はどうなるかわからないからこそ、これをしっかりと形にしておく必要がある。そこで思い立ったのが個人FCというシステムで、コミュニティ化するということが重要だと思ったんです。例えば、全額個人に還元するという考え方だとしたら、手数料は安ければ安いほどいいですし、機能はシンプルであればあるほどいい。ということで、小澤(昂大)さんという、これまた同じ大学の出身の方なんですが、彼が業界を盛り上げようとすごく頑張って『CHIP』というサービス(ファンクラブアプリ)を作ってくださったんです。今、神宿の『舁夫会(KAKIFU-KAI)』としてご一緒させていただいているETBさんとか、有名どころで言うとSKIYAKIさんとか、ファンクラブサービスの方々って、どちらかというと“コミットします”、“お手伝いします”、“写真も撮りに行きますよ”という形で、マネジメントとしては助かるんですが、手数料をいただきますというサービスなんですね。僕は、メンバー個人とファンのみなさんを直接的につなぐことにおいて、手数料ほど無駄なものはないと思っているんですが、そこで小澤さんのCHIPは、プラットフォーム手数料10%とクレジットカードの決済手数料3.6%のみで、APPLEのようなアプリ手数料30%も引かれないスキームでやっているんですよ。なので、86.4%がメンバー個人に還元されるという。

──その数字はすごいですね。

柳瀬:
そうすることによって、ファンのみなさんとメンバーとのつながり方が変わってくるだろうなと思ったんです。あとは、まだまだこれからアップデートしていきたいと思ってる領域なんですけど、みなさんの協力次第でメンバーが新しいことに挑戦することもできるし、何かしら継続して活動することもできる、という仕組みを作りたい。で、それもメンバーにとって大きな資産になるんじゃないかと思ってるんです。もちろん、もともとお渡ししている金額にアドオンする形で個人FCの収入が入りますと。で、メンバー1人ひとりに使えるお金が増えたり、できることが広がった方が、組織としてもいいに決まってるんですね。ファンの方のエンゲージメントが高まることも、メンバー自身が自由に自己投資できるお金が増えることも、僕らチームとしては望ましいことなんです。なので、個人FCについてはニュースリリースも出しましたけど、もっとその真相について知っていただきたいなという想いが強かった施策ではありますね。

──それも英断ですよね。なぜならマネジメント自体の収入が下がるわけですから。でも、そこだけでは見ていないということですね。

柳瀬:
そうですね。見ざるを得ない部分ではあるんですけど、ただ、出て行くお金と入ってくるお金と考えた時に、僕は、株式会社は入ってくるお金の方が増えていなきゃいけないんです、という概念だけじゃないと思っているんですね。株式会社神宿という会社もそうですけど、このチーム全体として神宿っていうアイドルグループがどんどん大きくなっていって、国民的グループとして認知されるというところまで成長することが、ヴィジョンでありゴールなんですよ。それ以外の意思決定の迷いというのは、そのゴールに対して矛盾するんじゃないかと思っていて、そこ(会社としての収入が下がること)をどういう風に解決するかは、僕たちスタッフの側の腕の見せどころなんじゃないかなと思っています。

──株式会社神宿では、今後の戦略などに関するミーティングはどのくらいの頻度で行なっているのでしょうか?

柳瀬:
スタッフ全体の定例ミーティングは、週イチにオンラインでやっていますけど、セクションごとではもっと細かく話していますし、ライブ後はたいてい深夜2時くらいまではスタッフでミーティングしていますね。それくらいの頻度じゃないとなかなか追いついていかないというか……正直言って、神宿の理想的な活動においてはリソースが全然足りていないという部分があって、YouTubeの話をすると、例えばBLACKPINKがおそらく1本2億とか3億とかをかけてMVを撮っている一方で、今、日本のグループが平均でいくらくらい予算をかけているのかというと、もうゼロがいくつ違うかわからないくらいの差になってると思うんですね。でも、予算10万円くらいでできていようが、2~3億でできていようが、YouTubeを観ている人にとっては同じ映像作品として並列に見られてしまうんです。そこで僕はよくハンバーガー屋の喩え話をするんですけど、例えばマクドナルドの隣に超高級ハンバーガー屋ができますと。で、その超高級ハンバーガー屋が無料でハンバーガーを配りますと言ったら、みんなもらうでしょって話なんです。そうするとマクドナルドも無料にせざるを得ない。そうなって初めて、クオリティとかコンテンツの勝負になると思っていて、だからこそ、今K-POPもそうですし、欧米のヒットアーティストもそうですけど、スタッフの数も含めて非常に大きなバジェット感のチームと見比べられちゃう、つまり並列で闘っていかなきゃいけないというのは、日本のアイドル、アーティストにとっては非常に苦しい状況なんじゃないかなと思ってます。

――確かに受け手視点で見ると、それぞれがどんな予算で作られていようが、1つの作品ということではすべて同一になりますね。

柳瀬:
もちろん予算が少ない中でも素晴らしいクリエイティヴィティを発揮されている方もいらっしゃいますし、それは素晴らしいことだと思います。ただ、みなさんどこまでご存知かわかりませんが、例えばBig Hit Entertainment(現HYBE)で言うと、まずBTSは結成前にSV Investmentという会社が約4億円出していて、2016年にはLB Investmentという会社が約5.5億円出してるんです。さらに決定打として、2018年に韓国のNetmarbleという会社が約200億円出資しているんですね。たぶんそれ以外にもいろいろあると思います。なんで200億も出せたかという話なんですけど、ここの代表がBig Hit Entertainmentのパン・シヒョク代表の従兄弟で、彼がゲーム会社で上場して会社に資産があり、シナジーもあったということだと思うんです。で、BLACKPINKを手掛けているYG(ENTERTAINMENT)も、2014年にLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループから約80億円出資を受けています。彼女たちって、衣装を見てもシャネルのオートクチュールがあったり、かなりハイブランドなものを普段から着ているじゃないですか。本当のところはわからないですけど、LVMHグループが80億出資していると考えたら、衣装提供もしているということは容易に推測できますよね。ということはBLACKPINKが売れることによって、モデルとしてもアンバサダーとしても使えるみたいなことが最初から想定されている可能性すらある。で、そのあとにテンセントの関連会社から93.5億円の出資を受けている。現在こういうバジェット(予算)感で動いているのが、K-POPのアイドルグループで、育成の時からグループに数億円をかけているわけです。

――まさに桁が違う話ですね。

柳瀬:
こういう動きって、まず日本の芸能事務所とかマネジメント事務所では考えられないですよね。数億円出資するというだけで大騒ぎなのに、かたやK-POPは200億とかをバン!と追加投入してくる。もちろんBTSに関してはメンバー1人ひとりのスペックもすごく高いですし、僕、ドキュメンタリーを観るのがすごく好きで、ネット記事なんかもいろいろ追って見てますけど、やっぱりスタッフの数も桁が違うんです。Big Hit Entertainmentは、確かマネジメントスタッフがプロパーで100人くらいいるのかな。で、最近上場したんで調べてみたらスタッフが1,000人まで増えていたので、それに太刀打ちするのはなかなか厳しい。やっぱり日本において資金調達をするのって、ものすごくハードルが高いんですよ。銀行も投資家もそうですけど、“マネジメントって属人性が高いので、当人に何かあったら終わりでリスクが高い。そんな会社に投資できない”っていうのが日本のマーケットなんです。上場している会社もありますけど、ハードルが高いことには間違いないです。(資金を調達するには)再現性──売れたグループと同じようなグループを輩出できるか──も語らなきゃいけないですし。僕も、神宿と同じような規模のグループをあと10組作れますか?と言われたら、そんなことは難しいわけで。やっぱり日本で資金調達をするとしたら、そういう話になってしまうところが、このマーケットの非常に厳しいところですよね。

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