赤裸々に語るこれからのアイドルビジネス戦略[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「アーティストビジネスは、コンテンツIPの価値をどれだけ高め続けられるかが重要」

赤裸々に語るこれからのアイドルビジネス戦略[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「アーティストビジネスは、コンテンツIPの価値をどれだけ高め続けられるかが重要」

赤裸々に語るこれからのアイドルビジネス戦略[株式会社神宿 代表取締役インタビュー]「アーティストビジネスは、コンテンツIPの価値をどれだけ高め続けられるかが重要」株式会社神宿 代表取締役・柳瀬流音インタビュー中編

全3回にわたる“コロナ禍のアイドルマネジメントを探る 世界のアイドルそして神宿の未来について”をテーマにした株式会社神宿 代表取締役・柳瀬流音インタビューの中編。今回は、神宿の5つの戦略軸の中から“EC”と“YouTube”について。メンバーの時間を切り売りするというビジネスモデルから脱却しなければならないという思想をもとに取り組んでいるEC、そしてチャンネル登録者数や再生回数を活動の指標としていないという神宿の独自のYouTube活用について、柳瀬氏が実情を挙げながら語りつくす。

YouTubeでは登録者数とか再生回数は追いかけてない

──現状、業界全体としてウェブ特典会を活用するシチュエーションは少なくないですよね。

柳瀬:
そうですね。アイドルマーケットに限らずマネジメントビジネスというものが変化を求められていると感じます。ただ、いきなり変えるのは難しいので、徐々にアップデートしていく中で『チェキチャ!』さんのようなサービスを利用できるということは、世の中のアイドルにとっては価値があることなんじゃないかなと思います。今の話に関連して、先に4つ目の軸となるYouTubeの話をしたいと思います。神宿は、けっこう岡田(康宏/神宿&かみやどスタッッフ)さんが楽屋裏を撮ってくださっていて、確かどこかのインタビューで話していましたが、塩見さんが神宿を知ったきっかけがその楽屋裏の動画だったらしいんですね。岡田さんはすごく先見の明がある方で、イノベイターなんです。いろんな新しいサービスを調べてはどんどん採り入れていくというマインドの方で、当時から神宿の動画をアップしてくださっていたので、動画のストック自体はたくさんあったんですけど、UUUMさんとご一緒させていただくタイミングでいろいろ変えていこうという話になって、今のスタイルに近づいていきました。で、神宿自体、YouTubeをどういう風に使っているのかというと、実は追いかけている数字みたいなものが、ほかのユーチューバーさんとかアイドルさんとは違うんじゃないかと思っているんです。

──それは具体的にどういう部分ですか?

柳瀬:
チャンネル登録者数とか再生回数は追いかけてないんです。

──そうなんですか!?

柳瀬:
やっぱり専業ユーチューバーではないので、YouTubeというものに対してのスタンスがほかのクリエイターの方とは違うと思っていて。例えば、みなさんおっしゃってますけど、コロナになって、おそらく世界の広告マーケットとしてのYouTubeへの出稿量って下がったと思うんです。つまり1再生当たりの広告収益って下がってるはずなんですよ。断言はできないけれど、実際に神宿のチャンネルにおいてもけっこう下がっていて、それは再生回数が下がったのではなく、1再生当たりの収入が下がった。

──けっこう赤裸々な話ですね!(笑)

柳瀬:
今日は赤裸々にお話しますよ(笑)。で、下がったら当然困るわけじゃないですか。でも、神宿においてYouTubeチャンネルというのは、メンバー5人がどういうキャラなのか?を表現する場なんです。それが例えばMV動画なら、カッコよくて輝いている“憧れ”という側面が観られるし、バラエティ系動画なら、面白い側面が観られる……とか、いろんな側面を観てもらうためにやっているというのが1番大きいんです。例えば、前月のYouTubeの収入が入ってくるじゃないですか。またぶっちゃけて言いますけど、多い時で3ケタ万円くらい入ってきますと。それを全額、次のYouTubeのコンテンツ制作に投資します。記憶に新しいところでは、コロナになったあとに公開し始めたダンス動画は、画質もいいちょっとリッチな仕上がりになっていたと思うんですが、そういう風に動画で得た収入は、1円の利益も残さずに次の動画コンテンツに投資していく、というサイクルを作ってきているんですね。それによって、YouTubeのコンテンツ自体で継続的にメンバーのキャラクターを見せることができる。僕たちは独立系なので、大手のアイドルさんのように毎日テレビに露出するというのはハードルが高い。ただそれができないからといって何もしないというのは違うと思うので、そこを、YouTubeというプラットフォームを使って自己表現としてやっているわけです。

──継続的な露出によって神宿の魅力を伝えるという意味では、ファンとのある種のコミュニケーションの場になっているわけですね。

柳瀬:
そうですね。よく広告業界では、“3回見たら好きになる”みたいな話を言うじゃないですか。例えば1回目、(一ノ瀬)みかさんの『引越し侍』のCMを観ましたと。そこでなんとなく脳裏にある状態で、2回目は駅貼りポスターを見ました。で、3回目は『関ジャム』に出てるみかさんを観て、“あれ? この子って見たことあるな。神宿っていうアイドルなんだ”ということで強く印象に残る──こんな風に、認知からエンゲージメント(強固なつながり)にたどり着くまでに3回見るという。で、YouTubeって何気なく観られるコンテンツではあるので、それとなく観ていただくだけでも神宿のよさをわかっていただけるんじゃないかな、と思ってるんです。そういう意味で、もちろん動画1本1本のクオリティは大事なんですが、どちらかというとメンバー中心、特に(羽鳥)みきさん中心に進めている領域で、みきさんはリーダーでメンバーのこともよく知っているので、みきさん視点で“メンバーのこういう画を見せたい”とか“こういう表情が撮りたい”っていうことをどんどん形にする、そういうコンテンツなんです。

──メンバーにコンテンツを預けちゃうというのも、このコロナ禍の体制になってから決めたんですか?

柳瀬:
そうですね。2019年4月に塩見さんが加入した頃から、僕もマネジメント領域において完全フルコミット状態でやらせていただいている中で、最初にも話しましたが、大人が操っている印象のアイドルって僕は違和感がありましたし、メンバーもある意味で大人になってきていて、対等に話していてもまったく違和感がないですから。

──ちょっと話がズレますが、柳瀬さんってメンバーのことを“さん”づけで呼びますよね? アイドルマネジメントでは、そういう方にほとんど出会ったことがないです。

柳瀬:
やっぱり僕からしても、メンバー1人ひとり、プロフェッショナルだと思いますし、そこは尊敬しているので、特に意識してそうしているわけじゃないんですけどね。ほかのスタッフもそれに近いニュアンスだと思います。特に敬語じゃなきゃいけないとか、タメ語はダメとか、そういうルールがあるわけじゃないです。

──一般化はできませんが、特にアイドル業界はスタッフが年上の場合が多いので、アイドルに対して“さん”づけしないことが見受けられますし、僕自身、アイドル関連の仕事をしていて驚いたのが、スタッフのことを“大人の人”って呼ぶことで。最初、その表現にすごく違和感がありました。

柳瀬:
確かに確かに。そもそも、例えば“運営さん”とか“プロデューサーさん”みたいな言葉も、けっこうアイドル業界ならではだと思っていて、僕らとしてはそういう慣習に縛られずに理想の形を作っていきたいと思っているので、僕自身、“運営”という言葉自体を使わずに“マネジメント”と言うようにしていますし、メンバーに対しても僕はプロデューサーという立ち位置を取っているわけではなく、どちらかというと“メンター”みたいな立ち位置と、あとは“マネージャー”という立ち位置ですよね。その2つは意識して接するようにしています。

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