【連載】沖口優奈×『矢口真里の火曜The NIGHT』番組プロデューサー＆演出担当（前編）「流行や興味といった形のないものを察知して、視聴者に楽しんでいただかないといけない」マジカル・パンチライン 沖口優奈「沖Pの教えてプロデューサー」第1回：ABEMA『矢口真里の火曜The NIGHT』番組担当プロデューサー・堀越玲央／演出・松田征己（前編）

台本の中にあることはきっかけにすぎない（松田）

沖口：
仕事をされていて、難しいなと思うのはどんなところですか？

堀越：
テレビの仕事って扱っているものが視聴者の流行だったり、興味だったりといった形のないものなんですよね。なので、そこをいかに察知するか。アンテナを張って、視聴者の方が“そんなことがあるのか！”と思うようなことを提供して楽しんでいただかないといけない。その一方で、視聴率や視聴数という明確な数字で番組の評価が現れる。自分たちが面白いと思ってやったことが、数字がよければ万歳でいいんですけど、数字が振るわなかった場合、なぜダメだったのかという分析をしっかりして、次に活かしていかないといけない。単純にモノ作りをして、それがよかった、悪かったでは済まないというか、捉えどころがなくて、ゴールが見えづらいし、正解も必ずしも1つではない。そういうところが難しいなと思います。

沖口：
『火曜The NIGHT』だと、ツイート数でアイドルさんの“尺（出演時間）”が決まるじゃないですか。あそこでもリアルに数字が出ますよね。アイドル側もハラハラドキドキしています（笑）。

松田：
あ～、いいですねぇ。“アイドルがハラハラドキドキしてくれたらいいな”って思ってやっていることなんで。

沖口：
でも、マジパンは歌のコーナー（「ハッシュタグボーナスChanceシステム」）をやったことがないんです。

松田：
ホントっすか？

沖口：
そうなんですよ。メンバーの年齢の関係で深夜の番組には出られなくて。最近はそういう時に“メンバーが足りないけどやります”っていう形でやっているグループもいますけど、マジパンはそれもやっていなくて。だから、アレに参加したことがないんです。もし今後、出演させていただけることになったら、1番の不安が“数字”です（笑）。“あいつ（沖口優奈）、毎週出ているのに、意外とツイート数少ないな”ってなったら嫌だなって（笑）。

松田：
そうなったらMC（矢口真里、岡野陽一）からすごくいじられますよ～（笑）。

沖口：
“全然ダメじゃん！”って（笑）。

松田：
むちゃくちゃ言われると思いますよ～（笑）。

堀越：
よいフリができましたね（笑）。“おきぐっちゃんなら1,000ツイート以上でフルコーラスは当たり前だよね”ってMCの2人に言ってもらうという番組の流れができました（笑）。

沖口：
最近は1,000ツイート以上が多いですよね。

松田：
2回くらいありましたね。

堀越：
それはおそらくSNSの普及……もちろん以前から普及してはいるんですけど、アイドル本人たちがSNSを使ってファンを促したりするのが上手になったし、ファンの方もそれに乗った方がいいとわかってきていて、加速しているんだと思います。

沖口：
だからこそ、ドキドキするんです（笑）。

松田：
嬉しいですね～（笑）。

堀越：
我々としては、“みんな、もっとツイートしてね！”というような必死さ、泥くささが出るといいなと思っていて。アイドルのキラキラした部分だけではなく、頑張って汗をかいているんだっていうのが見えるといいなと思い、さまざまな企画を考えているます。

沖口：
確かに。アイドルって一見可愛い女の子ですけど、泥くさい部分もあるんですよね。そこが魅力だったりもして。

堀越：
みんな、泥くさく努力しているはずなんですよ。それを見せるのか、見せないのかは、本人たちのブランディングですけどね。

沖口：
すごく勉強になります！

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松田：
おきぐっちゃんは割と日常を見せている方じゃない？（笑）

沖口：
私生活を切り売りしています（笑）。お母さんから連絡が来ますよ。“あんた、そろそろベッドシーツ換えな！”って（笑）。母とは会っていないのに、番組を観ているから（部屋の様子がわかってしまって）怒られるんですよ。

松田：
お母さんは大喜びですね。娘の様子が逐一わかるので。

沖口：
毎週ですからね（苦笑）。“後ろのぬいぐるみ、増えとったな。どこで買った？”みたいなことも言われました（笑）。

堀越：
これはすごい親孝行かもしれませんよ。

沖口：
それはホントにそう思います。お母さんもお父さんもすごく喜んでくれていますから。毎週、“今日はどうだったね”みたいに、感想を送ってきてくれます。ありがたいなって。松田さんが演出のお仕事をしていて、難しいなと感じることはどんなことですか？

松田：
難しいことですか……この番組でいうと“生放送感”というか、堀越さんがおっしゃったように、アイドルの子が素になって頑張っている泥くさいところを見せた瞬間を捉えたいんですよね。リアルな感情が動いたなって思える瞬間が生まれるといいなと思っているんです。それにはどうしたらいいのかなって悩むことはありますね。それが難しいといえば難しことですかね。堀越さんがおっしゃったように答えのない方法論なのでね。

沖口：
アイディアを出す時に煮詰まることってありますか？

松田：
えっと……ないっすね（笑）。まぁ、あるっちゃあるけど……でも、優秀なスタッフがいっぱいいるので。僕だけで考えるのであれば、僕は考え込んでしまう方なので、煮詰まることも多いと思いますけど。ただ番組会議の中でいうと、“どうします？”って言って、みんなが考え込んでしまう時間もあったりしますけど……煮詰まってしまって“次回に持ち越し”みたいなことはほとんどないです。

沖口：
みんながちょっと考え込んでしまうことはあっても、誰かからいいアイディアが出てくる？

松田：
そうですね。それと、生放送なんで台本にないところが面白くなるじゃないですか。台本の中にあることって、きっかけにすぎないんですよ。そこから派生して、何かが生まれた時が1番面白いから、アイディアを出す時には台本上でカチカチにしなくてもいいかなって思っているんです。だから“こういう企画やりましょうか？”、“じゃあ、それでいきましょうか”って感じなんですよね（苦笑）。

沖口：
あとは出演されているみなさん次第というか……。

松田：
MCの矢口さんと岡野さんが、放送の中で見つけることがいっぱいあるんですよ。例えば先日の絵恋ちゃんの回（2021年3月9日（火）24時〜放送）でいうと、“絵恋ちゃんってすごくヤンチャだよね”っていうのが世間一般のイメージだったとして、僕らとしては“いや、真面目じゃん！”っていう部分をいじったらいいんじゃないかと思って。MCの2人がそれに乗っかってくれて、“真面目じゃん！　真面目じゃん！”って言ってくれた結果、なかなかの反響だったんです。終わった後にツイートとかを見てみると、“絵恋ちゃんのよさはそこなんだよね”って書いてくれていた人もいて、そういうのを見るとやっぱりそれでよかったんだなって思います。なので、そこまで台本を固めないようにしています。

沖口：
本当にヤンチャだったら人気出ないですよね。根本に真面目さがあるから、絵恋ちゃんのよさが出るというか。私もタロットのコーナーの前に彼女のことを調べてみて、ちょっとビクビクしていたんですよ（笑）。破天荒なエピソードがたくさん出てきたので、どうなっちゃうんだろうって。でも、番組を観ていたら“こんな素敵な人なんだ”ってわかって。タロットの時には変な緊張がなくなっていました。そういう風にファンではない人にまで伝わるようにしてくださるから、私もタロット占い師になることができましたし（笑）。

松田：
それ、本当に嬉しいですね。この前、“「タロット占い師」として仕事に呼ばれた”って言ってたじゃないですか。それを聞いて、めっちゃ嬉しかったんですよ。

沖口：
ずっと眠っていたタロットカードを出してきて、不安ながら番組で披露して、そこからタロットカードでお仕事ができるようになるとは思っていませんでした。毎週のようにタロットカードができるなんて！　『火曜The NIGHT』に引き出してもらったものだと思っています。

松田：
出演してもらって、タロット占いをやってもらった後に“別の番組でも占いで呼ばれたらいいですね”って話をしたんですよね。でも、すぐにそういう風にはならなくて。でも、最近はタロットで声がかかるようになって。

沖口：
アイドルよりもタロット占い師先行で呼ばれることもあって。“タロット占い師の沖口さんです。アイドルもやられているんですよね？”って言われました（笑）。“いや、逆なんです”って（笑）。自分の幅が広がったというか、新しい自分を見つけられたというか、本当にありがたいと思っています。

堀越：
バズるきっかけとかタイミングって、わからないですからね。特にこの業界は。

沖口：
本当に正解がわからないです。

堀越：
今、タロットでバズってきているというのは、これまでやってきたご自身の実力もありますけど、タイミングもよかったんでしょうね。人々が求めているところに、ウマく入っていけた。運がいいとも言えますけど、そういうところに興味を持っていたというのは、1つの能力だと思いますね。

沖口：
嬉しいです（照）。

松田：
おきぐっちゃんを待っている人はいっぱいいますよ。

沖口：
コメント欄で（番組の）“流れ”ができたりするじゃないですか。岡野さんが“バターアイスを食べたいけどない”みたいなこととか。放送中、コメントをずっと見ているんですけど、“おきぐっちゃん、バターアイスを持って登場か？”みたいなコメントが来たりするんですよ。“おきぐっちゃん、準備してるぞ”とか（笑）。でも、何も準備していないからいつも震えています（笑）。

松田：
それでも何かをやってくれる時が、僕らも視聴者として楽しいなって思いますよ（笑）。こちらから狙ってお願いすることもあるんですけど、ほとんどアドリブですもんね。

沖口：
たまたまですよ（笑）。

堀越：
それが面白いからこそ、次回に期待してしまうんですよ。そこが重荷にはなっていくと思いますけど、そこは使命だと思って、これからもよろしくお願いします（笑）。

沖口：
頑張ります（笑）。

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マジカル・パンチライン リリース情報

デジタルシングル「キラハピ」
発売日：5月26日（水）