hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回

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hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回「偶像音楽 斯斯然然」第54回

実は何かと共通点が多いヴィジュアル系とアイドル。ライブハウスからドームまで、ヴィジュアル系バンドの制作ディレクターを務めていた冬将軍が、今回その2つのジャンルの音楽面での関連性を多種多彩な切り口で綴る。

サウンドプロダクトが印象づける音楽の方向性

先に挙げた、BiS、NEO JAPNISM、ヤなことそっとミュートのギターサウンドは基本、ロー(低音域)とハイ(高音域)を強調した、俗に言う“ドンシャリ”サウンドが特徴的であり、これが退廃的なダークさを醸す大きな要素となっている。ヴィジュアル系をはじめ、元を探ればインダストリアル、そしてのちにモダンヘヴィネスと呼ばれたバンドが好んで用いるギターのサウンドメイクだ。逆にミドル(中音域)を強調したギターサウンドは派手な印象になり、ギター自体が前面に出てくる音像になるため、HR/HMのバンドに多くみられる。わかりやすく例を挙げるのなら、X JAPANとhideソロ及びzilchでは、同じ曲が存在しているが印象がだいぶ違う。もちろん演奏者やボーカルが違うこともあるが、そうしたギターサウンドメイクによるプロダクトとそこに付随したアレンジによって、音像の印象が大きく異なっている。当時よく、“Xは苦手だがhideは好き”という声を耳にしたことも多かったが、そういったサウンド面からの影響もあった。

LADYBABYの“極悪サウンドに乗せて少女が可愛い詞を歌う”という方向性は、BABYMETALの発展系にあるわけだが、ギターサウンドのドンシャリ具合いを強調したプロダクトによって、メタルよりもインダストリアル、モダンヘヴィな印象を強くし、音楽ジャンルとしての差別化を図っている。

The Idol Formerly Known As LADYBABY「Pero」(2017年)

楽曲とサウンド面で大きくロックファンを巻き込んだといえば、BELLRING少女ハート。サイケデリックロックからダークエレクトロ、EBMに至るまでの音楽性で、耳の肥えた洋楽ファンを熱狂させた。4ADやRough Trade(ともにイギリスの音楽レーベル)といったブリティッシュな香り、さまざまな音楽ジャンルでBELLRING少女ハートの音楽を語ると長くなるが、ヴィジュアル系文脈で簡潔に説明することができる。ズバリ、“LSBがやってそうな音楽”、つまりは“LUNA SEA、SOFT BALLET、BUCK-TICK系の音楽”というわけだ。実際、minus(-)がプロデュースしたこともそれを裏付けた。

BELLRING少女ハートの音楽性はのちに、THERE THERE THERES、NILKLYへと引き継がれながら発展していくわけだが、NILKLYには“作編曲・今井寿”と言われても信じてしまう楽曲(「Block System」)が存在しているし、そうした楽曲を手掛けているのはヴィジュアル系バンド出自のクリエイター、福井シンリであることも興味深い。

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