hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回

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hideからBiS、BUCK-TICKからMIGMA SHELTERまで ヴィジュアル系ロックで紐解くアイドルクロニクル|「偶像音楽 斯斯然然」第54回「偶像音楽 斯斯然然」第54回

実は何かと共通点が多いヴィジュアル系とアイドル。ライブハウスからドームまで、ヴィジュアル系バンドの制作ディレクターを務めていた冬将軍が、今回その2つのジャンルの音楽面での関連性を多種多彩な切り口で綴る。

現在のシーンで受け継がれるものとギターの存在感

現在のアイドルシーンではそうした先人の“イズム”がいろんなところに受け継がれている。ヴィジュアル系バンドの出自で、松隈の門下生であり多くのWACK楽曲も手掛けているSayaがサウンドプロデュースを務めるNEO JAPONISMはその好例だろう。個人的には“BiS、MUCC、メリーをぐちゃぐちゃに混ぜた極東ハードコア”などという少々乱暴な言い方をしているのだが、節々にそういった要素を感じる楽曲が特徴的だ。

怒髪天やTHE BACK HORNばりのバンカラ風旋律とゴリゴリのバンドサウンドが猛り狂う
NEO JAPONISM 「Trigger」(2021年)

さらには「LOSER」「My Hope」といった、刹那的でお耽美方面の楽曲も存在する。どこか陰のあるポジパンの香り嗅ぐわす楽曲は、D’ERLANGERやZi:KILLあたりが好きなバンギャにこそ聴いてほしい楽曲だとも思っている。“肥大したルサンチマン”“蹴飛ばしたドア 眩しすぎる陽が逃げ場をなくす ありのままほら咲き誇ってLOSER”なんていう、ある種のヴィジュアル系的中二病詞を女性アイドルが野太い声で歌うなんて、最高じゃないか。

NEO JAPONISM「HERE NOW」

“ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディーを乗せて歌ってみる事にする。”というコンセプトが表す通り、どこか焦燥感を煽ってくるヤなことそっとミュートもまた、ヴィジュアル系の琴線に触れてくる部分が多いグループだ。

メリハリを聴かせたアンサンブルアレンジと音符を大きく取った歌メロ、そこをなぞる透明感ある歌声が絶妙な世界観を作り上げる
ヤなことそっとミュート「Lily」@Zepp Divercity 2019.1.12

グランジ、シューゲイザーといったオルタナティヴロックベースの楽曲、透明感が醸す儚さ……ブリティッシュな雰囲気を感じさせつつ、その影響下にあるV-ROCK/J-ROCK風味を随所に感じ取ることができるはず。空間系エフェクトを用いた広がりとギシギシに歪んだギターのコントラストもまた格別だ。

ヤなことそっとミュートにしてもNEO JAPONISMにしても、ギターサウンドが楽曲の方向性を大きく支配している。また、それによってリスナーの好みも大きく変わる。たとえ、音楽的なことが詳しくないリスナーであっても、好きなギターサウンドというのは絶対にあるはずだ。

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