神宿 一ノ瀬みか［インタビュー］葛藤を経て手に入れた成熟と可能性「私はなんでアイドルをやっているんだろうと考えると、自分の肉体と思考を解放したいから」神宿 一ノ瀬みか 2021年春インタビュー

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バースデーライブはたくさんの気持ちが入り交じった場所になると思う

──そこから1年経て、今年の生誕ライブは有観客となります。

一ノ瀬：
たぶん気持ちが高まりすぎる部分もあるので、なるべく高まりすぎないようにとは思っているんですけど、でもやっぱり内心、開催できるのがすごく嬉しくて。去年、開催予定だった2020年4月12日の前に、実は恵比寿ザ・ガーデンホールに内見に行ったんですよ。会場までの道もすごく素敵だし、春だったので桜も咲いていて、“こんな素敵な場所にみんなが集まってくれて、帰る時も夜桜が吹雪いてるんだ！　ここでライブができるの、本当に幸せ！”って思ってたら、ライブができなくなってしまって……。そうしたら今回、同じ場所でできることが決まったんですね。たぶん会場に着いたら私は、その内見の日の“希望”と4月12日の“絶望”を思い出すんだろうし……正直、どういう気持ちになってしまうのかわからない。だけど今の時点で言えるのは、2020年4月12日にできなかったことも、6月28日に振り替え公演をしたことも無駄じゃなかったなって思えるようにしたいってことです。

──今年の生誕祭の演出は、すでに決まっているんですか？

一ノ瀬：
そうですね。演出面はかなり決まってます。今回グッズも全部私がプロデュースしていて、私の描き下ろしイラストがモチーフになってるんです。描き下ろしのイラストを誕生日に出すっていうのは、今年が初めてかな。グッズはペンライト、Tシャツ、タンブラー、ステッカーなどですけど、私がそれぞれの名前を考えて。しかもめっちゃ長いやつ（笑）。例えば白Tは「白じゃないから、オフホワイトだから。白じゃないから。Tシャツ」、ボルドーTは「めっちゃいい感じの赤よね～赤推しじゃなくても着てもいいと思うよ～Tシャツ」。

──ワードセンスが絶妙（笑）。

一ノ瀬：
チャコールTは、「一番お洒落に見えるヤツ～全身に汗をかくと黒Tになるよ～Tシャツ」。グレイなので、脇だけだと目立つかもしれないけど、全身にかいちゃったらもう黒だよ！っていう。あとはステッカーが「ペタペタステッカー〜いつも見てるよ〜」で、タンブラーが「ムキムキマジカルシェイカー〜プロテイン飲もうよ〜」。

──ははは（笑）。

一ノ瀬：
ここまではけっこうお洒落なんですけど、“♡♡みかちんワールドォォ全開中ゥゥ～あなたのタオルにアクセスしちゃいます♡♡〜”っていうタオルだけは、がっつりヲタクグッズという感じで、ただただ赤地に黒で文字が入ってるという。今回はそういうグッズをプロデュースさせていただきました。もちろんライブの演出もちゃんと考えてますよ（笑）。セットリストから映像のイメージなんかも考えていますし、実はソロステージもあるんですよ。去年のソロステージでは「歌うたいのバラッド」（斉藤和義）と、あとはアリアナ・グランデの「Problem」をダンスで披露しましたけど、今年はさらに……！　いや、内緒です（笑）。

──ソロといえば、最近YouTubeに公開したSiaの「Chandelier」のカバー動画は印象的でした。

一ノ瀬：
以前、RecTVさんとの『プレイリストチャレンジ』の時に、“Siaは難しいっしょ！”って話してましたもんね（笑）。

──（笑）。だから、まさか！と思いましたよ。

一ノ瀬：
やってみましたよ（笑）！　

──「Chandelier」は音域がとにかく広い曲なので、特に難しかったのでは？

一ノ瀬：
あれ、1曲丸ごと通して録ったんですよ。部分部分で分けて録らずに。だから大変だった（笑）。

──1曲を一気に録った理由は？

一ノ瀬：
やっぱり歌の抑揚とストーリー性がすごく重要だったし、感情移入もすごく重要だったから。『Artist#18File』（TOKYO MX）っていう番組で歌を披露させていただいた時にも生で一発録りだったし、それもあって。

──では、歌詞も相当読み込んだのでは？

一ノ瀬：
歌詞もですが、Siaの英語のインタビューも頑張って読んだり。Siaの曲についてファンの方が考察している文章も読んだりして、自分なりの答えを出して歌いました。

──その答えとは？

一ノ瀬：
あの曲は結局、“孤独”と“矛盾”なんですよね。あとはループするってこと。そもそも人間の生活ってそうだと思っていて、人間は個体として存在するわけだし、毎朝、日が昇って沈む、それのくり返しじゃないですか。そういう中で、Sia自身、飲酒が止められなかったりってことを歌に込めていると思うんですけど、その孤独とループという面は、私もすごく共感している部分があります。別のインタビューでも話したことがあるんですけど、たぶんあの曲は、夜のほんの一瞬の気持ちを歌に込めたんだと思う。その“一瞬の気持ち”にはすごく共感できるところがあるので、とても歌いやすかった……“Sia、そうだったんだね。孤独だったんだね”って。

──一ノ瀬さん自身は、普段、孤独とどのように向き合っていますか？

一ノ瀬：
気づいてしまった時ってことですよね。孤独って、みんな気づかないから孤独じゃないって思ってるけど、そもそも悲しみや寂しさ、孤独って、本当はすでにそこにあって、それに気づいているかどうか……だからそこに“気づいちゃった瞬間”が“孤独”って感じですよね。でも、気づく瞬間って自分ではコントロールできない。そういう意味で、みんな“気づかないように”頑張るんですよね。でも頑張れなくなった時、孤独と感じる。

──“表現者”は、そういうネガティブな感情と正面から向き合わないといけないと思っています。それが表現に深みを与えるから。とはいえ、ステージに立って表現する際には、それをエンタテインメントに昇華させないといけない。特にアイドルの場合、ポジティブな世界観を魅せることが求められることが多いですよね。

一ノ瀬：
ステージって決して表面的な部分だけでできるものではなくて、目の前にいる人を感動させたい、心を動かしてあげたいって思うと、自分から心を開いていかないといけない。だから、表面的な部分だけじゃなくて自分から気持ちをどんどんオープンにしていって、“みんなも心をオープンにしていいんだよ！”、“そういう場所なんだよ！”って導いてあげることが大事だなと思ってます。

──そうすると、今回のバースデーライブは、去年が中止になってしまったからこそ、より気持ちが溢れる空間になりそうですね。

一ノ瀬：
そうですね。テレビ番組とかこういうインタビューを通して初めてファンになってくれた人も来てくださるだろうし、昨日も“初めてですけど、チケット買いました！”っていう声もいただきましたし、いろんな期待とか楽しみとか、“よかったね”っていう気持ちとか、本当にたくさんの気持ちが入り交じった場所になると思います。

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