ネオジャポ福田の仮面ライダー、BiSとPARADISESからINUWASIまで“ソトバヤシデザイン”で繋ぐロックな新譜｜「偶像音楽 斯斯然然」第52回「偶像音楽 斯斯然然」第52回

PARADISES『PARADISES RETURN』　WACKの新たな基軸

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WAggからウタウウタの加入、そして月ノウサギがWAggへレンタル移籍し、新体制となったPARADISES。WACKのこうした衝撃的人事は賛否両論を巻き起こす。人によっての捉え方はいろいろあるにせよ、音源を聴いてみればその意図を汲み取れるとともに、いい方向に作用しているんじゃないかとも思えてくる。新体制初となるこのEP『PARADISES RETURN』も然りである。

当初はWACKでは珍しい正攻法なアイドルポップス路線でいくと思っていたPRADISES。しかし本作ではなかなかのロック色が高く、“こうきたか！”と唸ってしまった。ブリットポップブーム以降のガレージロックリバイバルの英国テイストを感じるギターサウンド。ラフ・トレードあたりを思い出してみたり、涼やかな女性ボーカルはあの頃の北欧ロックっぽさを感じてみたりもする。アクセント強めの発声や、はたまた“滑舌を濁す”、といったWACKグループに多く見られる個性的なボーカルスタイルではなく、肩肘張らない素直な歌声がメロディとサウンドのよさをより引き立てている。

エリザベス宮地＆外林健太の共作MV「PARADISES RETURN」

刹那メロが響く表題曲「PARADISES RETURN」、WACK特有の“エモさ”で振り切らないボーカルによって、独特の哀愁感を漂わせている。個人的にはWAggをちゃんと追っていたわけではないので、成長具合いがどうのと言えるわけではないのだが、ウタウウタには驚いた。アーシーな響きを聴かせるこんないいボーカルだったのかと感じさせられた1曲。作詞の才をも見せている彼女の活躍は今後目が離せなくなりそうだ。

本作の印象を大きく差配しているのが先述の通り英国の香りのするギターサウンドである。WACKのギターサウンドがここ1〜2年で大きく変わっていることは、当コラムで幾度となく触れてきたが、このアルバムはそれが顕著だ。「アレキシサイミア」のカッティングギターリフは、この楽曲が持つ無国籍感ある雰囲気を司っている。いい意味で角のないボーカルに対し、リズム面でのアクセントを担いながらも、肝となるエッジの鋭さを作るのは、サウンドメイクではなく、右手の絶妙なスナップを効かせたピッキング。ちょっと食い気味で入りながらも抜く時に若干後ろになるタイム感がたまらない。「消えないもの」の縦横無尽に動くベース、オリエンタルな鍵盤、各楽器の間を縫うように入っているカッティングも見事。このギタープレイが生み出すグルーヴこそが両楽曲の得も言われぬ中毒性を産んでいる大きな要因だ。

「Youth Song」「visions」といった、比較的ストレートなロックチューンでも、1〜3弦のプレーン弦の響きを大事にしたサウンドメイクとプレイ。通常であれば低音弦のパワーコードで押していくところをコードの分離感のあるギターと、そこに呼応したり離れたりするベースラインも面白い。こうした施策は、思いきり張ったようなボーカルではないからこそ、映えるところでもある。「cry wanna」の、往年のドリームポップを、現代のEDMトレンドで昇華していくような肌触りも面白い。

方やGO TO THE BEDSは、GANG PARADEの、いやWACKの音楽的ヒール部分を背負っているかのようでもある。それだけ百戦錬磨の強豪揃いのメンバーであることは言うまでもないだろう。個人的にはGANG PARADEの「イミナイウタ」路線が好きなので、GO TO THE BEDSの路線は大好きである。ココ・パーティン・ココの迷いのない真っ直ぐな歌声とユメノユアのシャウトはもっと評価されるべき。

GO TO THE BEDS「マジ神」Music Video

旧BiSからの“イズム”はGO TO THE BEDSや、現在のBiSが濃厚に継承しながら発展していく中で、PARADISESのようなWACKに新たな潮流ができていることは興味深い。

いろんな意味でWACKの新機軸となりそうなPARADISES。ますます面白くなりそうである。