松隈ケンタ[インタビュー]未来のクリエイターへ魂をこめて投げ込むド直球大提言「スポーツや普通の会社と一緒で、コツコツ積み重ねて技術を上げて勝たないといけない」

松隈ケンタ[インタビュー]未来のクリエイターへ魂をこめて投げ込むド直球大提言「スポーツや普通の会社と一緒で、コツコツ積み重ねて技術を上げて勝たないといけない」

松隈ケンタ[インタビュー]未来のクリエイターへ魂をこめて投げ込むド直球大提言「スポーツや普通の会社と一緒で、コツコツ積み重ねて技術を上げて勝たないといけない」『松隈ケンタ流 ロックDTM入門 ~パソコンとギターで始める 「ワンコーラス作曲法」』出版インタビュー

松隈ケンタが、3月11日(木)に『松隈ケンタ流 ロックDTM入門 ~パソコンとギターで始める 「ワンコーラス作曲法」』(リットーミュージック)を発売する。機材選びから作曲作業、簡易ミキシングまでDTM&楽曲制作のノウハウを全網羅してレクチャーする同書は、松隈自身が“批判されるんじゃないかと思ってヒヤヒヤですよ(笑)”と語るように、一般的な教則本とはひと味もふた味も違う、松隈独自のスパイスがたっぷりと効いた内容に仕上がっている。今回、そんなDTM入門書の“奇書”でもあり、ロック系クリエイター必読の“名著”といえる同書を上梓した松隈にインタビューを実施。同書にかけた想いをはじめ、制作裏話、さらに自身の作曲技法などについて語ってもらった。

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経験がある人は強いし、いい曲が作れる

——近年のJ-POPによく見られる傾向としてDメロ(Cメロ)がありますよね。本書ではそれを“謎のパート”と言って、“理解不能”とバッサリ斬ってしまうところも松隈さんらしくて気持ちよかったです。

松隈:
あれはちょっと言い方が悪かったです(笑)。あそこを作ることに悩んじゃう人がいるんですよね。でも、僕は一切悩まない。Dメロが浮かばなくて1日悩むという発想を持たなくてもいい、という考えです。視聴して“このDメロがカッコいいから買おう!”と思う人はあまりいないと思うので(笑)。

——今はDメロがあるのが当たり前にもなっていますし、だから重要だと思ってしまう。みんな入れたがりますよね。

松隈:
ギターソロや間奏もそうですけど、なきゃないでいいじゃないですか。逆に言うと、3番サビがカッコよく聴こえるためのDメロであるべきだと思います。3番サビが終盤における1番の見せ場だと思うので、その前にも見せ場があるとぶつかると思うんですよ。だから、ボソボソっと適当に作ったメロディの方がむしろいい。現場でメンバーに適当に歌ってもらって、それでいいよってぐらいの感覚。僕の持論としては、Dメロは変な方がいいんです。だからあまり考えすぎなくていいんだよ、と思いますね。

——プロとアマチュアの差って、そういう重きを置くところの違いだと思います。本書では“ワンコーラス作曲法”という大きな軸がありますが、とにかくワンコーラス作って作品として完成させることが大事と。それがプロの考え方。でもアマチュアは、最初からアレンジやらサウンドメイクに時間をかけてしまって、なかなか作品として完成させることができない。

松隈:
レコード会社の人やバンドメンバー、友達でもいいんですけど、とりあえず人に聴かせる状態にすること。それで“いい曲だね”と言ってもらうことが第一歩。それがないと作曲家としてデビューできないし、バンドで自分の曲を使ってもらえない。料理でいえば、最初はとりあえず紙皿でいいんじゃないかなって。ただ、盛り付けはカッコよくして。聴かせる人に合わせると言いますか、誰もいきなりDメロは聴かないからあとで考えればよくない?とかね。そういう優先順位や必要最低限のポイントをアマチュアの人はズレて見てしまいがちですよね。僕もズレてたし。そこを整理しましょうと、常に若い人に言ってますね。

——こだわりだすとキリがなくなってしまうし。

松隈:
そうなんですよ。そのこだわりを一旦、ほかのパワーに変えることが大事。1年間改良を重ねたチャーハンと、365種類の料理を作ってみて、その結果1番自信が持てたチャーハンだったら、僕は後者の365回の経験が乗っているチャーハンの方を食べたい。曲も1年間こねくり回している曲よりも、365曲中のトップ1の方がいい曲だと思います。そういう意味で、自分で納得いってなくとも、放っておくんじゃなくて、ワンコーラスでいいからちゃんとパラデータで書き出して、曲の番号をつけて、変なタイトルでいいから名前をつけて保存しておきましょう、と。これは僕も師匠たちに言われましたし、後輩たちにも言っていることです。そうしたデータが僕は今900番台までありますし、井口(イチロウ/SCRAMBELS)くんなんて1000番台で、僕をはるかに超えてます。それだけでもいい曲作ってるんだぞ、という証拠になるじゃないですか。自分の自信にもなるし。それって大事なことなんです。

——アマチュアは形にする前に、自分でボツにしちゃいがちですよね。

松隈:
ボツかどうかは聴いた人が決めるので、自分でボツるのはもったいない。どうぜ、ボツにされることも多いんだから。そんな簡単には受からないですよ。どの会社でも、どの社会でもそうだと思うんです。社内プレゼン、企画書……、野球選手だって何万回素振りしたって、空振りはする。音楽の人って、どこか簡単に考えられているところもありますよね。流行や運がよくて売れる、みたいに思われがちですけど、スポーツや普通の会社と一緒で、コツコツ積み重ねで技術を上げていって勝たないといけない。何より、経験ですよね。経験がある人は強いし、いい曲が作れるんですよ。

——積み重ねという意味では、“有名アーティストを真似ることも大事”と書かれています。音楽の指南書でこういうことを堂々と言うのは目新しくて新鮮でした。

松隈:
批判されるんじゃないかと思ってヒヤヒヤですよ(笑)。でも、これはウチの生徒にも全員に最初に口すっぱく言うんです、“真似をしろ”と。真似を通り越して“盗作しろ”くらいのことを言ってます。“真似くらいじゃダメだ、それでお前は真似てるつもりか!?”って。そこまでしないと、芸術作品は作れないんじゃないかって思いますよね。

——真似ることでわかることは多いですからね。

松隈:
ハンバーグを作りたいなら美味いハンバーグ屋さんを徹底的に真似して、同じものを作れるようにならないと最初はダメじゃないですか。いいスポーツ選手は自分よりいいスポーツ選手のフォームを見ながら研究する。どうやったら同じ動きができるのか。それをミュージシャンもやるべきだというのが僕の感覚ですね。

——コピーバンドもそうですもんね。それで演奏技術が上達していきますし。

松隈:
だから僕、“ボーカル嫌い”って言うんですよ(笑)。僕はギタリストだから、“ド→レ”と弾くだけでも、ハンマリングで弾いたり、スライドもチョーキングもあるじゃないですか。チョーキングもリズムをバキッとキメる場合もあればルーズにいく場合もある。ギタリストはいろんな奏法や力加減、ピックか指か、アップかダウンか……など、どう弾くのか考えているわけです。これ、ギターを弾く人はみんなわかる話だと思うんですね。“あ、これチョーキングだ”、“ここはスライドでいってるな”とか、憧れのギタリストがどう弾いてるのかを聴き分けているわけです。でも、ボーカリストは“私は天才だ”とか言って、勝手にビブラートかけたり、しゃくり上げたりするじゃないですか。それが嫌なんですよ(笑)。

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