predia、PassCode、アメフラっシ、NEO JAPONISM 日米英韓ハイブリッドなグッドミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第49回
predia、PassCode、アメフラっシ、NEO JAPONISM 日米英韓ハイブリッドなグッドミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第49回「偶像音楽 斯斯然然」第49回
異なるベクトルを持つ、海外と日本の音楽トレンド。今回は、この差異を軸に、アメフラっシ、predia、PassCode、NEO JAPONISMがここ最近発表した楽曲&アルバムを分析。LiSAやBLACKPINKなども織り交ぜながら、冬将軍が縦横無尽の切り口で、4組のサウンドのユニークさを紐解く。
PassCode 武器が強力にアップデートされた『STRIVE』
ハードでラウドなサウンドはもちろん、予測不可能な楽曲展開を持ち味とした、メジャー1stアルバム『ZENITH』、よりキャッチーさとポップなメロディを重視した2ndアルバム『CLARITY』と来て、お次はどうなるのかと思えば、“来てほしいところにちゃんと来てくれる予測不可能な楽曲展開をベースとし、キャッチーでポップなメロディアスさが洗練された”という、2枚をきちんと踏襲しながら強力にアップデートされた作風である。それはある意味“これが聴きたかったのだ!”とリスナーが喜んで膝を打つような内容であり、同時にグループの余裕を感じられる作風だ。
PassCode - SPARK IGNITION
8bitゲームミュージックが猛り狂う「SPARK IGNITION」で、“これ、これ”と思わせておいて、無国籍コーラスから一気に叩き落とすかのような「Majestic」。J-POP的メロディの強さを掲げていく「Shedding tears」「ATLAS」、綿密ながらスリリングな展開としなやかな伸びを見せるボーカルが美しい「STARRY SKY」など、聴きどころ満載なのだが、個人的にヤラれたのは「Yin-Yang」と「GOLDEN FIRE」。前者はスラップギターと起伏の激しいメロが斬新でありながらもPassCodeのカッコよさを1分半に凝縮。まるでダイジェストを聴いているような気分であり、後者は90’sオルタナ〜モダンヘヴィを現代のヘヴィミュージックにパワーアップさせたようなはじまりであるのに、気がつけばまったく違うラウドロックに着地しているというカオティックさ。“来てほしいところにちゃんと来てくれる”と先に述べたわけだが、ここから別のところに行くだろうなという予兆がありつつも、どこへ連れていかれるのかはわからないという危険性はPassCodeの大きな魅力なのである。
PassCode - STARRY SKY (Full Size)
PassCode『STRIVE』
NEO JAPONISM 和洋折衷無限大な『THE SPIRIT』
この流れで最後に触れておきたいのがNEO JAPONISMである。“極東ハードコア”なんて形容を用いたりもしたのだが、1月27日リリースのニューアルバム『THE SPIRIT』はさらなる無国籍ハイブリッドミュージックへと深化している。Low-Bのぶっといギターが炸裂するリフ、ブラストビート気味の暴走ドラムが獰猛なアンサンブルを作り上げる「Trigger」。怒髪天もTHE BACK HORNも顔負けのバンカラ応援歌風の和メロが咽び泣く。
NEO JAPONISM 「Trigger」Music Video
「Subliminal」のBring Me The Horizon流UKダブステップなハードコア具合いも特筆すべきところだが、ハメ英語を逆手に取った言葉遊びが印度旋律とともに炸裂する「LEGEND OF BATACHIKI 〜バタチキ伝説〜」といい、英語を通り越した聴き心地の「Mind-Mirror Nuxx」の奇天烈具合いも、硬派だけでないちょっとハズしたコミカルさをもバッチリとキメられるグループとしての強さよ。
NEO JAPONISM「LEGEND OF BATACHIKI 〜バタチキ伝説〜」Music Video
さらなる新曲2曲がすごい。「Identity」のリズムでメロディを重ねていくような畳み掛けにおののき、チップチューン+フューチャーベース+オルタナヘヴィミュージック=「WORLD PARADE」の新境地に戦慄する。蠢くようなリフの組み立て方、聳え立つ壁のごときギターサウンドは絶品で、その壁をブチ壊すかのような強力ボーカルがのしかかってくる。圧倒的な強靭さを誇る滝沢ひなのとしなやかな女王オーラ溢れる辰巳さやか、エッジィな女戦士・福田みゆの三つ巴ボーカルは青天井。さらにここに来て狂犬のような暴れっぷりを見せている瀬戸みるかとアンニュイさを強調していくような朝倉あいの覚醒も相俟って、何をやってもNEO JAPONISMになるという証を示している。
そんなボーカルだから、自由度も高まっていると思われる制作陣営。それでいて、統一感のある安心の音像。ダイナミックレンジを広く取った良質なサウンドプロダクトに感服。フットワークの軽さもここの運営の大きな武器であるが、12日にレコーディングして、27日にリリースとか、いろいろおかしいだろ……いいぞ、もっとやれ。
NEO JAPONISM『THE SPIRIT』
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