predia、PassCode、アメフラっシ、NEO JAPONISM 日米英韓ハイブリッドなグッドミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第49回
predia、PassCode、アメフラっシ、NEO JAPONISM 日米英韓ハイブリッドなグッドミュージック|「偶像音楽 斯斯然然」第49回「偶像音楽 斯斯然然」第49回
異なるベクトルを持つ、海外と日本の音楽トレンド。今回は、この差異を軸に、アメフラっシ、predia、PassCode、NEO JAPONISMがここ最近発表した楽曲&アルバムを分析。LiSAやBLACKPINKなども織り交ぜながら、冬将軍が縦横無尽の切り口で、4組のサウンドのユニークさを紐解く。
J-POPメインストリームの現在
今国内で屈指の人気を誇っている女性シンガーといえば、LiSAだろう。起伏の大きいメロディとエモーショナルなロックボーカルスタイルは、80年代のジャパメタHR/HMイニシャル女王から脈々と受け継がれてきた普遍的な歌謡ロック。
LiSA 『dawn』 -MUSiC ViDEO-
1月13日発売「dawn」は、オリエンタルなリフにエッジィなバンドサウンドのロックチューン。どこかデジタル混じりなサウンドプロダクトは、彼女が敬愛するBring Me The Horizonを意識してるところもあるはず。作曲はLiSA曲を数多く手がける2人、草野華余子とPENGUIN RESEARCHの堀江晶太コンビ。堀江は、アイドルファン視点からいえば、ベイビーレイズJAPANの「夜明けBrand New Days」の詞曲とアレンジを手掛けた、といえばその作風と、Jロックファンの琴線に触れる女性ロックシンガーアイコンが見えてくるはず。
夜明けBrand New Days/ベイビーレイズJAPAN(2018/09/24)Last Live Blu-ray: THE LAST SCENEより
そしてもう1曲、宇野実彩子 (AAA)、1月6日リリースの1stミニアルバム『Sweet Hug』からのリード表題曲は、清涼感が疾走していくガールズロック。
宇野実彩子 (AAA) / Sweet Hug
先述のLiSAが80年代ジャパメタの潮流とするなら、こちらは90年代ビートロックだろうか。氷室京介「JEALOUSYを眠らせて」から中島美嘉「GLAMOROUS SKY」まで一気に駆け抜けていくような爽快感が心地よい。ストレートなロックナンバーであるのにどこかパーティ的な趣を感じるのは、至るところに散りばめられているピアノ。このアレンジはロック畑の人の業ではないなと思ったら、久保田真悟(Jazzin'park)の曲だった。久保田といえば、昨今では鈴木愛理「Let The Show Begin」を手掛けていたり、アメリカンな雰囲気を持ったゴージャスなパーティチューンを得意としている。超ときめき♡宣伝部の12月23日リリースのニューアルバム『ときめきがすべて』収録の「ライオンガール」は、Jazzin'parkとして栗原暁とともに手掛けた楽曲である。
鈴木愛理‐『Let The Show Begin』(Music video)
"ライオンガール" Dance Practice Video
そんな栗原暁といえば、prediaだ。
predia 誇り高き10年の強さを示した『10ct』
prediaは、ここまで触れてきたポピュラーミュージックのトレンドと日本古来の歌謡テイストを見事なまでに体現している。加えて、普遍的なロックスタイルをも感じさせるところも忘れてはならない。
predia / NAKED (Official Music Video)
EDMテイストのサウンドとレゲエっぽい無国籍トラップを盛りこんだ構成に、J-POP歌謡を感じさせるサビが斬り込んでくる「NAKED」。前奏なしに突如入ってくるソリッドなリズムのAメロ、伸びやかなBメロと来たら、肩透かしのようにドロップでサビを躱していくのがトレンドであるのだが、あえてここで正攻法なJ-POPサビを持ってくるpredia節が炸裂する「東京マドンナ」……。
predia / 東京マドンナ (Official Music Video)
こうした煌びやかな楽曲を得意とする栗原暁と、PASSPO☆にBAND-MAID、WILL-O’など、アメリカンなロックに定評ある阿久津健太郎による「Crazy Cat」「Mid9t Luv」「Dia Love」の“10th Anniversary Ver.”……珠玉の楽曲群は、1月27日にリリースされた『10ct』にて堪能できる。
アルバムの幕開け、10年の豪奢な貫禄とボーカルグループとしての圧倒的な強さをこれでもかと振りかざしてくる「Welcome back to your place」、ジャジィな空気に大人の色香を重ねていく「Jewelry Novella」、シンセベースのサウンドを含めた自由度とダブステップテイストに乗せたクールなボーカルがたまらない「Sleeping Monster」、そこから次曲「Mid9t Luv」の流れは曲間含めて最高で何度でも聴きたくなる。そんな聴きどころ満載の『10ct』であるが、やはりリード曲「BAD HABIT」の無敵感たるや。MVが公開された際にも触れたわけだが、何度でも取り上げたいカッコよさである。
predia / BAD HABIT (Official Music Video)
エレクトロポップにオルタナティブロックテイストが入った90年代の香りのするアメリカンなチューン。ボーカル力があるからこその、余裕綽々にハズせる遊び心。単調なリズムの中に言葉のイントネーションとアクセントで変化球をつけていくせめぎ合い。後半に挟み込まれるCメロは、高潔な “prediaっぽさ”を高らかに掲げるところ。それにしても以前、“リアーナとヌーノ・ベッテンコート、クリスティーナ・アギレラとデイヴ・ナヴァロ”などと表現したギターが最高である。ロックとは遠い“ポップミュージック界のディーヴァにギターヒーローが参加しました”感のたまらなさ。ヒューンと拍子抜けするような爆撃機アーミングといい、チープな歪みのサウンドメイクが輪をかけていい感じにバックトラックと分離しており、サウンドプロダクト含めてセンスしか感じない楽曲である。作詞作曲はもちろん栗原暁である。
以前「スゴいボーカリスト10人」という企画を開催した際に、湊あかねを“殿堂入り”とした。彼女のディーヴァオーラを放つボーカルスタイルは、聴けば聴くほどにソウルな黒っぽさはあまり感じられず、前のめり〜ジャストで入ってくるタイム感であったり、何気にロックボーカリストタイプだと思うのである。などと書いていた矢先、LiSAのカヴァーがアップされて思わずニヤリ。
切り取ってみた🙈✨#鬼滅の刃 #LiSA #炎 #ほむら #歌ってみた#DemonSlayer #kimetu #鬼滅之刃 #鬼滅#無限列車#귀멸의칼날 #무한열차 #tiktok
— predia 湊あかね🐣 (@akanesakae) January 28, 2021
https://t.co/tVmOwwoihr pic.twitter.com/b4tQmGgYCZ
湊あかね 公式Twitterより
predia『10ct』
お次は、ロック寄り。LiSAと同様にBring Me The Horizonを愛してやまないPassCodeの約1年ぶりとなるメジャー3rdアルバム『STRIVE』が圧巻だった。
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