TEAM SHACHIのラウドポップ、EMPiREのSUPER COOL 海外ポップスのトレンドを押さえたJアイドルの深化|「偶像音楽 斯斯然然」第48回

TEAM SHACHIのラウドポップ、EMPiREのSUPER COOL 海外ポップスのトレンドを押さえたJアイドルの深化|「偶像音楽 斯斯然然」第48回

TEAM SHACHIのラウドポップ、EMPiREのSUPER COOL 海外ポップスのトレンドを押さえたJアイドルの深化|「偶像音楽 斯斯然然」第48回「偶像音楽 斯斯然然」第48回

昨今、海外トレンドを押さえながら、さらに深化させたサウンドを聴かせているTEAM SHACHIとEMPiRE。独自の様式を持つ日本のポップミュージックシーンの中で、ある種、異質とも言えるこの2組のサウンドデザインを、冬将軍が独自の視点で分析する。

EMPiREの“SUPER COOL”

そして、もう1つ、現在のトレンドをしっかりと押さえながらもオリジナルに昇華しているグループがEMPiREだ。以前、高らかに声をあげる“This is EMPiRE SOUNDS”、それこそが彼女たち流のガールクラッシュ、EMPiREの謳う新機軸“SUPER COOL”なのだろう、と述べた。

先日、1月4日の東京国際フォーラムでのライブでサプライズ披露された「ERROR」は、EMPiREがそうやって切り拓いてきた新たな境地をさらに推し進めた楽曲。ダークなエレクトロサウンドと、凛とした強さを放っていくように、低めのキーから登っていくメロディラインが印象的だ。

EMPiRE / ERROR [EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE] at Tokyo International Forum HallA

EMPiREの面白みは、ロック系アイドルのパイオニアというべき、WACK&SCRAMBLESが、お洒落感のあるエレクトロミュージックをやっているというところにある。松隈ケンタ節ともいうべき、キャッチーで時折オリエンタルな香りのする旋律を、歪んだエレクトリックギターではなく、煌びやかなエレクトロニックなサウンドが迎え撃つ。80年代ニューウェーヴから、90年代のエイベックス的J-POP、そして近年のダンスミュージックに至るまで網羅している。もし、完全にダンスミュージック畑のクリエイターが手掛けたら、こうはならなかったのだろうな、ということがEMPiREの魅力にもなっているのだ。「WE ARE THE WORLD」や「FOR EXAMPLE ??」といったサビを持たないEDM手法も、“ロック畑の人から見たEDM”という、ある種のアイコン的なわかりやすさがある。それが現代的なJ-POPスタイルのアピールとしても、功を奏していると思う。

EMPiRE / WE ARE THE WORLD [EMPiRE’S GREAT REVENGE LiVE] @Zepp DiverCity

「ERROR」を手掛けたoniは、女性ならでは蠢く黒い感性を音に表したようなダークなニューウェーヴサウンドを得意とするクリエイター。

微睡むようなサウンドは、「ERASER HEAD」や「maybe blue」に見られるように、MAYU EMPiREの内向的な歌詞との抜群の相性を見せてきたが、今回の「ERROR」はMAHO EMPiREによる作詞。メロディに対する詞の置き方、独特の香りを放つ柔らかな言葉選びを作家性とする彼女だが、同曲はWACKの伝家の宝刀というべき決め台詞“行かなくちゃ”を使用し、強い決意を全面に感じられる作風になっている。

重厚感溢れるダークエレクトロにのしかかっていく、勇ましいボーカル、鬼気迫るラップ……といった歌声が織りなす臨場感は、かっちりとまとまったスタジオ音源よりも、YouTubeにアップされている国際フォーラムのライブ映像からの方が感じられることだろう。本編37曲をノンストップで披露した直後のアンコール1発目とは到底思えない完成度。いや、であるからこそ、この張り詰めた緊迫感が作り出せているのかもしれない。いい意味でのドライな感触のする完成度の高いスタジオ音源と聴き比べてみると、よりこの楽曲の深みに気づくことができるはずだ。

EMPiRE「ERROR」

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