わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回
わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回
今回は、今年最後のコラムということで、冬将軍が2020年の“マイベストアイドルアルバム”5枚をピックアップ。冒頭、いきなりの脱線もあるが、今、ロック好きの心の琴線に触れるサウンドを聴かせているグループをたっぷり紹介する。
NightOwl『Dear, Night』 エレクトロとバンドが交錯する躍動感
折原伊桜のフロントマンとしての器量、雨夜憧と百城凛音のエッジィな存在感、四肢をブンブン振り回す3人が織りなす無敵のトライアングルにすっかりヤラれてしまったNightOwl。エレクトロニックサウンドとバンドサウンドが交錯していく様が心地よい本作。
NightOwl - Feel Alive
煌めくエレクトロと小洒落たポップネスを放ってくる「Shining Ray」、オリエンタルな雰囲気かぐわす「All Night Long」、アバンギャルドで華僑な雰囲気を醸すエレクトロファンク「Be the one」など、聴いているだけでライブにおける躍動感が目に浮かぶダンスチューンの数々。そこに対し、ダンサブルなのに無機質、エレクトリックでありながら人力的なヘヴィグルーヴを感じるクールなキラーチューン「Feel Alive」、刹那Emo「Daybreak」、ストレートなロックチューン表題曲「Dear, Night」……と、バンドに寄せた楽曲も聴きどころである。
斬新というわけではないのに目新しくてカラフルなポップスが詰まっている全9曲。どの曲も細やかで繊細、丁寧なサウンドプロダクトが印象的で、ストレートな歌声もグッとくる。
来年早々に5人体制としてスタートするという。この3人だけでもキャラクター含めてかなり濃いグループだと思うのだが、いったいどうなってしまうんだろう……?(期待)
NightOwl『Dear, Night』
アメフラっシ『METAMORPHOSE』 意味がわからないほどの完成度
見事なまでにEDMのお手本中のお手本のような楽曲「メタモルフォーズ」は以前詳しく触れたが、それだけに収まることのない魅力が詰まっている。
アメフラっシ 'メタモルフォーズ' Music Video
インダストリアルからエレポップに浄化していく様、オリエンタルな雰囲気とクワイアが重なっていくサビが芸術的すぎる「Rain Makers!!」に驚愕し、デジタルハードコア「ハイ・カラー・ラッシュ」、メロディアスなロックチューン「グロウアップ・マイ・ハート」の男前っぷりに思わず拳を挙げる。和を感じる「轟音」、無機質で変則的なエレクトロナンバー「ミクロコスモス・マクロコスモス」のメビウスな美しさに息を呑む。
後半は美麗なピアノに誘われる「雑踏の中で」、アコースティックな優しい響きのする「Over the rainbow」、U2あたりを思い出すようなアイルランド的な広がりのあるサウンドプロダクトがたまらない「STATEMENT」……、真っ直ぐな歌声を堪能できる楽曲がずらり。ちょっと意味がわからないほどの楽曲完成度。それにしてもこんなにも濃厚な楽曲ばかりなのに、聴き疲れしないのは、やはりメンバー本人たちのピュアさを感じ取れる歌声があるからこそのものだろう。
アメフラっシ『METAMORPHOSE』
わーすた『What’s “standard”!?』 猫耳をつけた王者の風格
前回紹介したばかりだが、何度でも紹介したくなる名盤。衣装が本コラムのタイトルロゴとお揃いで思わず声が出た、とかそういうことではなく。
田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)によるリード曲「清濁あわせていただくにゃー」は、ユニゾン好きも思わずニヤリとする田淵の作風がよく表れているロックテイストの楽曲。ストレートにやればそのままユニゾン楽曲なのだが、岸田勇気によるミュージカルテイストのアレンジが緻密で巧妙。キラキラ感を併せ持った“わーすたの曲”に仕上がりつつも、これまでなかったゴージャス感のある聴き心地になっている。ベースラインがたまらない。
わーすた「清濁あわせていただくにゃー」
みきとPの「萌ってかエモ」はちょっと古めかしく“とっぽい”ロックナンバー。王道的な歌謡ロックでありながらも、所々ヒネた感じの仕上がりになっているのはさすがの手腕。廣川奈々聖の艶っぽくキメてくる滑らかさと、巻き舌気味で人を喰ったような歌い方をする三品瑠香のコントラストが最高である。“かかってこいよ パラッパー”なんて、三品の発音含めたボーカルスタイルをわかっていての当て書き詞だろう、ありがとうございます。さらにさらに、後半ブレイクサビの三品パート、“お前らと メラメラの”の“ら(Lua)”に思わずニヤニヤし、“萌っていうかエモって感じで”の“エモって感じで”というこぶしを効かせた三品節は、“これこれこれっ!!”と絶叫しながらも3万回リピートした。加えて、“ギグっていうかミサともいうけど”というおっさんホイホイの歌詞にニヤニヤ。まさに“これが聴きたかったんだ”連発の、個人的な大ヒットソング。
LiSA「紅蓮華」でお馴染みの草野華余子による「TOXICATS」は大人の妖しさをかぐわす艶かしいピアノロックのナンバー。三品も廣川も、この2曲のようなちょっと歌謡風味のあるクセのあるメロディを歌わせたら、右に出るアイドルはいない。
「Never Ending The World」は、メンバーそれぞれの言葉を1つひとつ紡いだ、優しい中に強い意思を感じる曲である。結成当初から関わってきた、鈴木まなかだからこそまとめられた曲といっていいだろう。「ハロー to the world」を聴いてThe Smashing Pumpkinsを思い出したヤツは大体友だちメロンコリー。捲し立てるスネアのロールと優美なピアノの旋律、遠くに聴こえる鐘の音と緩やかなメロディが冬の到来を知らせる美しくも強いオルタナティヴロックなナンバーで締め括られる。
わーすたの多彩さは、何より当人たちのスキルの高さによるもの、ぶっ飛んだことをやってもイロモノにならず、いろんな方面に手を出しても支離滅裂にならない実力と実績は、まさに猫耳をつけた王者の風格。新譜の度に毎回“この手がまだあったか!”と新しい気づきがあるのだが、今回もまたそう思わせてくれた、全5曲ながら非常に濃厚で最高な5曲である。
わーすた『What’s “standard”!?』
次回、新年1発目の当コラムは昨年、“細かすぎてなかなか伝わらない”、“マニアックすぎてついて行けない”と大好評(?)だったあの対談企画をアップする予定なので、ギター好き、ロックファンのアイドルヲタクのみなさんはお楽しみに。
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