
わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回
わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回
今回は、今年最後のコラムということで、冬将軍が2020年の“マイベストアイドルアルバム”5枚をピックアップ。冒頭、いきなりの脱線もあるが、今、ロック好きの心の琴線に触れるサウンドを聴かせているグループをたっぷり紹介する。
NEO JAPONISM『NON CALL-NOW』 泣く子も黙る極東ハードコア

この流れで、このアルバムを紹介しないわけにはいくまい。
極悪リフで始まる「again」、緊張感が折り重なっていくような平歌から一気に解放され、サラサラと流れていく「rewind the story」、果てしなく広がる大平原で戦闘が始まるかのようにCazqui(Cazqui’s Brutal Orchestra/猫曼珠/ex.NOCTURNAL BLOODLUST)の8弦ギターが大暴れする「the Force」、ダブステップ味のあるヘヴィでダンサブルなチューン「Call my name」から壮大なフィナーレを飾る「sky」まで、すさまじく強度の高い楽曲がズラリ。インダストリアルなニューメタルからジェント、エレクトロニックまで。ヘヴィミュージックの旨味を凝縮し、90年代モダンヘヴィから現代的ラウドロックまで迎合を図る攻撃的なバンドサウンド。和情緒の哀愁を嗅ぐわす慟哭性の高い歌メロディはキャッチーで耳馴染みよい。まさにネオジャポの名刺代わりとなる作品だ。
NEO JAPONISM『NON CALL-NOW』
PIGGS『HALLO PIGGS』 スゴいぞプー・ルイ、スゴいぞPIGGS

言わずとしれたプー・ルイの新グループ。BiSからのBILLIE IDLE®の系譜をしっかり感じさせつつも、そのどちらにも似ていないオリジナリティの確立が見事。
PIGGS - PIGGS-モナ・リザ-
斜に構えたパンクナンバー「KICKS」、エモーショナルにメロを描いていく「PIGGS-モナ・リザ-」を聴けば、プー・ルイが帰ってきたんだなと実感。と思わせておいてヴィヴィットなサウンドを放つ「ヴェルヴェット思想家」、イントロのあの英国スターダストなリフ捩りでこのタイトルかよ!とニヤリとしながら、ダークなのにキャッチーな「PIPEFICTION」、ファズギターとともにダーティなボーカルが吠える「エクスターミネーター」という応酬に、いちいち“こういう路線があったか!”と感心させられる。「Love Cats」「スナッチャー」といったコケティッシュなまどろみも良い。最後の最後は「飛べない蛇」の重々しいレゲエで締め括る、一分の隙も与えない全12曲。プー・ルイに対して、ほかのメンバーも一歩も引かないし全然負けてない。よくもこんな強力なメンバーが集まったものだ。
ロンドンパンク〜ニューウェーヴな香りをプンプンさせつつ、ニューヨークノーウェーヴの匂いもするというズルさ。アイドルって、その辺のロックバンドより全然ロックなんだよなんて、今さら言うことではないのだけれど、改めてそう言いたくなるほどの会心の1枚。サウンドプロデューサーのBRIAN SHINSEKAI(ブライアン新世界)改め、Ryan.Bの楽曲とサウンドも素晴らしいが、なんといってもプー・ルイの統率力、プロデュース力……いろんな才覚を思い知らされた。結成後にいきなりメンバー共同生活や、総距離1048kmを徒歩移動するツアー<WALK or PORK TOUR>だなんて、いかにもBiS的な発想だなと思ってはみたものの、試練的なものや苦悩、葛藤みたいなものが一切感じられず、メンバー含めてみんなが楽しめるエンタテインメントに昇華できている裁量に脱帽。スゴいぞプー・ルイ、スゴいぞPIGGS。
PIGGS『HALLO PIGGS』
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