わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回

わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回

わーすた、アメフラっシ、PIGGS…「ベストアイドルアルバム2020」 ネオジャポとクロノスのワンマン、ときどきpredia|「偶像音楽 斯斯然然」第46回

今回は、今年最後のコラムということで、冬将軍が2020年の“マイベストアイドルアルバム”5枚をピックアップ。冒頭、いきなりの脱線もあるが、今、ロック好きの心の琴線に触れるサウンドを聴かせているグループをたっぷり紹介する。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

本稿執筆中にアップされた、predia「BAD HABBIT」MV。タイトルからして絶対カッコいいに決まってるだろ、と観てみたところ、想像以上のカッコよさだったので、予定になかったけど急遽取り上げたい。2020年最後のこの連載、情報過多になろうが、話が飛んで長くなろうが、書きたいことを書き収めします。

predia「BAD HABIT」Music Video

結成10周年イヤーを飾る来年2021年1月27日リリースのアルバム『10ct』からのリードトラックがこの「BAD HABIT」。ここ最近のprediaは世界的なポップミュージックのトレンドをJ-POPとして見事なまでに解釈し、predia流に仕上げてきた印象が強いのだけれど、今回は別の攻め方。エレクトロポップにオルタナティブロックテイストが入った90年代の香りのするアメリカンなチューン。ボーカル力の高いグループだからこそできるハズした遊び心もバッチリとキマり、余裕綽々に上からじっとりと攻めてくる。いつもの誇り高く、気高く、という方向性ではなく高飛車に誘ってくる様が最高。そんなセレブっぷりを振りかざしてくるMVのゴージャスな作りも抜群にカッコいい。

これまでなかったリズムとアクセントでぐいぐい迫りながら、キメの節回しや、後半に挟み込まれるCメロ部分は、“prediaっぽさ”を感じるところ。終始鳴っているギターもいいアクセントとなり、唸りをあげながらのアーミングもイカしている。チープな歪みのサウンドメイクが輪をかけていい感じにバックトラックと分離していてたまらない。ロックとは遠いポップミュージック界のディーヴァにギターヒーローが参加しました感があって最高だ。リアーナのライブに参加したヌーノ・ベッテンコートとか、クリスティーナ・アギレラとデイヴ・ナヴァロとかね。

円熟味を増したprediaのアルバム、これは楽しみで仕方がない。

さて、閑話休題。ここからが通常予定の記事。

クロスノエシス 優美さを魅せつけたワンマン<Construction>

5月、8月と延期に延期を重ね、12月4日にようやく開催に至った、クロスノエシスの2ndワンマンライブ<Construction>。今年2月にRISAとMAIが加入した直後の情勢変化、前途多難なこのご時世であったけど、結果的にみればまさに“時は満ちた”というべき完成度。

妖しく魅せる「VENOM」、終末観や復活思想やらさまざまなものが混沌としながら放たれていく「cross」も、シアトリカルな見せ方が印象的な「薄明」にしても、アイドルライブにおける“沸き”や“コール”などのオーディエンスとの一体感とは異なる、ステージの完成度で“魅せつけていく”演舞要素を色濃く表すライブ展開は、このソーシャルディスタンス下において、より研ぎ澄まされたものとなったように思う。AMEBAの鋭い眼光と蠱惑的なシルエット、RISAのクールな目線とよく通る歌声が観る者聴く者の心を捉え、LAKEのあでやかでしなやかな動きとMAIの手の指先から足の爪先まで美しい華麗なダンスがステージを優美なものにしていく。そして、FLAMEがアイドルグループとしての色を整えているが、同時に彼女の儚さを漂わせる表情は、クロスノエシスをよりミステリアスな方向へと誘っているようにも見える。

張り詰めた緊張感、無機質で冷たい空気感、グループの特性で会場内を惹き込んでいく様はワンマンだからこそのものであり。アンコールで白を纏い歌われた「seed」でこの上ない優しさに溢れた情景を作り上げていた。

クロスノエシス / VISION

12月8日にリリースされた初の全国流通作品となる「CONSTRUCTION」。新曲である「VISION」はグループの中でも珍しいアッパーチューンだ。スパッと抜けの良いスネアのリズムに、スペイシーなサウンドコラージュとニューウェーヴな香りもする不思議な肌触り。かといって古めかしいものではなく、聴いたことがないような新しさもある。どこか漂うサイバー感と音符の上下がはっきりとした流麗なメロディはクロスノエシスを感じられるところだ。懐かしくも新しく安心感もある、という得も言われぬ感覚は、ほかでは絶対に真似できぬクロスノエシスらしさだ。“ダークポップダンスアイドルユニット”は実に言い得て妙。

クロスノエシス「CONSTRUCTION」
ポスト
クロスノエシス「CONSTRUCTION」

以前、彼女たちを“『銀河鉄道999』の見知らぬ星で星野鉄郎が誘惑されてしまう松本零士の描く作画女性感“というわけのわからぬ例えをしたのだが、この5人だったら惑星の1つや2つ、容易く滅ぼせるのではないだろうか……という謎のSF映画を思わせるジャケット。ただ立っているだけなのに意味がわからないくらい発しているオーラがすさまじい……。

クロスノエシス「CONSTRUCTION」

そんなワンマン直後、興味深い対バンがあった。クロスノエシスとNEO JAPONISMの2マン。“美と剛”というべき、まったく別のベクトルを向いている組み合わせは、それぞれのその異なる魅力を改めて知ることができた。AMEBAと滝沢ひなののシルエットは似ているなと、なんとなくそんなことを思ったりもした。

NEO JAPONISM 圧倒的な強さを誇るメンバーと圧倒的に強い楽曲

そんなNEO JAPONISM、1周年を迎える前日の12月13日に行なった<HARANBANJOU>ツアーファイナル東京公演。“闘う”をコンセプトとする彼女たちのステージは、すでに5年くらい活動してきた貫禄がある。9月に行なったワンマンライブ<NOT BAND>では攻めに攻めまくったセットリストを怒涛のようにノンストップで畳み掛けてきたが、今回は緩急をつけながら余裕たっぷりの構成。ラウドなバンドサウンドを武器としながらも、冴え渡るキャッチーなメロディも大きな魅力である。ワンマンを観て感じたのは、メンバーも楽曲も、とにかく“強い”ということ。“いいグループだな”と同時に“いい曲ばっかりだな”と、そんな風に思った。

この日に初披露された新曲「Trigger」は、私がネオジャポの音楽を説明するのに勝手に命名している“極東ハードコア”の真骨頂。手癖足癖の悪い(褒め言葉)ブラストビートに合わせて、爬虫類的なゲロゲロに歪んだレンジの広いギターのリフが襲いかかり、戦前の軍歌調の和メロが猛り狂う、ネオジャポにしか歌えない曲だった。

NEO JAPONISM 「Subliminal」

Bring Me the Horizonのオリヴァー・サイクスが悔しがりそうな今年最大の強曲「Subliminal」、コロナ禍で闘ってきたからこそ生まれた力強く美しい「Spica」といった硬派路線だけでなく、絶妙なハズし方も秀逸で、インドスパイスと呪文のようなハメ英語ならぬハメ多国籍語が巧妙に絡み合う「LEGEND OF BATACHIKI 〜バタチキ伝説〜」も、ジュリアナダンスでイケイケにキャッチー性がすっぽ抜けていく変態メロが中毒性を誘う「Mind-Mirror Nuxx」にしても、ここ最近の楽曲は制作陣営が面白がって作っているであろうことがわかる。もちろんそれをきちんと、いや、想定外に歌いこなすメンバーがいるからこそのものであろう。先日の『偶像音楽 斯斯然然的 スゴいボーカリスト10人』にて、滝沢ひなのに加えて番外的に福田みゆを選出したが、あれを15人枠としたなら、この2人に加えて、辰巳さやかも入るほどに強豪揃いのメンバーなのだから。

NEO JAPONISM 「LEGEND OF BATACHIKI 〜バタチキ伝説〜」

思い返してみれば、今年3月に初めて新生ネオジャポのステージを観て衝撃を受けたわけだが、そのままパンデミックにより自粛期間に突入してしまった。どのアイドル、どのアーティストよりも先に決行した配信ライブを毎週重ねていくことによって驚異的なスキルアップを見せ、ロック系グループはオーディエンスとともにライブを作り上げてこそ、というイメージを覆した。勢いだけではない歌唱面での繊細さと、綿密に練られたダンス&フォーメーションはコロナと闘ってきた彼女たちだからこそ成し得たもの。そのすさまじい成長ぶりは現在進行形であり、見る度に細かい動きなどが改善されつつ、毎回成長を見せているのだからますます目が離せない。

4月の緊急事態宣言直後に急遽リリリースされた『NON CALL-NOW』は、新体制後SoundCloudにアップされていた新曲群を再構築したものだが、紛れもなく今年のマイベストアルバムの1枚である。今となっては、というよりもリリース数ヵ月後にはもうすでに各メンバーの歌唱スキルは録音時とは比べものにならないほど成長していたし、前体制の過去楽曲をリファインした7月リリースの2枚のアルバム『HERE NOW』『OVER TIME』の方が、ボーカル力も音も良い。しかしながら、新生ネオジャポの“闘う”というコンセプトがありありとわかる圧倒的な楽曲強度と、荒々しさの中にあるエネルギー、それらがもたらす衝撃度はこの『NON CALL-NOW』がダントツである。

さて、先述の通り本コラムは今回が2020年最後の連載となる。今年1年いろいろなグループや楽曲を紹介してきた。アイドルは楽曲単位で語られることも多いのだが、ロックで育ってきた自分としてはやっぱりアルバムで聴くことが好きだ。なので、あらためて今年2020年のマイベストなアイドルアルバムを5枚紹介していきたい。(順不同)

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