＝LOVE 野口、神宿 塩見、BiS ネオ……「偶像音楽 斯斯然然的 スゴいボーカリスト10人」「偶像音楽 斯斯然然」第43回

野口衣織（＝LOVE）　精確、丁寧、絶妙

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＝LOVEをちゃんとしっかり聴き始めたのは比較的最近のことで。なんとなく“実力派”とは聞いていたが、正直ここまで歌えるボーカリストだとは思ってもなかった=LOVEの野口衣織。

夜に駆ける / YOASOBI covered by 野口衣織

音程と符割りと発音、この関係性が精確。音の動きと言葉、そしてリズムの置き方に至るまで丁寧。そして綺麗な歌声。しかしながら、この手の優等生スタイルは“歌はウマいんだけど、聴いていて面白みに欠ける”になってしまうことも少なくない。だが、彼女の魅力は加えて、声量がほぼ一定なのに、きちんと強弱を以って付けている緩急の波が見事なのである。音楽用語の“フォルテ”は大きくではなく“強く”だということ、“ピアノ”は小さくではなく“弱く”だということ。それをちゃんと理解して実践できているボーカリストは、実際そう多くないのである。

YOASOBI - 夜に駆ける / THE HOME TAKE

というか、このカバーは本家を聴くと、野口によるその楽曲理解度のすごさがわかるはず。

コネクト / ClariS covered by 佐々木舞香×野口衣織

聴きやすくあり、飽きさせない。この絶妙さがなんとも素晴らしい。

七燐鈴（神薙ラビッツ）　和製ハイトーンを操る巫女

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先日イベントで観て衝撃的だったグループ、大阪発足の神社アイドル、神薙（かんなぎ）ラビッツ。アイドルらしからぬ歌声に引き寄せられ、“女性版・一世風靡セピアか!?”と思うほどの、これまでのアイドルとは明らかに一線を画した新感覚なステージに魅せられてしまった。

神薙ラビッツ　＜未公開楽曲「天・地・人」Ver1＞

神社アイドルということで、和を基調とした楽曲とビジュアルもさることながら、一際耳に入ってきたのがこの七燐鈴（なりす）の歌声だ。突き抜けるハイトーンと、昭和育ちにはグッとくる“ちりめんビブラート”が絶品。彼女の経歴は詳しくわからないのだが、民謡か演歌の経験があるのではないかというほどな見事な声の出し方は、アイドルシーンの中で異端中の異端。

上記「天・地・人」における、トランジションエリア（換声点＝地声と裏声が切り替わるポイント）どころの騒ぎではない地声のhi E（ミ）連発メロの最高音は「塗りかえろ」の“り”で、なんと、hi G（ソ）である。先述の通り、女性は地声でhi Eが出れば、大したものであるのにそれよりも全音半高い。ここまでの高音を出せるのはアイドルどころか、シンガーでもそうはいない。

【カバー歌詞付き（ハーフサイズ）】Altern-ate-（H-el-ical//）「グレイプニル」OP

ハイトーンに特化したボーカリストかと思いきや、ちょっとシャくるようなクセのある歌声とふくよかな中低音も魅力的だ。

神薙ラビッツ「緑葉舞う少女、炎の巫女」

その実力もグループの音楽性も方向性も抜け目なく、今後目が離せない存在である。

ネオ・トゥリーズ（BiS）　常軌を逸したハイトーンを発する宇宙人

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最後は4人それぞれのヤバイ狂犬っぷりを発揮しているBiSから、ネオ・トゥリーズ。

熱唱するわけでもないし、表現力が豊かと言うわけでもない。しゃくったり、ビブラートをかけたり個性的なボーカルスタイルでもなく、声に特徴があるわけでもない。一聴して、歌がウマいと思うタイプではないのだけれど、ライブを見ると圧倒されてしまう。小柄な身体から発せられる底知れぬパワーは、己すら破壊してしまうのではないかと思えるほどにすさまじい。

FUCKiNG OUT [STAND BY BiS] at LIQUIDROOM / BiS 新生アイドル研究会 [OFFiCiAL LiVE ViDEO]

ネオのスゴいところはそれだけではない。常軌を逸したハイトーンである。あまりにも真っ直ぐに声を出しているので気づきにくいのだが、第3期BiSは最高音がhi D#（レ#）やhi E（ミ）の曲がいくつか存在している（女性キーに関しては、NEO JAPONISM、神薙ラビッツの項で詳しく説明している）。それもそのはず、ネオ・トゥリーズの最高音は「LOVELY LOVELY」のラストのフェイクで聴ける音はなんと、hi G（ソ）だ。地声でここまでのハイトーンを出せるのはアイドルどころか、シンガーでもそうはいない。しかもロングトーンである。加えて、超高音であるにも関わらず、キンキンとした耳障りになっていないのもネオのすごさだ。しかしながら、当の本人があまりに飄々としていて、歌い上げのディーヴァ系でもないためにそこになかなか気づきづらいというのも、実にネオらしく、BiSらしいところである。

BiS-どうやらゾンビのおでまし- 無修正ver / BiS

アイドルソングやJ-POPの特色でもある、“転調”と“上ハモ”を使いたくないと公言する、サウンドプロデューサーの松隈ケンタが、ネオの歌声を聴いて、転調して上ハモを重ねる曲「BiS-どうやらゾンビのおでまし-」を作ったというのは、実にいい話である。下記動画の松隈の話によれば、ネオはさらに半音上のhi G#（ソ#）まで出るというのだから恐ろしい。

【ネオ・トゥリーズ編】松隈ケンタが語るBiSのメンバー！