第20回：2018年アイドル楽曲の傾向〜小出祐介&南波一海「小出は明日、昨日の南波と連載する」〜2018年アイドル楽曲の傾向を振り返るとともに、連載についての新提案を行う

小出：
最近、アイドルソングのベストを絞り込み始めているんですけど、2018年のアイドルソングで多かったアレンジの傾向が見えてきて。2017年は、この連載でも言ったけど、ラウドが多かった印象。2018年はけっこう違って、まだ全体の4分の1くらいしか聴けてないと思うんだけど、多いなと思ったのは、Bメロでスネアのアタマ打ちをする展開。メロは大きめで、そこにクラップとか入ってて、タン、タン、タン、タンってやつ。それがタカタカタカタカドゥルルルルってなって、サビに入っていく。

南波：
EDM以降の。

小出：
そうそう。これがかなり多かった。本来であれば、サビにドロップが来たりするわけですけども。

南波：
かつてのStereo Tokyoとか。

小出：
うん。でも、Bメロのそこだけ採用しているところがけっこうあるわけですよ。その展開が来ると“これね～”ってなる。

南波：
2018年にそれをやらなくてもいいのにと。

小出：
うん、まさに。いまの世界的なトレンドだからといって、トラップ的なことを盛り込むのは難しいかもしれないけど、EDMを採り入れるにしてももうちょっとやりかたがあるのかなぁと。それこそ東京女子流がトロピカルハウスをやりきったみたいに。

南波：
それも2016年の話だし。

小出：
EDM的な作法ってE-girlsが5年くらい前にやってましたけど、おそらくアイドルソングにおけるEDM作法って、E-girlsの採り入れかたを参考にしてるところも多いのかなと思うんですね。

南波：
そう考えると、やっぱり音楽面でびっくりすることは以前より減ってきてますよね。

小出：
アイドルの数が増え始めた、それこそ戦国時代の頃って、ここからなにをやっていくのかっていうのをみんなで探っていた感じはあったじゃないですか。アイドルソングになにを適用していったら面白いのかっていう。そこでヒャダさんが書いたももクロのアクロバティックな楽曲が生まれたり、極め付きとしてBABYMETALみたいなグループが出てきたり。いまは横並びに同じ作法の曲が多くて、そういうところにシーンの停滞の匂いを感じてしまう。

南波：
それだけEDM的な作法のフォーマットが強くてわかりやすいっていうことでもあるんだろうけど。

小出：
でも、そのフォーマットを利用して、もしくは反転させたりして、新しい解釈が生まれてもいいんじゃないかなとは思う。曲展開についてでいうと、サビとかその前後に“オッオー”って歌う展開もめっちゃ増えた。

南波：
そう言われればそうかも。

小出：
そういうのも、やっぱりE-girlsが先にやっていきましたよね。最近だと、K-POPアングルからこういう展開を採用してるのも多いと思います。別にアイドルソングで、最新のトレンドをまんまやってくれとも思っていないんですけどね。

南波：
アイドルソングならではのフェイクな面白さもあるし。でも、よく考えるんですけど、曲を作っている人たちって、当然いい曲を作りたいと思っていると思うんですよ。クソ曲でいいやと思って作っている人はいないはずで。

小出：
それはそうだろうね。

南波：
だから、もしかしたら発注する側の参照範囲の如何にかかってくるのかなと。運営さんの全員が全員、音楽に精通しているわけじゃないと思うし、こういう曲が欲しいですと伝えるときのサンプルが意外とストレートだったりするのかもなと。

小出：
E-girlsのこの曲で、とか？

南波：
そんな感じで、この曲っぽい盛り上がれる曲をひとつお願いします、みたいに発注するのが普通だと思うんですよ。それでトレンドとの時差が発生するんだと思う。