WILL-O’、raymay、ワールズエンド。にアンスリューム　鬼才RYO-Pと奇才katz　気鋭のサウンドクリエイター特集＜後編＞｜「偶像音楽 斯斯然然」第41回

アンスリューム『にゅーかおすっ!!!!』　鬼才＆奇才っぷりを堪能できる作品

アンスリュームはkatzがサウンドプロデュースを務め、RYO-Pも楽曲制作をしているグループ。今作は、アンスリュームの名刺がわりの作品であると同時に、これまで本稿で触れたきた両氏の一筋縄でいかない鬼才＆奇才っぷりを堪能できる作品である。

RYO-P作曲 ちぎら作詞「アンスデーム」

グループの大きな特色であるポップとキャッチーの狂騒というべきカオス、メロディの散らかし具合いというか歌詞の置き方を明らかに間違えている（褒め言葉）表題曲「にゅーかおす!!!!」で幕が上がる。唱えるだけで脳が溶ける呪文“君臨君臨くりりりーん♫”でおなじみの「アンスデーム」、チャーハンだからパラパラ、という安易すぎて誰もやらないことを堂々とやってのけるユーロビートのキラーチューン「恋せよ！ぱらぱら半ちゃーはん」という怒涛の3連発が急襲してくる。さらに息つく暇なくRYO-Pによる「でんわにでんわ」。令和でこんな古典的なフレーズを言っても許せてしまうのはアイドル広しといえど、アンスリュームだけだろう。わけのわからない鬼ドラムが炸裂し、スラップベースが絡みつく。この曲の基盤となってるのはブラストビートのハードコアなんだろうけど、図太いギターなどは入れずに、生ドラム感とリズムボックス感を混ぜながらわざとチープ感を出すアレンジによって、コミカルなメロとともにポップに仕上げている鬼才っぷりがすさまじい。

ぶっ飛んだ曲ばかりではなく、「メランコリー」「口下手ナイトメール」という80年代アニメのエンディングテーマを彷彿とさせる甘酸っぱいアイドルソングもあって抜かりない。個人的にはアンスリュームに魅せられたきっかけでもある「ミーイズムが止まらない」のちょっとレトロなメロディとそこに乗った古典的な言葉遊びが好きだ。目まぐるしいながら無駄のない楽曲展開とそこを一気に畳み掛けていくテンポ感に小気味良いギターのカッティング、聴けば聴くほどなんだかすごいことやってるリズムセクションの絡みもなんとも絶妙である。そして終始後ろで鳴っているハモンドっぽいオルガンのサウンド……、うん、どれを取っても完璧。現代っぽい奇抜なことをやりつつも、歌謡曲〜ニューミュージック〜J-POPの潮流をしっかり感じられる手腕は、奇才katzの作家性がよくわかるところ。

katz作曲 天神・大天使・閻魔＆katz作詞「ミーイズムが止まらない！」

「泥棒猫」のアンサーソングが「警察犬」なんて……！　メンバーも関わる作詞センスも抜群なのである。

こんなにも無秩序な楽曲をまとめているメンバーの実力も忘れてはならない（より、しっちゃかめっちゃかにしているという見方もあるが……）。アニメ声から大人びた声、さらには倍音をなくしたドライな声など、一体何通りの発声法を持っているのか謎の天神・大天使・閻魔。甘くて舌っ足らずな声がやけに耳に残る月埜ヒスイ。この2人が際立つのも、ちぎらと黒木いろ（あ、メンバーカラーが黄色だから黒黄色で“黒木いろ”なのか？と今文字入力しながら気づいた……）がアイドルとして、ガールポップとしての形を整えているからだろう。このところのライブを観ているとノリにノッてる感もハンパない、アンスリューム。年末12月29日には新木場STUDIO COASTでのワンマンライブも決定している。まだ“君臨君臨くりりりーん♫”を未体験の人は早く脳を溶かすべきである。

相変わらず四方八方に飛び散っていく展開もすさまじいが、ベースのスラップが鬼……汗　RYO-P曲「だめだめ」