Dorothy Little Happy、髙橋麻里卒業公演｜寺嶋由芙編集長10,000字ライブレポート寺嶋由芙編集長による＜Dorothy Little Happy Live 2018～Thank you, our story～＞ライブレポート

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そしてガラッと空気が変わり、歌われた「STARTING OVER」。落ちサビの繊細な歌声に感激しました。この曲を麻里ちゃんの声で生で聴けるのは、今日が最後……ということが全然信じられなくて、こちらこそ“さよならなんて言えないよ”の気持ちでした。でも同時に、これほどまでに素晴らしい名曲（そしてこの曲が収録されたアルバム『STARTING OVER』は全編通して最高でした）を残してくれたことへ、感謝の気持ちがじんじんと……。麻里ちゃんの気合と決意を感じる、凛とした歌声が印象的でした。

続いては「set yourself free」。こうした5人時代の曲も麻里ちゃん1人でもしっかり歌い上げ、優雅に舞ってらして、麻里ちゃんのソロ体制としてドロシーを知った方なら、なんの違和感もない、完成度の高いライブだと思います。ただ私はどうしても、5人時代にこの曲を観てしまっているので、たとえば間奏で、メンバーがチームに分かれ、音に合わせて3段階でタイミングをずらして手を広げていく振り付けとか、思い出してしまうんです。けれど、だからって寂しいとか、物足りない気持ちになるわけではない。この感覚はどう言語化したらいいのかなって、観ながらずっと考えていて思い至ったのは、“1人で完成させつつも、ほかのメンバーのための余白を残してる”って、逆にすごいんじゃないかなってことです。1曲目の「バイカラーの恋心」に関しても書きましたが、目の前のショーを、麻里ちゃんのソロステージとして楽しみ満足しながらも、卒業していったメンバーを思い出せる、思い出してもいいんだと思わせてもらえる。それはひとえに、麻里ちゃんの懐の深さ、ドロシーを大切に思い続けている気持ちゆえだと思います。もともとメインボーカルなのに、今となってはソロなのに、それでもドロシーを独り占めしていないというか。みんなの大好きなドロシーを、誇りと責任を持って任されてくれてたんだね。だからこそ彼女は、“解散”ではなく“卒業”という言葉を選んだのだと思います。

と、麻里ちゃんへの尊敬の気持ちをさらに高めていたら、あー嬉しい本当に嬉しい、「Life goes on」が聴けました！　この曲は仙台出身のご当地アイドルとして東日本大震災を経験したドロシーちゃんだからこそ歌える曲であり、そしてドロシーちゃんのような真摯な子たちじゃなきゃ歌えない曲だと思っていて。こういう前向きな歌詞を、嘘も照れもなく真っ直ぐ届けられる、“精神的なドロシーらしさ”を体現した曲だと勝手に思っているので、この曲が今日のセットリストに入っていて本当に嬉しかったです。セットリストを考えたのは多分麻里ちゃん本人だと思うのですが、麻里ちゃんはすごく自分を客観視できる子で、自分の卒業ライブという、自分が主役になっていいライブでさえ、どうしたらみんなが喜んでくれるか、みんなはどういうドロシーが観たいか、やっぱりそこを1番に考えてくれてるんだなって、さすがだなって思いました。

そしてここで麻里ちゃんは一旦ステージ袖へ。懐かしい写真がスライドショーで流れ、2010年から2018年までの思い出を振り返ります。BGMは「風よはやく」。2010年にはまだあどけなかったメンバーさんたちが、月日が流れるにつれどんどん大人びていく様子を見て、この8年間を見守ってきたヲタさんたちの気持ちを思ってまた泣けました。ライブ写真もいくつか挟まれましたが、たとえばZepp Diver Cityがあり、中野サンプラザがあり、横浜アリーナがありました。あれだけ大きな会場であれだけ大きな感動をくれた、それをずっとメインボーカルとして経験してきた麻里ちゃんが、今日、心から大好きだと言ってやまないDorothy Little Happyを卒業していく。もちろん本人はいつだって可愛く、楽しそうに活動してくれていて、そこに嘘はないと思います。でもその笑顔に甘えちゃいけないなって、今後の麻里ちゃんの幸せのために何か少しでもしてあげられることがないかなって、考えてしまいました。