TEAM SHACHI、アメフラっシ、デビアンにthe GazettE? EDMとラウドなバンドの絶妙な関係|「偶像音楽 斯斯然然」第40回

TEAM SHACHI、アメフラっシ、デビアンにthe GazettE? EDMとラウドなバンドの絶妙な関係|「偶像音楽 斯斯然然」第40回

TEAM SHACHI、アメフラっシ、デビアンにthe GazettE? EDMとラウドなバンドの絶妙な関係|「偶像音楽 斯斯然然」第40回

記念すべき連載第40回目は、EDMを軸に昨今ユニークなサウンドを聴かせるグループをピックアップ。そもそもEDMとはどういう音楽なのか?という基礎知識をはじめ、アイドルとV系の共通項など、冬将軍が独自の視点で綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アメフラっシの1stアルバム『METAMORPHOSE』が面白い。EDMにデジロック、キラキラポップスがあればアコースティックなしっとりナンバーもあり、とバラエティに富んだ内容で、びっくりするほどハイクオリティな大傑作。過去の既存曲も現メンバーにて再録されたものだというが、私はグループの存在は知っていたものの、楽曲自体は今回初めてちゃんと聴いたので、過去と比べて云々というのはわからないのだが。

そんな私が心奪われたきっかけはリード曲「メタモルフォーズ」のMV。これぞEDM、という正攻法で非の打ちどころのない楽曲構成とトラック、そこに乗る美しいメロディをなぞる高潔感に溢れた真っ直ぐな歌声と凛とした佇まいに耳と目を奪われた。

アメフラっシ 'メタモルフォーズ' Music Video

この「メタモルフォーズ」、見事なまでにEDMのお手本中のお手本のような楽曲なので、EDMについて少々触れておきたい。アイドルとEDMの親和性は今さら言うまでもないのだが、ちょっと目新しい打ち込みがあったりすると、EDMではないのにEDMだと言われてしまうことも多いからだ。前回取り上げた“K-POPっぽい”と同じく、言葉だけが独り歩きしてしまっている感もある。

アメフラっシ「メタモルフォーズ」に見るEDM入門

EDM(エレクトロニックダンスミュージック)とは、おもにDTM(デスクトップミュージック)で作られる、電子楽器を用いたダンスミュージックである。ちなみにシンセサイザーや電子ピアノは電子回路で音を作る“エレクトロニック(Electronic)=電子”楽器であるが、エレキギターやローズ、ウーリッツァーに代表されるピアノは、音を電気で増幅させている“エレクトリック(Electric)=電気”楽器である。

EDMの一般的な特徴を挙げると、2つある。

・ほぼすべてがシンセサウンド(スーパーソウ、パッド、プラックなど)で構築される
・サビがない(曲の盛り上がりは歌のない“ドロップ”と呼ばれるところ)

「メタモルフォーズ」をEDM観点で紐解くと(タイムはYouTubeのMVから)、ひんやりとした歌い出し、2周目から音数が増え、0:48〜からは2拍4拍に入っていたフィンガースナップが、クラップに変わって1拍3拍の頭打ちになり、リズムがひっくり返る。ここはJ-POPでいうところのBメロにあたる部分であり、このままサビへ……いかないのがEDM。キメの“メタモルフォーズ”というキメ言葉から、プラック(Pluck)と呼ばれる、弦楽器をはじいたような余韻の少ないサウンドが主旋を引き継ぐように飛び交い、その後ろでは助走をつけるように“カカカカカ……”と打音が捲くし上げていく。これをビルドアップ(Buildup)という。

そして、1:17〜がドロップ(Drop)であり、楽曲が1番盛り上がるところだ。歌の代わりに主旋律を担っているシンセは、スーパーソウ(Super Saw)と呼ばれるサウンドである。これは“Saw=ノコギリ”刃のようなギザギザした複数の波形を同時に鳴らし、それぞれを微妙にずらして、音の広がりを与えるという手法である。基本的にシンセで作られるサウンドは生楽器と違い、整った波形をしているため、複数の波形をずらすことで不規則性を持たせ、それによって広がりや派手さを作っていくのだ。こうした音色を含めて、カッコいいスーパーソウを作ることがEDMにおける楽曲制作の大きなポイントである。

ほかにもダブステップなどでよく使われる、“ビヨーン”としたワブルベース(Wobble Bass)っぽい音色(2:48あたり)が使われていたり、シンセと聞いて誰もが思い浮かべる“ファー”と鳴る空間的な広がりのあるパッド(Pad)と呼ばれるサウンドは随所に散りばめられている。というのが、正攻法EDMというべき、この「メタモルフォーズ」である。

大まかな説明であったが、EDMの構造がなんとなくでもおわかりいただければ幸いである。

アメフラっシはEDM主体のグループというわけではなく、冒頭に述べたようにさまざまなタイプの曲がある。どの曲もクオリティが高く、何より歌がものすごく安定しているので、とっ散らかった印象がない。歌がウマいアイドルは珍しくないが、愛来を軸とした、クセもなく大袈裟なビブラートもない、真っ直ぐでよく通るボーカルは、意外といそうでいないスタイルであり、好感が持てる。アルバム自体は聴きどころだらけなのだが、あえてあげるのならインダストリアルからエレポップに浄化していくような「Rain Makers!!」と、無機質で変則的なエレクトロナンバー「ミクロコスモス・マクロコスモス」のメビウスな美しさが印象的である。

アメフラっシ『Metamorphose』

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