ストゼロをZEMAITISに替えたRAY、青い透明性を魅せつけるCYNHN、世の終焉を歌うじゅじゅ、コロナと闘うNEO JAPONISM|「偶像音楽 斯斯然然」第38回
ストゼロをZEMAITISに替えたRAY、青い透明性を魅せつけるCYNHN、世の終焉を歌うじゅじゅ、コロナと闘うNEO JAPONISM|「偶像音楽 斯斯然然」第38回
コロナ禍において、アイドルというフォーマットを駆使しながら刺激的なサウンドとパフォーマンスを放つRAY、CYNHN、じゅじゅ、NEO JAPONISM。そんな4組の独創性を、冬将軍が独自の視点で紐解く。
『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。
シューゲイザーファンはみんなRAYのことを好きになればいい
8月24日にPIA LIVE STREAMにて配信されたRAYの1stワンマンライブ<birth>が素晴らしかった。4つのパートに分かれた配信ならではの演出が見事で、映像技術の最先端を見た。同時に“「情勢に追いやられた無観客配信」ではなく、「アイドルがコロナ禍で武器を増やしたさま」”“「配信だからできること」に収まらない、「今、アイドルだからできること」“というオフィシャルの言葉が表していた、枠にとらわれないアイドルだからこそできる、アイドルの可能性を提言していたように感じた。それを取り散らかることなくまとめ上げた手腕はさすがであり、音楽性を含めた世界観に定評のあるRAYだからこその業だろう。
「サテライト」で始まったこのライブは、画面いっぱいに光の粒子が飛び交い、「スライド」では無数の泡が弾ける“VJパート”に続いて、「Fading Lights」からの“カメラいろいろパート”ではカメラマンの存在を一切感じさせない不思議なカメラワークを演出していたが、なんでもリハの映像を混ぜていたという。
Fading Lights、例えば添付画像①はカメラマンがステージ上でかなりメンに近接していないと撮影できないのに、その直後のシーン②にはカメラマンが映り込まない。③④も①同様でこのようなシーンが随所に見られます。……実はこれら①③④の映像は、当日のリハ映像なのです。#RAYワンマン配信 pic.twitter.com/ztSfyERgXe
— RAY 0829梅田クアトロワンマン (@_RAY_world) August 26, 2020
RAY 公式Twitterより
“映像エフェクトパート”では、無機質な退廃美を創り上げた「Blue Monday」、逆回転映像でMVさながらの不気味な雰囲気を色濃く表現した「Meteor」など、リアルタイムで行なっているとは到底思えない技術とセンスの応酬で魅了していった。
もちろんそうした映像演出は、メンバーのパフォーマンスがあってからのもの。確実にステップアップしている歌とダンスは、最後の“照明がすごいパート”で一層映えたシルエットも相まって遺憾無く発揮された。歪(ひず)んだ音と歪(ゆが)んだ世界の中を自由闊達に舞う4人の少女は美しくも気高い。ラストの「オールニードイズラブ」まで全18曲。あっという間であった。個人的には、先日のオーディオ音源発表から初披露となった「17」で見せたキラキラ煌くニューウェーヴな曲調とともに可憐さが浮遊していくパフォーマンスがとても良かった。
RAY - 17/Seventeen(Official Audio)
この素晴らしい配信ライブは8月31日まで販売配信されているので、まだ観ていない人は観るべし。もう、世界中のシューゲイザーファンはRAYのことを好きになればいい。
RAY 1st Oneman Live「birth」ダイジェスト版アーカイブ
そんなRAYだが、前日8月23日に渋谷Milkywayにて行なわれたRAY初のバンドセットライブ、<Daydream Feedback>でのこと。ステージには3人?と思ったら、甲斐莉乃がシークレットギタリストとしてバンドに参加していた。泣く子も黙るZEMAITIS Metal Frontを手に、シューゲイズする勇姿に息を呑んだ。ちなみに私はロン・ウッド〜布袋寅泰世代なのでZEMAITISを“ゼマティス”と発音するが、2003年に日本のブランドとして再興されてからは“ゼマイティス”で統一されている。英語発音的にはちょうど両者の間を取るような“ゼメィティス”なので、どちらが合ってるかとは言い難い。
本日は「Daydream Feedback」、一部と二部共にありがとうございました!✴︎
— 甲斐莉乃 (@norimaika) August 23, 2020
豪華バンドメンバーの皆様と、自分もバンドセットに加わりギターを演奏しました。。
足元のエフェクターボードもしっかり組んで初めてのシューのゲイズ、楽しくて聞いてもらえて嬉しかったよ…またいつかね~ pic.twitter.com/hlAZf02EvO
甲斐莉乃 公式Twitterより
さらに驚いたのは彼女の足下である。PEDALTRAIN PT-M20-SC Metro 20(ペダルボード&ケース)に丁寧に組まれたペダル群。たかがチューナー、されどチューナー。チューナーは、BOSSのこだわりが詰まったバッファ内臓の技WAZA CRAFT TU-3W。Xvive ECHOMAN(アナログディレイ)に、リバーブの王様Lexiconを搭載したDigitech Polaraという通好みの空間系エフェクトペダルに加えて、なんと歪みが3台、しかもファズが2台で、ひとつはロシア製Big Muffと来たもんだ。Big MuffといえばUSA製が持て囃されているわけだが、あえて扱いづらいロシア製を使用していることに男気を感じた。もう1つのファズ、Effects Bakery Sandwich Fuzzは近年、安いのに音がめっちゃ良いと注目のブランドで、なんといっても“Bakery”の名のもとにパンをモチーフにしたネーミングと、筐体に描かれたパンのキャラクターがとても可愛い。余談だが、私もここのブランドの、Croissant Distortion(クロワッサン!)、Cream Pan Booster(クリームパン!)、Melon Pan Chorus(メロンパン!)を愛用している。ヲタクの心情としては“松たか子〜! 松たか子〜!”と聴こえて来そうな並びである。
使用した機材たち↓
— 甲斐莉乃 (@norimaika) August 23, 2020
・技WAZA CRAFT TU-3W
・Green Russian Big Muff
・Effects Bakery Sandwich Fuzz
・DOD / Boneshaker
・Xvive ECHOMAN
・Digitech Polara
・Baby Power Plant - Vocu
・Pedaltrain metro20
ギターはゼマイティスのメタルフロントモデルA24MF/LH BKだよ~~ https://t.co/C1t6YYYCDL
甲斐莉乃 公式Twitterより
話は逸れたが、自室のふすまのかけらに木下、木村、木口……と名付けて販売したり、「#のりまいか飲酒」で飲酒配信している甲斐莉乃が、ストロングゼロからZEMAITISに持ち替えた恐ろしさ、最強である。
午後の一本目しよ〜 #のりまいか飲酒 pic.twitter.com/pTf1QFiu7R
— 甲斐莉乃 (@norimaika) August 27, 2020
甲斐莉乃 公式Twitterより
そして、内山結愛によるおっさん心に揺さぶりをかけてくる洋邦名盤のレビューを綴ったnoteについては、もうどんな作品が来ても動じないぞと思っているが(それ言うの、何回目だよ)、先日ART-SCHOOL『PARADISE LOST』のレビューを投下したところ、木下理樹にフォローされたという事案になんだかほっこりしてしまった。
ボーカル・ギターの木下理樹さんにフォローして頂いちゃった・・・
— 内山 結愛 (@__yuuaself__) August 19, 2020
一眼でも見て下さって恐縮です有難う御座います・・・
内山結愛 公式Twitterより
と、今この記事を書いている最中にアップされたのが、なんと平沢進『救済の技法』!!
>最後の最後まで「インヤ〜」。頭の中はもう「インヤ〜」でいっぱい。
うん、私の頭も「インヤ〜」でいっぱいである。「ヨングミラーテチーター」もプッシュしたい。
>次回はTHE STALINの『虫』をお届けする予定です。お楽しみに!”
マジかっ!!
なんだかんだアイドルに心を揺さぶられてしまう、おっさんであった。
次ページ
- 1