=LOVE、わーすた、CYNHN、NEO JAPONISM…… 2020年夏を盛り上げる攻めに攻めた曲8選|「偶像音楽 斯斯然然」第37回

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=LOVE、わーすた、CYNHN、NEO JAPONISM…… 2020年夏を盛り上げる攻めに攻めた曲8選|「偶像音楽 斯斯然然」第37回

これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

毎年当たり前のように行なわれていたイベントもフェスもない2020年夏——。そんな状況下であっても私たちの心を動かし、勇気づけてくれるのはアイドルソングだったりする。今回はいつもと違うこの夏を盛り上げる、攻めに攻めた8曲をピックアップ。

WILL-O’「Baby's Breath」 ダーティなアメリカンロック

WILL-O’が8月17日にリリースするシングルは、ギターの重なり方と涼やかなストリングスのアレンジが心地良い「Baby's Breath」。“プリティッシュガールズロック”を標榜するごとく、“ブリティッシュロック”テイストの多かった昨今の楽曲とは一味違うアメリカンロックなナンバーだ。がっつりダーティな重心低めのバンドサウンドといい、サビの徐々に積み上げていくメロディの組み方含めて思わず“機長!”と声をあげてしまうほどのペンネとアラビアータ節が炸裂。そう、阿久津健太郎の楽曲である。中ノ森BANDにBAND-MAID、そしてPASSPO☆、阿久津の書くガールズロックは絶品なのだ。とはいえ、最近はあまり聴かなくなってしまったなぁ、と思っていた矢先であったために思わず声が出た。しかもWILL-O’である。この組み合わせに間違いなどない。

WILL-O’「Baby's Breath」

WILL-O’は、榎本りょうのハスキーボイスが印象的だったわけだが、現体制になってから約1年、今やこの4人だからこその絶妙なバランスを作り上げている。迷いなく真っ直ぐな桐乃みゆのボーカルとちょっとミステリアスさを醸す小森うずらの存在感、そこに純朴に突っ込んでくる佐伯つみき、とすっかり4人それぞれの存在感がよく映えている。WILL-O’特有の振り、手旗信号的であったり、ゼンマイ仕掛けの人形のような動きから生み出されるグルーヴは、この4人だからこそ作れる強さ。気品溢れる絢爛な新衣装を纏いながら歌い踊る絵面、横イチに並んだあのシルエットはインディーズアイドルの中で最も高潔さを感じるグループだ、といっても言い過ぎではないだろう。

みんな大好き名曲「Last Dance」待望の4人Ver.映像化(新衣装)

この自粛期間の配信の中で、桐乃画伯によって生み出されたキャラクター“吉田杏奈”も、ほかメンバーによって散々好き放題弄られていたわけだが、今やWILL-O’に欠かすことのできない存在になりつつあるので、そこからも目が離せない。

NEO JAPONISM「Subliminal」 たった4ヵ月足らずで急成長したバケモノ曲

つい先日、この連載で“自粛期間に爪を研ぎながら急成長を遂げた”と紹介したばかりのNEO JAPONISM。4月に新体制初の音源、そして7月に無観客配信ライブで成長した力をしっかりと落とし込んだ新体制再録のアルバム2枚、という精力的な活動をしていたわけだが。ここにMVがあったら最高なんだけど、さすがにそれは贅沢か……、と思っていた矢先にまさかの新曲MV投下。

NEO JAPONISM 「Subliminal」 Music Video

オリヴァー・サイクス(Bring Me The Horizon)が聴いたら、歯を喰いしばりながら悔しがりそうなエレクトロニックでポストハードコアなナンバー「Subliminal」。近年の日本の“ラウドロック”ではなく、ちゃんと世界基準の“ヘヴィミュージック”をオルタナティヴに仕上げている。退廃的なMVも素晴らしく、朱と緑の気色悪い(褒め言葉です)組み合わせの奇抜なデザインの衣装と、見覚えのあるアー写の画角は?……と思ったら、やはりソトバヤシケンタだった。

ダブステップっぽかったり、インダストリアル風味だったりのぶっ込み方は抜かりなく。それでいて洋楽にかぶれることなく、日本の女性ボーカルソングとして、アイドルポップスとしてきちんと昇華している様は流石の業。滝沢ひなののねじ伏せていくような強さと辰巳さやかのしなやかな強さ、そして、その2人の間を後ろから突き刺していくほどに鋭利な強さを持った福田みゆ。素っ頓狂に斬り込んでくる瀬戸みるかと、柔らかに4人を紡いでいく朝倉あい、という5人それぞれの強さが深く刻まれた楽曲であり、このたった数ヵ月の間の成長具合いを浮き彫りにしている。

それだけの完成度を誇っているがゆえ、4月にリリースされた『NON CALL-NOW』。V系好きもメタルヘッズにお勧めしたいアルバムであり、2020年マイベスト5に入るほどの大名盤であることに間違いはないんだけど、ボーカル録り直してほしいなぁ、と思ってしまうほど急成長を見せている。まだたった4ヵ月足らずなのに……。恐るべし、NEO JAPONISM……。

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