えいたそ×DIR EN GREY、あゆくま×バクシン、大阪☆春夏秋冬……アイドルとバンドが結ぶ強度|「偶像音楽 斯斯然然」第31回

えいたそ×DIR EN GREY、あゆくま×バクシン、大阪☆春夏秋冬……アイドルとバンドが結ぶ強度|「偶像音楽 斯斯然然」第31回

冬将軍

音楽ものかき

2020.05.23
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これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アイドル曲にロックミュージシャン、バンドマンが携わることは今となっては珍しくないが、昔を思い出せば、ももいろクローバー(“Z”じゃない時代)が「ピンキージョーンズ」(2010年)をリリースした際に、“作編曲がNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS / 特撮)”という事実をきっかけに、ももクロ沼、そしてアイドル沼にハマっていた人間を何人も見てきた。

ギターがけっこうエグいんですよね…… ももいろクローバーZ「ピンキージョーンズ」

好きなバンドとアイドルが結びつくと何だかテンションが上がってしまうのは、今も昔も変わらずで。それは作曲編曲はもちろん、トラック演奏のクレジットもくまなくチェックしてしまう。そんな感じでロックファンの心をくすぐる最近の作品をいくつか。

成瀬瑛美(でんぱ組.inc) × 薫(DIR EN GREY)

でんぱ組.incのニューアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』初回限定盤Bに収録されている、えいたそこと、成瀬瑛美ソロ曲「レジェンド・オブ・エイ」に、DIR EN GREYの薫がゲスト参加している。

えいたそといえば、バンギャル(ヴィジュアル系の女性ファン)のバイブル漫画『バンギャルちゃんの日常』(蟹めんま・著)に帯コメントを寄せているほど、自身もバンギャル文化に精通しているのは有名な話。かねてから憧れだったという経緯から薫の参加が決定したそうだが、DIR EN GREYのバチカン宮殿、いや、薫がこうして他者の楽曲に参加するのは貴重でもあるし、ましてや同曲はNARASAKI作編曲によるメロディックスピードメタルな楽曲であり、めちゃくちゃメロディアスなギターソロをキメているので、虜(DIR EN GREYファンの俗称)も悶絶であろう。

さらに、この楽曲でベースを弾いてるのは村井研次郎(cali≠gari, ELLEGUNS, COALTAR OF THE DEEPERS)ときたもんだ。NARASAKIワークスでよく見かける気鋭のドラマー、鎌田修平のグラインドコアっぽいエクストリームドラミングも見事であり、総じて息つく暇もない怒涛の楽曲に仕上がっている。えいたその確かな歌唱力ではあるんだけど、突拍子もないように聴こえてしまうボーカル力も魅力的。

DIR EN GREYと村井研次郎のアイドルソングでふと思い出したのはBerryz工房。ライブでも大盛り上がりの「一丁目ロック!」(アルバム『⑦ Berryz タイムス』収録 /2011年)のグルーヴをグイグイ引っ張っているエグいベースは村井研次郎で、こちらも後期におけるライブ定番曲「世の中薔薇色」(アルバム『愛のアルバム⑧』収録 2012年)のアレンジを担当したのが、DIR EN GREYのマニピュレーターだった宅見将典(ex.siren)である。ストリーミング配信されておらず、音を紹介できないのが残念である。

鶯籠 × RENO(ex.ViViD)

さて、えいたそ「レジェンド・オブ・エイ」はふなっしーの作詞であるが、ふなっしーは鶯籠のメジャーデビュー曲「FLY HIGHER AGAIN」の詞も手掛けており、意外にもアツくてエモい作家性は、なかなかに胸を打つ。

この「FLY HIGHER AGAIN」は、ヴィジュアル系バンド、元ViViDのギタリスト、RENOが手掛けた曲であり、鶯籠らしいエモーショナルさを存分に引き出している。ねちっこいギターと暴れまくっているベースラインが絶妙である。今年の2月に行なわれた鶯籠の2ndワンマンライブ<修羅場>で何年ぶりかにRENOをステージで観たのだが、ゲイリー・ムーアを彷彿とさせる粘っこいチョーキングと豪奢なプレイがすごくよかった。そうだ、ViViDといえば、先述の宅見将典がサウンドプロデュースをしていたな。そして、ベースのイヴも近年はアイドルのサウンドプロデュースをやっている。

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