(Ⓒ湊かなえ・双葉社/エイベックス・ピクチャーズ株式会社)

渡邉美穂ら出演<朗読劇「Nのために」>開催! 「素敵なラブストーリーを私たちがみなさまにお届けできたこと、心から嬉しく思います」

Pop'n'Roll 編集部

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2023.10.16
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<朗読劇「Nのために」>が、2023年10月14日(土)、15日(日)に山野ホールにて上演された。

原作は、『告白』『母性』など話題のミステリー小説を世に送り続ける作家・湊かなえ初の純愛ミステリー『Nのために』(双葉文庫)。今なお、色褪せることのない珠玉の名作ミステリーが<朗読劇>という新たなエンターテインメントの形に生まれ変わった。

出演者には、アニメや舞台、ドラマなどで活躍する超豪華キャストが集結。1日目は、近年の人気アニメ作品に出演する本渡楓、島﨑信長、仲村宗悟のほか、寺島惇太、岸尾だいすけ、内田彩ら、声優陣が揃い、表現力で物語を魅了した。2日目は数々のステージを経験してきた才能たちが集結。日向坂46の元メンバー・渡邉美穂、7ORDERのリーダー・安井謙太郎、劇団EXILEの小野塚勇人のほか、西山潤、板倉俊之(インパルス)、平野綾らが、新たな『Nのために』の世界を作り出した。

本記事では、オフィシャルレポートをお届けする。

<朗読劇「Nのために」>

■初日10月14日(土)公演オープニング

<朗読劇「Nのために」>公演初日となる10月14日の出演者には実力派声優陣が揃う。これまでさまざまな形で愛されてきた物語が、どのような形で生まれ変わるのかと期待を寄せながら、いよいよ幕が上がる。アースカラーの衣装に身を包んだ出演者たちが舞台へと足を運ぶと突然、電話の着信音が会場に鳴り響き、物語が始まる。本渡楓演じる杉下希美と、寺島惇太演じる西崎真人による“ある事件現場”で交わされた重要な一場面。そして“野口夫妻が死亡し、警察は現場に居合わせた男女4名から事情を聞く”というニュースのアナウンスが続く。衝撃的なオープニングに緊張が走るなか舞台は一転、本渡が一人立ち上がり、杉下希美の証言が始まった。

本渡は、事実を冷静に述べながらも、時折自身の出身地や住居を自虐っぽく伝えることで心の内を隠そうとする杉下希美のキャラクターを表現。続いて、島﨑信長演じる成瀬慎司の証言は、淡々としているが不安な気持ちも見え隠れしている様子だ。仲村宗悟演じる安藤望は、明快に、そして自信すら感じさせる証言し、最後の西崎真人(寺島)は、ぶっきらぼうに話しながらどこか吹っ切れた様子で“失うものは何もない”と言い切った。彼らの証言はそれぞれの登場人物の特徴が伝わり、観客は一気に物語へと引き込まれていった。

出演者たちは、登場人物の心情を表したモノローグや過去に起きたエピソードから、登場人物の間で生まれる恋愛感情や友情などさまざまな愛の形を表現した。特に、原作小説では著者の湊かなえ自身のエピソードも反映されているというシーンがある。

杉下(本渡)は、大学入学を機に地元の島を出て、「野バラ荘」という古いアパートで安藤(仲村)と西崎(寺島)と出会うことになる。この場面では、夢や野望を持った若者たちによる会話がくり広げられた。本渡は、初対面の人にも明るく親しみやすさを持って接する杉下を笑顔で演じ、仲村は、普通に会話をしながら人間観察をしている安藤というキャラクターを、台詞とモノローグで演じ分けて表現した。そんな2人よりもずっと癖が強くナルシストな人物である西崎を、寺島は動きをつけながら特徴的に演じた。同シーンは湊自身が学生時代を想い出しながら書いたといい、学生特有の友達同士でダラダラと過ごす深夜の時間を感じさせ、観客にとっても微笑ましい場面となった。

また物語前半の中でも印象的なシーンとして、杉下と安藤がアルバイトでビルの窓清掃をする場面がある。高いところが好きな杉下が、安藤の計らいによって念願の窓清掃ができるという流れで、ピアノ演奏ととともに本渡と仲村のやりとりが交わされる。本渡は杉下の無邪気に喜ぶ姿と心の中に宿る強い野望を、そして仲村は安藤の杉下に対して素直になれない複雑な想いを表現した。二人の会話とそれぞれの本音を表すモノローグによって、友情とも恋愛とも断定できない2人の微妙な関係性とすれ違う心が垣間見える一場面となった。

物語後半では、西崎と奈央子の出会いも見せ場の1つだ。雨の日、杉下に会いに来た奈央子が西崎の部屋で雨宿りをさせてもらうという場面。西崎(寺島)は、内田彩演じる奈央子から夫である野口貴弘(岸尾だいすけ)についての話を聞く。“彼を少しでも疑うことを言うと、きっと許してもらえない”という奈央子の言葉を聞いた西崎の中で、野口夫妻の関係性に疑問が生まれる。さらに奈央子の身体にアザがあるのを見つけるが、奈央子はそれを“愛の証”だと言った。やがて西崎は奈央子に共感を示し、自身が書いた小説『灼熱バード』を渡すのだ。内田はその小説を神妙な面持ちで読み、奈央子の不安な感情を表現する。そして小説を読み終えた時、2人の間に特別な絆が生まれるのだった。

<朗読劇「Nのために」>山野ホール(2023年10月14日)(Ⓒ湊かなえ・双葉社/エイベックス・ピクチャーズ株式会社)

■10月15日(日)公演オープニング

2日目となる10月15日(日)の出演者にはさまざまなステージの経験者が集結。渡邉美穂演じる杉下希美、安井謙太郎演じる成瀬慎司、小野塚勇人演じる安藤望、西山潤演じる西崎真人、この4人の証言から始まる。そして続く杉下(渡邉)によるモノローグでは、また前日とは違う緊張感を漂わせながら、観客をこの物語の世界へと誘う。同作の核を表すセリフの1つ、“その人のためなら自分を犠牲にしてもかまわない。その人のためならどんな嘘でもつける。その人のためなら何でもできる”という言葉に、渡邉の気持ちが込められた。

同作は、長い年月を描いた物語であることも面白さの1つだ。特に杉下希美と成瀬慎司の学生時代から現在に至るまでのストーリーは、甘酸っぱくも切ない感情をもたらす。1日目の本渡と島﨑は、まるでそこが教室かのように高校生時代の杉下と成瀬を演じる。時折、お互い目線を交わしながら微笑ましい会話がくり広げられた。2日目は渡邉美穂が杉下を、安井謙太郎が成瀬を演じる。高校時代のある出来事をきっかけに交流が減ってしまった2人は、同窓会で久しぶりに再会する。少し成長し大人になった杉下(渡邉)と成瀬(安井)の間に、気まずさを残しながらもお互い居心地のよさを取り戻してく過程が垣間見えた。杉下の部屋を訪ねた成瀬は、杉下への淡い恋心と、実際の杉下の自分に対する行動とのギャップにがっかりする気持ちを演じ分け、成瀬という人物を掘り下げた。

物語の中盤、野口夫妻と杉下・安藤の4名が石垣島でディナーをする場面は、両日に渡り見どころの1つとなる。一見、仲睦まじく食事をする登場人物たちだが、人間の“表と裏”を表現したリアルな場面である。野口貴弘役は岸尾だいすけと板倉俊之が、野口奈央子役は内田彩と平野綾が演じた。野口夫妻の微妙な関係性を、各キャストが細やかな表現で魅せる。

1日目の岸尾は、安藤(仲村)に対し力強く“男同士の勝負をしよう”と将棋の対局を挑む。その様子は、奈央子(内田)や杉下(本渡)は眼中にないといった態度で、野口の偏った男のプライドが窺える絶妙な演技で観客を魅了した。やがて夫婦間の言い争いへと展開し、岸尾と内田の迫真の演技が、物語の重要な事件への予感を告げた。2日目の野口夫妻を演じた板倉と平野は、事件当日のシーンでの鬼気迫る演技で物語を盛り上げる。板倉は、自分の強さを必要以上に見せつける野口を、狂気をもって演じ切る。それに対し平野も歪んだ愛をヒステリックに訴える奈央子を、圧巻の演技力で表現する。

こうして登場人物6名による複雑に絡み合ったエピソードとそれぞれのモノローグによって、物語はクライマックスへと向かっていった。

(Ⓒ湊かなえ・双葉社/エイベックス・ピクチャーズ株式会社)

■カーテンコール

2日間に渡り開催された<朗読劇「Nのために」>。各公演のカーテンコールでは、主人公の杉下希美を演じた本渡楓・渡邉美穂による感謝の言葉が述べられた。“朗読劇Nのために。最後まで御覧いただきありがとうございました。湊かなえ先生の素敵なラブストーリーを私たちがみなさまにお届けできたこと、心から嬉しく思います。本日は、本当にありがとうございました!”そして出演者全員で一礼し、観客からの盛大な拍手で見送られ舞台を降りて行った。会場は熱気に包まれたまま、<朗読劇「Nのために」>は大盛況のなか終了した。

なお、同公演は、10月22日(日)までアーカイブ配信で視聴可能。

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