守屋茜[舞台<FOCUS2022「アップデート」>稽古場レポート]松本利夫と社交ダンスに初挑戦!

守屋茜[舞台<FOCUS2022「アップデート」>稽古場レポート]松本利夫と社交ダンスに初挑戦!

Pop'n'Roll 編集部

Pop'n'Roll 編集部

2022.09.03
  • ポスト
  • シェア
  • ブックマーク

松本利夫(EXILE)主演、守屋茜ヒロイン出演の舞台<FOCUS2022「アップデート」>が、9月17日(土)&9月18日(日)に東京、11月18日(金)&19日(土)に大阪にて上演される。本記事では、オフィシャル稽古場レポートをお届けする。

<FOCUS2022「アップデート」>稽古場にて

<FOCUS>は、国内を代表するボールルームダンス(社交ダンス)のトップダンサーたちと、各分野で活躍するアーティストや役者たちのコラボレーションが話題の舞台で、2017年に誕生。ボールルームダンス×演劇という今までにない切り口でエンタテインメントの新たな可能性に挑戦し続け、毎年公演を重ね、今作で5作目となる。

今作の主人公は、独身生活を謳歌している40代の桑田慎太郎。仕事も私生活も何不自由なく過ごしている慎太郎は、ある日、ひょんなきっかけから“老後”について考え始め、気づけば結婚相談所へと足を向けていた。結婚相手として紹介されたのはまさに理想の相手と思いきや、なんとAI。その後、慎太郎は、AIパートナーとしてアンドロイド・マリモとの共同生活を始める……というストーリーとなる。

主人公の慎太郎を演じるのは、松本利夫(EXILE)。言わずと知れたストリートダンス界のレジェンドの松本だが、ボールルームダンスには今回が初挑戦となる。

そして、ヒロインには守屋茜、加えて春海四方、金井勇太といった実力派俳優が演劇に奥行きを与える。

さらに、タップダンス界の第一人者でありながら、ボールルームダンスには初挑戦となるHideboHと、さまざまなジャンルから一流のエンターテイナーたちが集結した。

稽古場レポート

取材・文:田辺ユウキ

“お芝居として踊らないと、今のままではダンスがハリボテのように見えてしまう気がします”

そのように演出家と何度もディスカッションを重ねるのは、EXILEのメンバーであり俳優としても活躍中のMATSUこと松本利夫だ。

そこは、松本が主演をつとめる舞台<FOCUS2022『アップデート』>の稽古場。同作は、ボールルームダンス(社交ダンス)と演劇を融合させるという新しい切り口のなかで、47歳の独身社長・桑田慎太郎(松本)とAIパートナー・マリモ(守屋茜)の恋愛を描いていく。桑田は、自分の理想に近いマリモにのめりこむが、一緒に暮らすなかでさまざまな違和感を抱えていくことに。いつか現実になりそうな出来事を題材としながら、“自分は誰と、どのように生きていくのか”を考えさせる物語となっている。

この日の稽古では、9月17日に初日を迎える東京公演に向けてさまざまなブラッシュアップが行なわれていた。特に松本が強く意識していたのが、前述したボールルームダンスと演劇をどのように組み合わせていくかである。

例えば桑田が出社する場面でのミュージカルシーン。社員役のダンサーたちが、踊りながら桑田に企画書などを見せにいくという展開だが、松本は“今のやり方だと、(ダンサーたちの中に)入っていけるタイミングがない”とし、“もっと、日常の動作っぽく踊りを見せた方がいいんじゃないか。現状は、「みんながダンスをやっています」「じゃあ次に桑田がそこへ出て来ます」という風に、すべての動きが切り分けられている感じがします。ダンサーのみなさんがどう桑田を迎え入れるか、桑田は社員たちにどういう目線を投げかけるのか。ダンスも物語のひとつにならないといけない気がします”と、かなりアグレッシブに意見を出していた。

さらに松本は“ただ踊るだけになってしまうと、この作品的には違うと思うんです。観ている人に「なんでこの人たちは踊っているんだろう」と疑問を持たせてはいけない。すべて意味のある画にしていきたい。例えば社員も、それぞれの役柄を表したような踊りになった方がいいのかなって。みんなが仕事をしている風景がダンスとして見えるように、より細かく構成していきたいです”と、休憩時間もそっちのけで熱を込めて話し込む。

マドンナ的な存在・橘まりあ(土屋炎伽)が冗談で桑田の結婚相手に立候補し、それを桑田が鵜呑みにして言い寄る場面でも、松本は“いまどき壁ドンって古くない?と思いますよね”と苦笑い。“今は押した感じでいったけど、引いた感じも試してみましょうか”とアプローチのパターンもいろいろと模索。

このように、稽古場はいい意味で役者と演出チームの垣根が取っ払われている。結婚相談所スタッフ・三沢役の金井勇太も、マリモの起動場面では“マリモが立ち上がるまで、データ画面に視線を落としている方がよいかもしれない。立ち上がるまで異常があるかどうか、確認しているみたいに”とマリモの制作者・五木田役の中島健の仕草についてアドバイス。そういった光景がたくさん見られ、キャスト、スタッフが一丸となって舞台を作り上げているように映った

ちなみにこのマリモの起動シーンは、序盤のポイントになりそうだ。マリモ役・守屋の芝居が絶妙なのである。守屋は稽古でもAIになりきっている。ぎこちない伸びの仕方、インストールされた言葉を喋る時の口調など、その一挙手一投足にグッと見入ってしまう。“果たしてどんな感じでマリモは動き出して声を発するのか”と、思わず息を飲むような緊張感も漂う。慎太郎の名前を3回ほど呼んでから、スッと人間ぽくなっていくその変化は、守屋の芝居のひとつの見せ場になりそうだ。この場面は守屋がペースを握っており、間合いの取り方が大きな鍵になるのではないか。

稽古を取材する限り、ダンスシーンがふんだんにあり、コメディ要素も満載。独身者の老後問題など現代的なメッセージも散りばめられている。また、松本が表現する桑田の勘違いぶりは痛々しくもクスッとさせられる。なにより台詞の1つひとつが面白い。本番で期待したいところは、情報量が多い作品の中でどういう要素が際立っていくのかという部分だ。

タイトル通り、公演期間中も内容がどんどん“アップデート”されていきそうな気配がする同作。だからこそ何度観ても楽しく、そして発見がある作品になるのではないか。

次ページ