ARCANA PROJECT[ライブレポート]高いパフォーマンスと愛を詰め込んだ1stワンマンライブ「大好きな歌と大好きなアニメとずっと関わる人生でいたい」
Pop'n'Roll 編集部
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ARCANA PROJECTが、10月24日(日)に恵比寿リキッドルームにて初のワンマンライブ<1st One-Man LIVE"Sacre de L'ARCANA PROJECT”>を開催した。本記事では、オフィシャルレポートをお届けしよう。
取材&文:澄川龍一
撮影:チェリーマン
会場となった恵比寿リキッドルームのステージ上には、ライブハウスにはおよそ似つかわしくない、玉座が5つ並んでいる。その中で荘厳なBGMとともにメンバーがステージに登場し、それぞれの椅子に座る。そして、花宮が《Hello, my heart》と歌い始めると、そこに桜野が続き、そこから5人のハーモニーとシンフォニックなサウンドが合わさるイントロダクションの「Hello True my heart」が鳴らされ、フランス語で“ARCANA PROJECTの戴冠式”を意味するARCANA PROJECTの1stワンマンライブは幕を開けた。組曲的構成はまるで彼女たちの戴冠式を祝福するかのようで、冒頭からARCANA PROJECTのコンセプチュアルなステージが展開されていく。
そのままワルツのリズムに乗せて空野と相田の独唱からアグレッシブなロックサウンドへと展開する、ニューシングルから「迷わないConquest」を初披露。椅子から立ち上がって目まぐるしくフォーメーションを変え、ボーカル同様アグレッシブなステージングを見せていった。続くエレクトロニックなビートが加わった「Ophelia」では、ダンサブルなサウンドにドレスの裾を使った息の合ったダンスを見せる。
そこから一転して「123!」ではポップなステージを見せる。キュートな笑顔を見せながら、“ARCANA PROJECTの戴冠式にようこそ!”(相田)、“私たちの伝説はここから始まるよー!”(桜野)という宣言とともにポジティブなエネルギーを放ちながら最初のブロックを終えた。
シンフォニックやゴシック、EDMにジャズなどといった多彩なサウンド、また椅子を効果的に使った複雑なステージングと、ARCANA PROJECTの世界観が存分に展開されていった序盤から、その緊張が解けたような初々しいMCを見せて次のブロックへ。スリリングなバンドサウンドが聴かれる「天運ヘキサグラム」、90’sテイストのデジタルロック「ドンケア」ではそれぞれのボーカルがよりアグレッシブに絡み合う。そこからトリッキーな展開を見せる「ヒトリガタリ」、クールなギターサウンドも心地良い「TWO of WANDS」とアプローチのバリエーションを見せる中で、高い歌唱力とともに熱がこもったパフォーマンスを堪能することができた。特に、ヘヴィな激情を聴かせる初披露曲の「Ace of Pentacles」の終盤では髪を振り乱しながらの強烈な歌唱が印象的だった。
そこから《大好きだよ》とストレートに歌うポジティブなロックチューン「キミトナラ」では力強いユニゾンを聴かせ、最後は会場が一体になってアグレッシブな中盤を駆け抜けた。
“ここからはARCANA PROJECTの、特に想いの強い、特別な曲をお届けしたいと思います”という桜野の言葉とともに後半戦は、ARCANA PROJECTによるアニメ主題歌が続く。まずはTVアニメ『白い砂のアクアトープ』1クール目OPテーマ「たゆたえ、七色」から。タイトルや歌詞どおりまさにたゆたうように、軽やかに、浮遊感のあるステージングが印象的だった。
そこから現在放送中のTVアニメ『白い砂のアクアトープ』2クール目OPテーマ「とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか」とつながる流れは感動的で、こちらはサウンド同様に躍動感あふれるパフォーマンスを見せながら、エモーショナルな歌唱を聴かせる。そのあとは、彼女たちのデビュー作でもあるTVアニメ『モンスター娘のお医者さん』OPテーマ「カンパネラ響く空で」でフレッシュな歌声を聴かせ、TVアニメ『回復術士のやり直し』EDテーマ「夢で世界を変えるなら」ではポップなビートに乗せて息の合ったダンスを見せながら、サビでは重奏的なハーモニーを聴かせる。
直後のMCでは“夢でなら世界を変えられる、でも現実でだって、どんなつらい世界だって、自分たち次第で変えられると私は思います”という空野の言葉から始まる。アニメの世界を歌う一方で、彼女たちがデビューした2020年から現在は、決して楽しいだけの世界ではなかった。そんな彼女たちが「夢で世界を変えるなら」でも聴かれるメッセージを引き継ぐように、天野が“明けない夜は絶対にない、大丈夫、物語を繋いでいこう”と告げ、「Dawn of the Future」が鳴らされた。そこには未来を掴もうとする5人の力強さも感じられる、エモーショナルなパフォーマンスが見られた。そして本編最後には、“何度も越えていくんだ”というメッセージとともに「星影のファンタジア」を披露。デビューして1年、多くの経験を経て歌われたクライマックスでのハーモニーは、美しくもあり、同時に未来に向かって進んでいこうとする固い意志を感じることができた。
客席からの、鳴り止まない拍手に呼ばれるようにして始まったアンコールでは、彼女たちにとってプレデビューシングル「ACE of WANDS」をアクト。
その後のMCでは“どんどんいろんな曲に挑戦させていただいて、どんどん成長できた1年だったかと思います”(花宮)とこの1年を振り返りながら、“アニメを好きなみんなから愛される存在にこれからなっていきたいというのが私たちの今の目標です”(相田)と今後の豊富を語った。そしてこの日最後の曲は、桜野の“大好きな5人で、大好きな歌と大好きなアニメとずっと関わる人生でいたいと思っているので、その未来に辿り着けるように願いを込めて”という言葉のあとに、「きっと、その未来にたどりつくから。」へ。彼女たちの高いパフォーマンスと愛が詰め込まれたこの日のステージは幕を閉じた。
ビジュアルも含めたコンセプチュアルなアーティストイメージを見せながら、歌われる楽曲たちは多種多様。そんな世界観を実現する高い実力という、ARCANA PROJECTのポテンシャルが存分に発揮され、そしてそれを目で耳でと堪能することできたこの日のステージ。踏み出した一歩はあまりに大きく、そしてそれは、彼女たちがかなえようとする未来へ正しい方角を示している。この日のライブ、そして10月27日に発売されたニューシングル「とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか」を経て、ARCANA PROJECTが次に切るカード、その行方を楽しみにしたい。