でんぱ組にベビレ、クマリデパート……ハチャメチャなのにスタンダード!? 玉屋2060%のアイドルPOP|「偶像音楽 斯斯然然」第59回

でんぱ組にベビレ、クマリデパート……ハチャメチャなのにスタンダード!? 玉屋2060%のアイドルPOP|「偶像音楽 斯斯然然」第59回

冬将軍

音楽ものかき

2021.06.19
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でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」、ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」、FES☆TIVE「ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ!」など、玉屋2060%(Winners)が手がけたアイドルソングは、1度聴いたら耳に強く残り、圧倒的な高揚感を覚えさせる。その類い稀なる中毒性はどのように生み出されているのか? 冬将軍が鬼才サウンドクリエイター・玉屋2060%の音楽性に深く迫る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

10人体制となったでんぱ組.incの両A面シングル「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!/千秋万歳!電波一座!」収録の「千秋万歳!電波一座!」は、でんぱ組楽曲を語る上で欠かせない作家、玉屋2060%によるもの。昔からのファンからすれば思うことはあるだろう新体制なれど、ひたすらにキャッチー性が強襲する様相と、音も詞も含めて膨大な情報量が騒々しく炸裂する玉屋サウンドと萌え声+ウィスパー気味のボーカルの組み合わせは、でんぱ組.inc以外の何者でもない。

でんぱ組.inc「千秋万歳!電波一座!」Live Movie from『Dear☆Stageへようこそ2021』

でんぱ組.incと玉屋2060%、両者の邂逅は、「でんぱれーどJAPAN」(2012年)に始まっている。アニメやゲームのシーンに存在していた、いわゆる“電波ソング”をロックの手法でアイドルソングに落とし込んだ。その革命的ともいえるインパクトはでんぱ組.incの人気とともに拡大していき、“アイドル戦国時代”といわれていた当時、新時代の到来を象徴させるものになった。さらに、でんぱ組のみならず、ほかグループへの楽曲提供によって、アイドルポップスに新しい息吹をもたらし、今日に至るまでアイドルソングにおける、変化球なれどスタンダードな1つのスタイルとして広く愛されている。

リズミカルなテンポ感とコミカルな歌詞、しっちゃかめっちゃかに思えて、日本人なら親しみを覚えるキャッチーなメロディを持つ玉屋楽曲は、ライブで盛り上がることはもちろんのこと、音源を聴いていても、なんだか元気が出る曲ばかりなのである。

今回はそんな玉屋2060%のアイドル楽曲の魅力を、改めて振り返ってみたい。

自分の作家性をアイドルソングに反映

そもそも玉屋2060%は、ニューウェーヴな感覚とエッジの効いたギターサウンドを武器としながらも、どこか懐かしさを感じるメロディが印象的なロックバンド、Winnersのギター&ボーカル。基本的に自身のバンド曲とアイドルへの楽曲提供を明確的に使い分けるタイプではなく、自分の作家性をウマくアイドルソングに反映させている。女性ボーカルや複数ボーカル、そしてアイドルソングとしてのポップさ加減はあるだろうが、あくまでバンドマンのスタンスであり、職業作家的なスタイルではないところが大きい。いろいろなタイプの楽曲を書き分ける器用さはない分、アイドルのキャラクター性にハマった時の破壊力がすさまじいのである。

Wienners「蒼天ディライト」SUPER THANKS,ULTRA JOY TOUR 2018 FINAL @渋谷CLUB QUATTRO

ハチャメチャの中にある普遍性

「でんぱれーどJAPAN」は、でんぱ組.incのパブリックイメージを印象づけた楽曲であり、作家としての玉屋のはじまりの楽曲だ。

でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」

メロディと楽曲の持つ歯切れのよさを、作詞を担当した畑亜貴の言葉選びが鋭角的なものへ深化させている。『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ハレ晴レユカイ」や『らき☆すた』の「もってけ!セーラーふく」といった、当時斬新だったカオスなアニソンの方法論を見事にアイドルソングとして昇華。無機質にも聴こえる萌え声ボーカルも相俟って、狂気ともいえる世界観が確立された。反面で強烈なインパクトを持ちながらもメロディラインだけをなぞると、どこか親しみやすさを持っていることがわかる。

この後、でんぱ組と玉屋の関係性は「でんでんぱっしょん」(2013年)、「サクラあっぱれーしょん」(2014年)など、その音楽性とともに歩んでいくわけだが、同時に作家・玉屋2060%の名前は確実に知れ渡っていった。

メロディメイカーとしてだけではなく、そこに付随する作詞家としての手腕も見事。楽曲が持つ妙なハイテンション具合いは、歯切れのいい軽快なリズムと、そこに乗ったノリのよいアクセントを持つ詞の語感から生まれるものだ。Aメロ、Bメロと緩急をつけながら、サビで一気に弾けて爆発。そこに加えて、キメフレーズがあったりと、王道的なJ-POPセオリーと古典的なアニソンライクの普遍性が錯綜していく。このメロディと詞が織りなすキャッチー性が、玉屋楽曲の大きな武器になっている。

ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」PV(2014年)

ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」は、ソリッドなバンドサウンドに乗せたリズミカルでコミカルな歌詞が耳に残る。“頭で考えるな! 身体で感じろ!”と言わんばかりに、ひたすらキャッチーである。特に《We are the 虎虎タイガー!! ベイビーレイズ》の連呼は1度聴いたら耳から離れず、老若男女誰もが口ずさんでしまいそうなキメフレーズだ。

ロックやポップスに多く見られる洋楽解釈の英語的なメロディではなく、日本語が聴こえるメロディの組み立て方をしている点は注目すべき作家性である。玉屋楽曲にどこか懐かしさを感じるのは、日本人に耳馴染みの深い、日本語映えするメロディとリズムであるからだろう。

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