藤川千愛[ライブレポート]ライブへの喜びと新たな決意を込めたバースデーステージ「思い通りに行かなかった25歳をこの1年で取り返したい」
Pop'n'Roll 編集部
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藤川千愛が、自身の誕生日となる6月6日(日)に配信ライブ<藤川千愛 Birthday Streaming Live>を開催した。全16曲をパフォーマンスしたライブでは、約3週間後のTSUTAYA O-EASTでの有観客ワンマンライブ発表やVaundyへのコラボレーションのラブコールなど、今とこれからを感じさせるステージングをくり広げた。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けしよう。
撮影:石原汰一
<藤川千愛 Birthday Streaming Live>(2021年6月6日)
配信が開始されると映し出されたのは、アットホームなムードに包まれたコンパクトなライブセットとそこにすでにスタンバイしたバンドの姿。フロントに立つ藤川はトレードマークとなる古着の柄シャツに柔らかな素材のフレアパンツという肩肘張らないいで立ちでオーディエンスの前に登場した。
オープニングチューン「四畳半戦争」のハードなサウンドが鳴り響くが、そこにライドする藤川はかつてなくリラックスしたムード。ハンドマイクに緩やかな身振りを交えてビートに応えながら、伸びやかなヴォーカルを聴かせていく。
1曲を終えた藤川は、この夜最初のMCに。“本日6月6日で26歳になりました。この1年は本当に予想外で、私の25歳も予想していた1年とは何もかもが違い、歌手としてつらい1年でした。26歳はその分も取り返すつもりで、楽しんで、楽しんで、楽しんで、みなにたくさんよいお知らせができたらいいなと思っているので、楽しみに待っていて”と想いを語ると、ドラマ『にぶんのいち夫婦』(テレビ東京系)のオープニングテーマとしてリリースした「片っぽのピアス」をライブ初披露。
累計150万部を誇るWebマンガを原作にし、各所から注目集まる同ドラマは地上波で6月2日に放送開始したばかり。タイムリーでホットな選曲だが、そのメロディを藤川はリラックスした様子で、けれども着実な息遣いで歌い上げる。その後も「ライカ」「誰も知らない」もメロディックなR&Bを歌い重ね、心地よいグルーヴをオーディエンスの下へと発信していく。
序盤を終えた藤川はMCで「片っぽのピアス」のMVについて紹介。チャンネル登録者数75万人を超える人気YouTuberこばしり。とYouTuberグループ・真夜中の12時のメンバーである相馬理が登場する映像について、出身地である岡山の方言も交えてカメラに語り掛ける彼女。その表情には、これまでの彼女が漂わせていた焦燥感や緊張感が消え、彼女が新たな展開の局面を迎えつつあることを意識させた。
その後のセットリストでは「べつにいいけど」「神頼み」に続き、「愛はヘッドフォンから」でトレードマークとなるギブソン・レスポールを抱えてロックサイドへとスイッチ、バンドはドライブ感を強めていく。
ライブ中盤、“嬉しいお知らせ”と口にした彼女は、6月26日(土)にTSUTAYA O-EASTで有観客のワンマンライブ開催を発表。“すごいのが、昨日決まったんです。開催まで20日しかない。20日でO-EASTを埋めるのはなかなかのミッションだけど、政府が許す限りの満員にしたいので、こぞって遊びに来てください”と語ると、意気込みをそのままにレスポールをかき鳴らしてロックチューン「葛藤」をプレイ。
コロナ禍の起こる前、ライブではサビでのオーディエンスとのコール&レスポンスが沸き起こったこの曲を、藤川は遠くを見据えるまなざしで力強く歌い上げた。その後も「ワレモノ注意」でエモーショナルなギターロックを響かせたかと思うと、「リフレイン」ではスウィートなポップスへ、自身の持つ歌の射程をオーディエンスの前に惜しみなく披露する。
ライブ終盤、“私は6月6日生まれなので、6という数字にこだわりがある。ことあるごとに物事を6をベースに考える”と語ると、同じ誕生日のアーティストとしてVaundyの名前を挙げ、今後コラボレーションなどできたらいいなとラブコール。
続いて、ゴシック調のトラックに乗せて妖艶なヴォーカルワークを響かせた「Nightmare」、バーレスク調のジャズチューン「おまじない」、さらにミッドテンポのロックナンバー「夜もすがら君を想う」を披露。曲ごとに異なる声色を自在に操る彼女のヴォーカルには、自身も愛聴するVaundyとのコラボレーションを妄想しながら、どんなテイストの楽曲でも私は歌い上げられるという意思表示が込められていたと捉えるのは考えすぎだろうか。
本編最後のMCでは、6月13日にRSK山陽放送で生放送及び配信ライブとなる<岡山音楽BOOSTER>、6月19日に<やついフェス>、そして26日のTSUTAYA O-EASTワンマン<Back to Normal>と直近に行なう3本のライブを告知し、オーディエンスに一層精力的な活動を約束。特にO-EASTのワンマンについては、“みんな、大変なこともたくさんあるけど、それを音楽で発散する日にしたい”と久々の有観客ライブへの熱意を語って代表曲「きみの名前」へ。日本の音楽シーンに輝くさまざまな歌姫のエッセンスを受け継ぐ圧巻のヴォーカルで本編を締めくくった。
アダルトなシティポップ「東京」で始まったアンコールでは、曲間にバンドメンバーからのサプライズも。
たくさんのプレゼントが届いていることにも触れながら、“誕生日って幸せな気持ちになる。誕生日にライブができるなんて、ありがとうございます”と感謝を口にし、アンコールのラストに向けてメンバー紹介を行う藤川の下へ突然バースケーキが到着。感極まった彼女は、“ヴィトンもブルガリもグッチもいらない、あなたがいれば幸せです”という言葉とともに銀杏BOYZのカバー「援助交際」へ。ロックシーンの先人へのリスペクトをてらいなく表現し、藤川千愛はこの夜のステージを後にした。
これから1年、藤川千愛を、そして私たちを待ち受ける世界がどのような様相になるかは誰にもわからない。それでも藤川千愛は時代が許す限りステージに立ち続ける、そのことが言葉と行動で示されたバースデイライブとなった。