宇垣美里[インタビュー]<アカデミー賞授賞式>生中継番組への意気込み&受賞予想などを語る「一緒にこの瞬間を体験し、驚いていただければ」

宇垣美里[インタビュー]<アカデミー賞授賞式>生中継番組への意気込み&受賞予想などを語る「一緒にこの瞬間を体験し、驚いていただければ」

Pop'n'Roll 編集部

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2021.04.23
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宇垣美里、ジョン・カビラが、4月26日(月)にWOWOWで放送される『生中継!第93回アカデミー賞授賞式』、『レッドカーペット生中継!第93回アカデミー賞授賞式直前SP』に出演する。本記事では、両番組で案内役を務める宇垣とカビラが、受賞予想から今年の授賞式の見どころまでを語ったオフィシャルインタビューをお届けする。

――今回のノミネーションに関して、どのような感想をお持ちですか?

カビラ:
おそらくアカデミーの会員のみなさんも“こういうテーマで選ぼう”という発想はゼロだと思うので、作品性が高い、今の世界に住む人に観てほしいオススメの映画という想いで投票されていると思います。ただ、たまたまとはいえ、社会的な課題をはらんでいるもので、認知症を抱えた男性、聴覚を失ったミュージシャンを描いた作品から、“Black Lives Matter(BLM)”的な人種間の格差、『ノマドランド』のように社会の片隅に追いやられてしまったけれども、美しいアメリカの荒野を背景にして、生き抜く力を感じさせてくれるような映画まで、さまざまな作品がありますね。エンタメ性というよりは、社会におけるいろいろな課題を描いているような、でも根底にはそれを乗り越えていこうとする力を感じさせる、アメリカンドリーム、建国の父、建国の母たちが思っていたことが源流に流れているようなノミネーションだなと思いますね。加えて、『Mank/マンク』のように映画作りの裏側、その歴史、レガシーみたいなところに対するリスペクトやオマージュのようなものも入ってきますよね。

宇垣:
やっぱり渋くて、観て“あぁ、スッキリした!”というよりは、じんわりと考えるような作品が多かったと思いますし、当たり前にある構造的な問題点を改めてつまびらかにするような作品が多いなと感じました。そういう意味でアメリカがなのか、世界がなのかわかりませんが、“足元”の違いといいますか、よく見るとこんな段差があったんだねということ、それはこの時期、コロナがあるからなのか、BLMの問題もありますし、いろんなものが見えたからこそ、今、これが響くんだろうなということは感じますね。

――各部門の受賞予想、もしくはお2人が受賞してほしいと思っている作品、俳優についてお聞きできればと思います。まず作品賞に関してはいかがでしょう?

カビラ:
いやぁ、難しいなぁ……。

宇垣:
“難しいね”という話をずっとしてたんですけど、“獲るかなぁ?”というのはやはり『ノマドランド』かと。

カビラ:
そうですね、大方の予想は『ノマドランド』ですよね。そして、そうなると(主演女優賞は)フランシス・マクドーマンドがまた獲るのかなという予想に繋がりますよね。

宇垣:
そうですよね。

カビラ:
いずれにせよいろんな歴史が動く一夜になりそうですね。『Mank/マンク』が獲ったら配信作品として初の作品賞受賞になりますしね。コロナ禍においてパフォーマンスや演出がどうなるかもわかりませんが、賞の行方もサプライズの嵐になる可能性がありますね。

宇垣美里

――これまでご覧になった映画の中で“獲ってほしい”作品や、最も印象的だった作品は?

宇垣:
私の中で印象的だったのは『ファーザー』ですね。というのも、認知症になった男性が主人公なんですが、自分が今どこを生きているのかがどんどんわからなくなっていくんです。その視点で世間を見るという作品は、今までなかったと思うんですよ。認知症になってしまって家族が大変!みたいな映画はあったと思いますが、その人自身がどのような気持ちで世界を見ているのか? どう見えているのか? こんなにもホラーのように見えてしまうんだ!というのが初めてわかったというのがあると思います。

カビラ:
それから、すでに大ヒットしていますが『ミナリ』は必見でしょうね。日本という国はアジアの中では非常に稀で、戦前は多くの方が海外に渡りましたが、戦後、移民団という形で世界に渡るということは南米を除いてあまりなかったんですよね。ところがアジアのほかの国では、夢を追いかけて……もしくは母国での窮状に耐えかねて多くの人たちが旅立ったわけです。“あぁ、こういう歴史があったんだ”と知ることができる貴重な作品だと思いますね。ただ、去年の『パラサイト 半地下の家族』に続いて(韓国系の人々を描いた作品である)『ミナリ』となると、なかなか驚くべき状況ではあるんですが……。

――助演部門に関しても、誰が獲ってもドラマがありますね。『ミナリ』の“おばあちゃん”役のヨン・ユジュンは韓国人女優として初の受賞が期待されていますし、『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』のグレン・クローズは過去7回ノミネートされながらも未受賞で、8度目の正直なるかという期待もあります。

カビラ:
そうなんですよ。

宇垣:
同い年なんですよね。

――グレン・クローズに関しては、前回の主演女優賞ノミネートの際に受賞したのが、今回同じ助演女優賞にノミネートされているオリヴィア・コールマンという……。

カビラ:
“また会ってしまったの?”というね(笑)。

宇垣:
獲らせてあげたいって思いはありますね。ただ、私は『ミナリ』の中のおばあちゃんと孫の会話というのが本当に素晴らしいシーンだと思ったので、ユン・ヨジョンに獲ってほしいですね。アジア人としてという想いもありますし、韓国で当たり前のようにここまで評価されてきた大女優が、世界で評価されたら本当にすごいことだなと思います。

――助演男優に関しての予想、希望は?

カビラ:
サム・クックを演じたレスリー・オドム・ジュニア(『あの夜、マイアミで』)は授賞式でのパフォーマンスを含めて楽しみです。

宇垣:
歌ですね。

カビラ:
本当に素晴らしいパフォーマーなので。……と言いつつ、実際に両親が聴覚障害者だったポール・レイシー(『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』)が受賞したらそれも快挙ですよね。

宇垣:
俳優賞は非常に難しいですね。予想もしにくいし、想像できないところが大きいですね。

カビラ:
助演男優賞の5人のうち、肌の黒い方が3人もいるという、そこも多様になりましたよね。

ジョン・カビラ

――授賞式に関しては、コロナ禍の中での開催で変わってくる部分もあるでしょうが、演出、パフォーマンス、社会へのメッセージの発信など、どういったことを期待されていますか?

カビラ:
まず現時点でMCが発表されていないということは、昨年までの流れをそのまま引き継いで、進行役はなしで開催するんだろうと読んでいるんですが。じゃあオープニングはどっちでやるんだ? ドルビー・シアター? ユニオンステーション? それぞれの違いはどこで演出するの? パフォーマンスはどんな風にやるの? すべてが謎ですよね(笑)。

宇垣:
わからないことだらけですね。ただ、町山さんがおっしゃっていた、これから公開されるであろうサマーシーズンの大作と絡めたパフォーマンスもあるのではないか?というのはすごく楽しみですね。それを観て“あぁ、やっとまた劇場に映画を観に行けるんだ”と思わせて、気持ちを上げてくれるようなパフォーマンスだったらいいなと思います。

――授賞式では何が起こるかわからず、日本のスタジオでも瞬発力、対応力が求められると思いますが、本日の収録でご一緒されてみていかがですか? お互いの印象などをお聞かせください。

カビラ:
いや、もう“全幅の信頼を置いてます!”としか言えませんね。本当に楽しみにしております。

宇垣:
もちろん楽しみですし、困った時はカビラさんをちらっと見ようって思ってます!(笑) 町山さんもそうですし、映画を好きな人と映画の祭典をお伝えできるってすごく楽しいことだと思っているので、存分に“好き”というのを出していきたいなと思っています。

――改めてこれから授賞式を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

カビラ:
本当に世界最高峰の映画の祭典ですから、その期待に応える……いや、その期待を超えるような演出が展開されることは間違いないと思います。作品賞ノミネートの8作品のうち、現時点で5作品が(配信、劇場公開など)すでに何らかの形で触れられるということもありますので、先に観ていただいて、自分が推している作品を持っていただいて、もっと関与するという楽しみ方もできると思います。4月26日の授賞式に向けて、過去の受賞作品などのオンエアも始まっていますので、記憶をたどりながら、ご自分の人生の“タイムスタンプ”的な作品を楽しみながら、今回の2021年のタイムスタンプ的な作品は何になるんだろう?と楽しみつつ追認することができるまれな授賞式になると思いますのでぜひ期待していただければと思います!

宇垣:
今年はすでに観られる作品がたくさんあるので、よりジョイントして、“中”に入って一喜一憂しながら楽しんでいただけたらいいなと思います。まさしく今年はコロナの関係もあって今までにないアカデミー賞になると思いますし、どの作品、俳優さんが獲っても歴史的な前例になると思いますので、後からニュースで知るというのではなく、一緒にこの瞬間を体験し、驚いていただければと思います。

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