WILL-O’[ライブレポート]すべての想いをステージに刻んだ現体制ラストライブ「一生この時間が続けばいいのに」
Pop'n'Roll 編集部
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WILL-O'が、3月14日(日)に東京・USEN STUDIO COASTにて、ツアー<FULL BLOOM TOUR>の最終公演<「WILL-O' FULL BLOOM TOUR」TOUR FINAL>を開催した。本記事では、そのオフィシャルレポートをお届けする。
取材・文:成松哲
撮影:真島洸(Cuon)
WILL-O'は、2020年10月に現体制での活動終了を発表。2021年1月に榎本りょう、小森うずら、桐乃みゆ、佐伯つみきの4人によるラストライブを行なう予定だったが、折りからの新型コロナ禍の影響で延期を余儀なくされることに。今回のステージは、その振替公演となった。
開演前、4人はライブ中の諸注意をアナウンスする影ナレーションを担当。オーディエンスに拍手の練習を促し、“私たちの集大成をその目に焼き付けてください”と煽ることで会場を温める。
そして高速EDM仕立てのオープニングSEに乗って、青、紫、白、ミントグリーンというメンバーカラーのライトに照らされたステージにかつての衣装で登場すると、小森の“最高の1日を作りましょう!”のシャウトとともに「感情線染ヒカリエモーション」をドロップ。彼女たちのフェアウェルライブをスタートさせた。
グループにとって特別な日ながらも、ステージ上のWILL-O'メンバーは通常運転。いつものライブと同じくパワフルなステージングを展開していく。
「恋情心情クラムジー」、「Jump!」と序盤からキラーチューンを惜しげもなく披露し、続く「POP'N」はエクステンデッド仕様に。
ロングバージョンにアレンジされたイントロ中にそれぞれMCを回し、曲中には桐乃が“新木場、全力クラップお願いします”とフロアにハンドクラップを要求。最後はステージとフロアが一体となってピースサインを連発して、このナンバーを締めくくった。
小森の“WILL−O'の最初の曲です”のひと言から始まった、現体制始動後まもなく発表の楽曲「Innovator」のあとも、彼女たちの勢いは止まらない。
“いつだって僕らは ひたすらに歌っていた”と、まさにこれまでの自身の姿を歌うこの楽曲のギターソロパートで、4人はダンスバトルを展開。またもフロアを大いに盛り上げると、「Identity」で桐乃がSTUDIO COASTいっぱいにロングトーンボイスを響かせていた。
エレクトリックな「Re:mitBreak」ののちのMCタイムでは、昨年末から始まった<FULL BLOOM TOUR>を振り返る榎本が、札幌公演の際、機種変更したばかりのiPhoneをクルマに轢かれたというなんとも残念なエピソードを披露。
さらに“みなさん、『Apple Care』(Apple製品の延長保証サービス)には入っておきましょう”と苦笑いを浮かべるも、初の自作詞曲「Pinball」では、メンバーとともに“傷を恥じるな 勝利は目前だ”、“決意を今 We are winners”とオーディエンスを鼓舞してみせた。
そして4人は「Syrup」、「Clap!」、「un chain」と高速ナンバーを連射してオーディエンスのボルテージを上げると、その直後には表情を一変させる。
スケール感のあるアレンジと“Wow Wow”と連呼するシンガロングが耳に残る「Voice」や、少しノスタルジックなメロディに乗せて“まだ見たことない未来へ 旗を掲げて また歩き出そう”と歌う「Light of Hope」をパフォーマンス。
さらにSTUDIO COASTの世界最大級のミラーボールがブルーの光をフロア中に乱反射させる中、“「忘れないよ こんな日を」「忘れないで どんな日も」”と優しく語りかける「Stardust Memories」を歌い上げて、ひとまずステージにあとにした。
この日のステージは2部制のスペシャル仕様。オルゴールバージョンにアレンジされた「Stardust Memories」に乗せて、STUDIO COASTの壁面に4人の歴史を追う写真がスライドショー表示される。
その後ピアノをフィーチャーしたドラムンベース仕立てのSEが鳴り響き、ライブ後半戦の幕が切って落とされた。
最新衣装にお色直しした4人は、ステージ前方のキャノン砲から無数の金テープが打ち出されたのを合図に「SPARKING」で巧みなコーラスワークを披露し、端正なギターロック「One Way!!」やスカパンクチューン「Lady」、パンキッシュな「sakura」を畳みかけていく。
さらに「astr∞naut」では榎本が、「青い協奏曲」では佐伯が自身のソロパートでその歌唱力を見せつければ、今度は「I Will Hope」で巧みなマイクリレーとともに、4人それぞれが高いボーカリゼーションを披露していた。
続く「HANABI」はWILL-O'にとって初めてMVを撮影した楽曲。そんな自身の歴史を振り返る上で重要な1曲ながらも、直前のMCでの4人は普段のライブでの姿とほとんど同じだ。
榎本が“「HANABI」というタイトルなのに予定が延びて夏にリリースできなかった”と笑えば、佐伯が“背景が真っ白だから雪みたいだよね”と続け、サビ終わりのネコの鳴き真似のようなコーラスを担当した桐乃はそのパートの音声が流されると、自らモノマネをして笑いを誘っていた。
4つ打ちと2ビートがつづら折りになった複雑なリズムに乗せて、小森と佐伯がラップで魅せるこの曲以降、4人はこの日最高のピークタイムを演出する。
スラップベースが光るダンスロック「FLOWER DANCER」では“いくぞ!”とフロアを煽り、 “人生楽しんだもの勝ち 目をつむるなんて もったいない”と高らかに宣言する「Roller Coaster」ではヘッドバンギングやジェンカ、ラインダンスをモチーフにしたユニークなダンスを満面の笑みで披露する。そんなメンバーに呼応するように、フロアもヘッドバンギングで応えていた。
小森の“次で最後のセクションとなりました”のひと言から始まった最後のMCタイムは、ラストライブらしい感動的なものになるかと思いきや、やはりWILL-O'ならではのものとなった。
“WILL-O'を愛してくれてありがとうございます”と切り出した佐伯が“りょうちゃん(榎本)も、みゆちゃん(桐乃)も歌がウマいし……”とグループ加入当時メンバーに引け目を感じていたことを明かすと、名前を飛ばされた小森が“ちょっとまって”と即座にツッコミ。
これに佐伯は“うずらちゃんは怖かった”と返すも、“メンバーとして認められて、今ここに立てていることを誇りに思います”と涙を見せる。
“怖かった”小森も、やはり加入当時は“ダメダメで何度も挫折しそうになった”と語り、“アイドルにならなかったら経験できなかったことを経験させてもらえた”と声を詰まらせながらグループとファンに感謝の言葉を続けるも、その後は佐伯のMCタイムと同じノリに。
彼女が活動休止後も月に1回は4人で会うつもりであることを明かすと、すかさず桐乃が“なのでつみちゃん(佐伯)はLINEを既読無視しないでください”と混ぜっ返して笑いを誘っていた。
その桐乃も“会いに来てくれる人、SNSで声をかけてくれる人、私を支えてくれたメンバー、スタッフ全員に感謝しています”、“一生この時間が続けばいいのに”と涙ながらに語るも、その直後には“鼻水が出る。ヤバい”とポツリ。そのシリアスになりきれないあたりが逆にドラマチックなMCとなっていた。
ラストバッターの榎本は先の3人の言葉を耳にして号泣状態。桐乃に“鼻をかみなさい”と笑顔で叱られ、自身も“しゃべれないよ! お前らにこんなに泣かされたら”と泣き笑いの表情を浮かべていた。
しかし、そこはWILL-O'の旧名Alloy時代からのメンバー。“2017年からの5年、楽しかったこと、つらかったこと、たくさんありました”としながらも“このメンバー、そして今は違う道を行くことになったメンバーもWILL-O'を、榎本りょうを愛してくれてありがとうございます!”と述べ、MCタイムを締めくくった。
“りょうちゃんがすごい泣いちゃってるから落ち着くまで、私たちにも水を飲ませて”と笑う小森の言葉をきっかけにスタートした“最後のセクション”では、WILL-O'の現在地を示すセットリストが用意されていた。
“僕らが 歌った 僕のメロディー きっときっといつかは 結んで空に響くよ”とメンバー自らが活動休止決定後の心情を綴った昨年末の最新配信曲「4RAW」、昨夏リリースの「Baby's Breath」、「4RAW」と同日配信の「Face Myself」を3連射してライブ本編の幕を閉じた。
アンコール代わりの拍手に応えてステージに戻った4人がオーディエンスとの記念撮影を済ませると、いよいよライブは最終盤に。
“ほぼ全曲やったけど、やってない曲があるでしょ!”、“あれがないと終われないでしょ!”との榎本の言葉に続けて、4人が声を合わせて「Last Dance」とタイトルコールし、この曲を投下。
正調ダンスロックでフロアにまさに“最後のダンス”を踊らせると、“それでは以上、WILL-O'でした!”というシンプルな言葉を残して、全28曲・3時間弱に及んだロングセットライブと、現体制でのグループの歴史に終止符を打った。