清原果耶[イベントレポート]映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』完成披露試写で作品への想いを語る「安心感にも似た喪失感みたいなものが大きかった」

清原果耶[イベントレポート]映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』完成披露試写で作品への想いを語る「安心感にも似た喪失感みたいなものが大きかった」

Pop'n'Roll 編集部

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2020.08.04
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映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の完成披露試写イベントが、8月3日(月)に開催され、清原果耶、桃井かおり(リモートでの出演)、藤井道人監督が登壇した。本記事では、その模様をお届けする。

小説すばるで新人賞を受賞するなど、多くの読者を魅了する作家・野中ともその大人気小説『宇宙でいちばんあかるい屋根』(光文社文庫刊)を映画化。

迷える少女の不思議な出会いと成長をフィルムに収めたのは、<第43回日本アカデミー賞>最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』の監督・藤井道人。

主人公、14歳の少女・大石つばめを演じるのは、2021年春NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のヒロインに抜擢され、今最も注目を浴びる若手実力派女優・清原果耶。なお、清原は本作が映画初主演となり、藤井道人監督とは『デイアンドナイト』に続くタッグとなる。

つばめの前に現れた老婆・星ばあ役には、数々の映画賞に輝き、『SAYURI』でハリウッド映画初出演以降世界で活躍する実力派・桃井かおり。

つばめが恋するお隣の大学生役に、NHK連続テレビ小説『スカーレット』に出演するなど活躍の場を広げる伊藤健太郎。

つばめの父役には日本を代表する俳優・吉岡秀隆、つばめの義母役には人気実力を兼ね備える女優・坂井真紀。そして水野美紀、山中崇、醍醐虎汰朗など注目のキャストが集結した。

主題歌は、透明感のある歌声とその詞世界でファンの心を掴む、シンガーソングライターCoccoの書き下ろし楽曲「今とあの頃の僕ら」。本作主演の清原果耶が、伸びやかな歌声でヒロインの心の旅を爽やかに歌い上げる。

完成披露試写イベントの会場には主演の清原果耶と藤井道人監督が登場。そしてMCの声掛けとともに星ばあ役の桃井かおりが宇宙でいちばん”遠距離”な完成披露試写会と題し、LAより生中継で登場。“こっちは夜中の2時半よ〜。健気でしょ桃井!”と、早速桃井節を炸裂させ、会場を沸かせた。

清原が“今日は会場に足を運んでくださって、本当にありがとうございます。今日これから『宇宙でいちばんあかるい屋根』をご覧いただけるということが本当に嬉しい思いでいっぱいで、大切に大切に送り出したいなという気持ちで今日この場に立っています。今日はこれから楽しい時間を共有できたらと思います“と述べる。

続けて、桃井が“本当にこの時期に封切ができる幸せをしみじみ感じています。とにかくいい映画なので!宜しくお願いします! 今日はありがと!”、藤井監督が“ちょうど1年前の今日、この映画をクランクインして1年後の今日、完成披露でみなさんにお届けできることを光栄に思っております。こういう時代だからこそ観ていただきたい映画が完成しました。今日はみなさん楽しんでいってください”と挨拶をした。

はじめにLAに住む桃井が最近の生活について聞かれると、“えーっとね、日本よりはマシ?よ(笑)。ニュースを観てる感じだと、日本はみんなくっつきすぎてるように見えるし、なんかアメリカの方がけっこう2メートルキープしてるし、マスクもしてる。スーパーに行っても、人数制限してるし、ものすごく近寄らないように注意してる!”と報告。

また自宅での過ごし方については“とにかくお店が開いてないので、毎日ご飯を作るのを本気でやっています。もういちいち買いに行ってる場合じゃないぜベイビーってね(笑)”とLAでの生活ぶりを明るく話した。

久しぶりの対面となる桃井に対し、清原は“お久しぶりです〜、お元気ですか?”と声掛けすると、桃井は“元気ですよ〜!”と満面の笑顔で答える。

“嬉しいですね、こうやってまた顔を見られて光栄です”と1年ぶりの画面越しの再会を楽しんでいる様子。“いや〜本当はそっちに行ければよかったんだけどねぇ”と桃井が言うと、清原は“画面越しでも嬉しいです!”と答えた。

完成した本作を観た感想について、清原は“私はもう正直放心状態になってしまいました。初主演作という言葉だったりとか、エンドロールで自分の歌った歌が流れるとか、なかなか客観視できなくて。あ、終わったっていう安心感にも似た喪失感みたいなものが大きかったような気がしています。一緒に初号を観たスタッフのみなさんが、すごいよかったよ!っていう言葉をかけてくださったので、いい作品になったんだな。よかったなって。嬉しい気持ちはありました”と語る。

桃井は“私は反対に、今まで自分が出た映画の中で1番自分が出てることが気にならなかった映画なんですよね。それですごく映画として観られました。監督が、これは群像劇じゃなくて彼女の世界を描いてるんだって。できあがって作品を観たらそれがよくわかって、観てすぐに監督にメールしたくらい”と言うと、藤井監督は“はい、すごい嬉しいメッセージをいただいて、心臓がバクバクバクってなりました(笑)”と明かした。

<完成披露試写イベント>新宿バルト9 シアター9(2020年8月3日)

また、2019年の日本アカデミー賞で話題となった『新聞記者』とまったく異なる作品に挑戦したことについて、藤井監督は“逆に『新聞記者』の方がイレギュラーという感じで。今回はプロデューサーの前田さんからこのオファーをいただいた時に、今まではずっと暗いところから光を目指すような映画を撮っていて、今度は明るいところからしっかりと暗いところを照らしていけるような作品を描いてみたいなと思って挑戦しました”と話す。

本作が初めての藤井組となる桃井は藤井監督について、“『新聞記者』を観て、その話をしている時にメールをいただいたので、運命を感じたのもあるし、監督がこんなものを作るのかっていう驚きもあったし、ワクワクもしたし、本当に年を取ってきたので、こういうオファーを待っていたという想いで嬉しかったです”と話した。

本作で名コンビを演じた清原と桃井、お互いの印象について清原は“私が何か口にするのもおこがましいんですけど……一緒にお芝居をしていてこちら側に伝わってくるエネルギーの濃さとか強さみたいなものがとてつもなく大きくて、前を向かなきゃって奮い立たされるよな、現場でご一緒していて必死に後をついていきたくなるような、そんな印象でした”と告白。

桃井は“ものすごい孤独な女優さんだなっていう(笑)。すごい真面目で本気で作品を見ているし、自分が何をすべきかを見ているから、絶対に邪魔しちゃいけないなという気持ちになったし、彼女がやろうしている、真剣にストイックに考えていること、彼女の表現しようとしていることが見えなくて、冗談抜きで私がついていったんですよ。それで映画を観て、あぁよかった!って本当に思いました”と話し、清原は“いやぁ、なんて答えたらいいかわからないです”と、大女優からの絶賛に言葉を詰まらせる様子を見せた。

『デイアンドナイト』に続く藤井監督作品となる清原、本作が初藤井組となる桃井について、藤井監督は“今回の清原さんの役柄は『デイアンドナイト』とは正反対ですし、作品のトーンが違ったので、僕自身もすごく緊張して挑んだんですけど、最初からつばめでいてくれたので、衣装合わせから提案してもらったり、とても良い信頼関係で撮影することができました。桃井さんはクランクインまでずっとスカイプでやり取りをしていて、撮影中に初めてお会いしました。自分からすると、桃井さんの映画を観て育ってきたので、監督ぶってましたけど足はめちゃくちゃ震えてました(笑)。桃井さんが“ハーイ! エブリバディー!”ってみんなを盛り上げてくれたこともですし、自分の監督人生の中でとても嬉しかったのが、桃井さんから提案してくれた言葉がたくさんあって、その言葉が自分にすごく刺さった。それが、清原さん演じるつばめにもリフレクションしてとても良いシーンになりました”と述べた。

また共演した伊藤健太郎の印象について清原は“すごく柔らかい波をまとわれてる方だなという印象があって、それはきっと伊藤さんの内から出る感覚なのかオーラなのか、すごく「優しい」っていう言葉が当てはまるような接し方をしてくださったので、つばめとしてすごく楽しく撮影をご一緒させていただきました”と答えた。

星ばあという老婆役に挑んだ桃井はこの役柄に挑戦するにあたって心掛けたことを聞かれると、“実は全然なくて(笑)。監督が髪の毛を選んでくれたんですね。それで私の撮影前の仕事はパーマをかけるってだけだったのよ(笑)。あの頭で全部ができちゃうっていう、いろいろ話したけど結局頭だったっていうね(笑)。なんでそんなにこだわってたのか、それは監督に聞いてください”と返答。

監督は“自分の中の星ばあのイメージがもじゃもじゃなんですよね(笑)。それでいて風になびかれてるイメージがあって。服とか髪の毛とか。でも、最初はカツラかもしれないなって思ってたら、次打ち合わせした時にはもうパーマをかけてくださっていて、それを観た瞬間に「あ! 星ばあだ!」ってなったんですよ!”と意図を説明した。

すると桃井が“あ! そういえばキックボードも電動のやつすごい練習したんですよ。そしたら昔のキックボードでね、全然役に立たなくて(笑)。そしたら撮影中スコーン!って大事故起こしそうになって、その時のつばめが可愛くってね(笑)。みんな心配して寄ってくるんだけど、つばめだけが離れて小動物のように私を見つめてたんですよ。あの時のつばめは忘れないよ(笑)”と意外なエピソードを披露。“覚えてますか?”とMCに聞かれた清原は“鮮明に覚えてます(笑)。もうどうしようーってなってました”と答え会場を沸かせた。

清原演じるつばめが14歳ということで、14歳の自分に伝えたいことを聞かれると、清原は“4年前……14歳の自分がその時1番楽しいと思っていることをできているならいいなと思います”、藤井監督は“20年前……20年後にはこんな素敵なキャストとスタッフと映画作りができるんだから、そのままちゃんと失敗ばっかりの人生を歩んだ方がいいよって、このままでいいんだよ、ですかね”と答えた。

<完成披露試写イベント>新宿バルト9 シアター9(2020年8月3日)

そして、今回抽選で招待された人から寄せられた“宇宙いち聞きたい質問”を答えるコーナーへ。清原への質問では、“星ばあから言われた言葉で、何が1番心に響きましたか?”というものがあり、清原は“「しぶとく生きろ」って星ばあに言われるシーンがあるんですけど、つばめとしてその言葉を受け取った時ももちろん感じることがあったんですけど、完成したものを観て時間が経って今でもその言葉を思い返したときに、深く自分の中にその言葉が染み込んできて。今真っ直ぐ前を見てちゃんと今自分がやっていることを1つひとつ丁寧にしぶとく図太くやっていきたいなって、つばめとしても私としても心の中に残り続けるんだろうなって思います”と語った。

桃井は“今のこの全世界的にも厳しい時期に、星ばあだったら何て言うでしょうか?”という質問に対し、“生きとけ!ってことですかね。とにかく歳食ってみてはっきりわかったのはね、若い時に考えてたほど人生長くないんだなって。やっぱり生きてるってことはけっこう面白いなって。歳食ってからもまた人生面白いのでね、とにかく生きとけ!ですかね”と、星ばあさながらの金言を披露。

最後に全員への“コロナで外出自粛中、お家で何をしていましたか?”という質問には、清原は“私はとにかく家で規則正しい生活をしようと思って。朝7時8時くらいに起きて朝ごはん食べて、掃除してお昼ご飯作って、映画観てっていうくり返しをずっとしていました。全然苦ではなかったですし、そういうことができる日々もいいなと思えました”と回答。

藤井監督は“僕はやっぱり家族と過ごしてました。もともと不規則な生活だったんで、こんな時だからこそってことですごく家族と一緒に過ごしてましたね”と答えた。

最後に、清原は“この作品は本当に本当に大切な作品で、撮影中から撮影が終わった後も、あんな奇跡的で充実していた輝かしい夏を藤井組のみなさんとキャストのみなさんと過ごせた私は本当に幸せだなあって、今でも思います。あの素晴らしい現場を経て完成した素晴らしい作品となっておりますので、大人になった方、これから大人になる方へ、すごく懐かしい気持ちにさせてくれるところもあれば、自分の行動を思い直したくなるような部分とか、そんな風にみなさんの心に何かが残るような作品になっていればなと思います”とコメント。

また、桃井は“若い時の悩みってちっぽけだったような気がするけど、悩みって大きい小さいとかじゃなくて、本当につらいんだなーって、若い時の自分を思い出すようなそんな映画になっています。こういう時期だから映画館に行ってとはなかなか言えないんだけど、でもやっぱり映画館で観てほしいな”と語る。

そして、藤井監督が“これだけ屋根の下にいる時間はないよなと自分も家にいて思いました。たくさんの人にも観てもらいたいですが、みなさま1人ひとりの心に残るような作品になっていると嬉しいです。今日はありがとうございました”と締めくくり、大盛況のままイベントは幕を閉じた。

<完成披露試写イベント>新宿バルト9 シアター9(2020年8月3日)

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